現在、東京都美術館で催されている『ムンク展 - 共鳴する魂の叫び』ではエドヴァルド・
ムンク(Edvard Munch)の初期から晩年の作品まで観ることができる。
初期のムンクの作品は、例えば、1882年、ムンクが19歳の時に描いた「自画像
(Self-Portrait)」から1889年の「夏の夜、渚のインゲル(Summer Night. Inger on the Beach)」
までの作風はスタンダードなものである。
ところが政府から奨学金を得たムンクが1889年10月から1892年3月までパリに
留学して帰国してきて最初にベルリンで催された個展は「ムンク事件(The Munch Affair)」
と呼ばれるほどに大顰蹙を買ってしまうのであるが、その作風が現在、ムンクの作風と
して私たちに馴染みのあるものなのである。パリでムンクは印象派、ポスト印象派、
ナビ派、フォーヴィスムに繋がる象徴主義のみならず、1894年頃には版画を学び、1902年
にはコダックカメラで写真に興味を示し、その上、ムンクは母親、姉、父親、弟、妹を亡くしていき
ムンク自身も精神を病んで入院したり、1902年に痴話げんかによる拳銃の暴発により
ムンクは左手中指を失い、1930年には血管破裂で右目を失明してしまい、80歳の長命で、
生涯独身を貫く。要するにムンクは一流の画家としての素質を全て持つ稀有な画家なのである。