2018年12月10日付の毎日新聞夕刊の川崎浩専門編集委員の「大衆音楽月評」には違和感を持った。「締めくくりはどう聴くか」と題されたそのエッセイで川崎は今年の「NHK紅白歌合戦」と「レコード大賞」について書いているのであるが、問題は「レコード大賞」に関することである。
60回目を迎えた今年のレコード大賞において、優秀作品賞に選ばれた「DA PUMP」の「U.S.A.」が外国曲のカバーであることに関して、「主催者によると、現行の審査要網に抵触する部分はないという説明である。1979年の第21回『レコ大』で、今年亡くなった西城秀樹の『ヤングマン(Y・M・C・A)』が外国曲ということを理由に審査対象から外されたことを前例としての話題だが、当時の審査経緯や判断はさすがに不明である。」と川崎は書いているのであるが、近年のレコード大賞の審査委員長まで担っている川崎のキャリアで「当時の審査経緯や判断はさすがに不明である」というとぼけた言い訳は通用するはずはなく、死人に唾棄するような物言いで、本当にわからないのであるならば、今年亡くなった西城のためにも調査するべきであろう。西城は「YOUNG MAN」で第10回日本歌謡大賞と第8回FNS歌謡祭のグランプリを獲得しているにも関わらず、「YOUNG MAN」はレコード大賞の優秀作品賞にも選ばれず、代わりに「勇気があれば」でノミネートされているのである。この事実だけで外国曲は審査対象から外されたと容易に想像がつく。「三冠」は珍しい話ではなく、例えば、1975年の布施明の「シクラメンのかほり」にしても1981年の寺尾聰の「ルビーの指環」にしても三冠を獲得しているのである。それに従うならば「DA PUMP」の「U.S.A.」は審査対象から外さなければならないはずなのである。評論家の中川右介によるならば「西城秀樹のこの年最大のヒット曲〈YOUNG MAN〉は洋楽のカバーだったので、レコード大賞の対象にならなかった。この賞は日本作曲家協会の仲間内の賞でもあるのだ。」(『山口百恵』朝日文庫 2012.5.30 p.441)ということらしい。
敢えて無理やりこじつけるならば、これは最近成立した「改正出入国管理法」に似ている。日本人自身がヒット曲を作れないために、慌てて「外国曲」を受け入れたように見えるのだが、「U.S.A.」のもう一つの問題点は原曲がリリースされたのが1992年で、要するに「懐メロ」なのであり、日本はいまだにバブルを引きずっているのである。