
原題:『名探偵コナン 純黒の悪夢』
監督:静野孔文
脚本:櫻井武晴
撮影:西山仁
出演:高山みなみ/林原めぐみ/池田秀一/古谷徹/天海祐希
2016年/日本
「転がる観覧車」の扱い方の違いについて
最初は演出ミスなのかと思ったシーンがある。記憶喪失になったキュラソーが警察病院で吉田歩美、小嶋元太、円谷光彦と一緒にオセロをして遊ぶのだが、キュラソーと元太のチームが勝ちそうだった時に、元太の不注意でオセロのコマが盤から飛んでしまい、ノーゲームとなってしまう。その時、風見裕也を含む3人の公安警察官が現れキュラソーが移送されることになる。目暮十三警部と公安警察の話し合いの後、歩美、元太、光彦の3人がテーブルを見るとコマが飛び散っていたはずのオセロゲームの盤上にはコマが元通りに整然と並べられているのである。
ここが演出ミスだと思ったのであるが、ラストでキュラソーが「心変わり」したことを知った時、コマを元通りに並べたのはキュラソーの仕業だと思ったのである。見知らぬ自分のことを親切にしてくれて、3人と親しくなったきっかけとなる東都水族館の二輪式観覧車の乗車時の転落事故の張本人である元太に対するお礼だったと考えるのが自然であり、なおかつ伏線と見なすべきなのである。
ところで軸から外れて地面を滑走する観覧車のシーンなのであるが、偶然にも『ガールズ&パンツァー 劇場版』(水島努監督 2015年)においても戦闘シーンで使われていた。本作においてはもちろん水族館の来客たちの命を脅かすものであるが、『ガールズ&パンツァー』においてはあくまでも戦車と同じように武器のような扱われ方で、観覧車が転がって来たところで生徒たちが怪我をするような心配は全くなく、そこに『名探偵コナン』と『ガールズ&パンツァー』の決定的な作風の違いを感じるのである。