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 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『シスタースマイル ドミニクの歌』 90点

2010-11-22 21:08:13 | goo映画レビュー

シスタースマイル ドミニクの歌

2009年/フランス=ベルギー

ネタバレ

女性初の‘ロックンローラー’

総合★★★★☆ 90

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 エルビス・プレスリーに感化された人間は『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(サム・テイラー=ウッド監督 2009年)の主人公であるジョン・レノンだけではないし、英語圏の人間だけでもないし、勿論男性だけでもない。『シスタースマイル ドミニクの歌』を観て、主人公のジャニーヌ・デッケルスが‘単なる世間知らずで自分勝手で頭の悪い女性’にしか見えなかったという感想を多く目にして、その無理解に驚いたのであるが、『ノーウェアボーイ』のジョン・レノンも‘単なる世間知らずで自分勝手で頭の悪い男性’にしか見えないのに高く評価されているにも関わらず、似たような無謀な行動をしているジャニーヌ・デッケルスが非難される理由はジャニーヌ・デッケルスがジョン・レノンと同じように本物の‘ロックンローラー’であると見倣されていないからであろう。
 同じように美術学校に通った経験がありながらも、ロックンローラーとして見るならばジャニーヌ・デッケルスはジョン・レノンを越えているかもしれない。わざわざ居心地が悪くなる修道院に入って尼僧になり、尼僧でいながら歌手デビューして、そのデビュー曲「ドミニク(Dominique)」がフランス語の歌詞で1963年12月のビルボードで1位を獲得して(現在に至るまでベルギー人としては唯一)、莫大な印税はレコード会社とプロデューサーの取り分を除けば、全額教会に寄付してしまい、音楽活動に専念するために教会から離れて、女性と一緒に暮らしているジャニーヌ・デッケルスは(ゲイであるため?)全く関与しないにも関わらず、「黄金のピルのために神に栄光あれ(Glory Be to God for the Golden Pill)」という曲をわざわざリリースして教会を怒らせて音楽活動を妨害されることになり、「ドミニク」の印税は教会に支払われているにも関わらず、ベルギー政府から追徴課税されてしまい、その資金を調達するために1982年に「ドミニク」のディスコヴァージョンをリリースするも失敗してしまい、結局、自殺を禁じられている尼僧であったにも関わらず、1985年に一緒に暮らしていた女性と51歳で薬物心中を遂げてしまうという、母親との確執から始まり、終始教会や政府などの体制に対して孤軍奮闘していたジャニーヌ・デッケルスは世界初の女性ロックンローラーと見倣して間違いないであろう。ジャニーヌ・デッケルスを前にするならばパティ・スミスも霞んでしまう。
 ジャニーヌ・デッケルスの不運はベルギーという小国で生まれてしまい、フランス語を話すために、彼女の理解者でありえた英語圏のロックミュージシャンとの交流ができなかったことと、やはりいまだに続いている女性だからという偏見から逃れられなかったことにあると思う。
 作品としてはラストの描き方が雑で、ジャニーヌ・デッケルスと彼女の親友のアニ・ぺシェルが借金の督促状を燃やしながら喜んでいた理由が全く理解できず、彼女たちが若くして自殺したような印象を与えてしまうのだが、破天荒な‘ロックンローラー’としてのジャニーヌ・デッケルスはよく描かれていると思う。
 「ドミニク」の‘ドミニク、ニク、ニク’という有名なフレーズは、いまだに例えば「ポ、ポ、ポ、ポーカーフェイス」というような大ヒット曲のフレーズに受け継がれており、その影響力は計り知れないはずなのである。


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