キュビスムを介して「コンセプチュアル・アート(Conceputual Art)」という概念に
行きついたマルセル・デュシャンは芸術を「美」の観点ではなく、「発想」の道具として
捉えるようになる。
「レディ・メイド(Ready-made)」とは「オブジェ・トルヴェ(objet trouvé)」と
呼ばれる「物」を使った作品のあり方である。デュシャン本人は儲かったのかどうか
定かではないが、『マルセル・デュシャンあるいはローズ・セラヴィの、または、による』
という通称『トランクの中の箱(Boîte-en-valise)』を限定で制作している。自らの
作品のミニチュアのレプリカを箱に詰め込んで、作品のアンソロジーとして作ったのである。
これは後にロックミュージックのボックスセットや美術館で売られているミュージアム
グッズの元祖と言えるものである。
芸術の「産業化」に手を貸してしまったようになってしまったデュシャンであるが、
それが彼の本望だったのかどうかは分からない。
(2018年11月29日付毎日新聞)