原題:『Grâce à Dieu』
監督:フランソワ・オゾン
脚本:フランソワ・オゾン
撮影:マニュエル・ダコッセ
出演:メルヴィル・プポー/ドゥニ・メノ―シェ/スワン・アルロー/ジョジアーヌ・バラスコ
2018年/フランス・ベルギー
大きな愛情の弊害について
これが実話を基にした話というのだから深刻な問題だと思うが、ストーリー自体は重いものではなくたんたんと進行していく。
興味深いエピソードを書いておくならば、告発されたベルナール・プレナ神父が子供たちを集めて説教をしているシーンにおいて、「神は信者を子供のように扱う」と語っていてその巧妙な語り口で多くの子供たちが騙されていたのである。
告発者の一人であるフランソワ・ドゥボールは兄のルイと参加したスカウトの合宿先で被害に遭う。フランソワは両親に神父にされたことを告白するのであるが、ルイは神父が好むのは年少の少年で、自分は被害に遭っていないと言う。だからフランソワは自分の活動に対して積極的に応援してくれないルイに不満を持つのであるが、実はルイも被害者で、神父に連れていかれるルイをフランソワは見ていたのであるが憶えていないのである。しかし自分も被害者だと告白した場合の両親の精神的負担を考えるといまだに言い出せないルイの、家族に対する心配りは決して表に出ないだけに、家族にも理解されずに下手をすると「悪者」扱いされる故にその悲しみの大きさは想像を絶するのである。