MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

ピエール・ボナールと「補色」について

2018-12-05 00:56:44 | 美術

 現在、国立新美術館では『ピエール・ボナール展』が催されている。ピエール・ボナール

(Pierre Bonnard)はポール・ゴーギャンの指導を受けたポール・セリュジエが学生監を

務めていたパリのアカデミー・ジュリアンの学生たちのグループであり、ボナールもその

グループの一員だったのだが、その後、日本絵画の洗礼を経て印象派とフォーヴィズムの間を

行ったり来たりしている感じの作風である。

 ボナールの作風の特徴として、例えば、フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)が

補色と呼ばれる色彩理論でお互いを引き立てるタッチでカラフルな作品を描いたことに対して、

ボナールの、例えば、展覧会のポスターにも採用されている『猫と女性 あるいは餌をねだる猫

(Woman with Cat, or The Demanding Cat)』(1912年頃)を観るならばおかしな

ことに気がつく。女性の髪や顔の色と背景の壁の色が同色で、まるで顔が埋まってしまう

ように見えるからである。

 結果的に、ボナールは背景の壁に顔が埋まらないように他の色を足していくことで女性の

顔を浮かび上がらせているように見える。その細やかな「補色」の積み重ねがボナールが

「色彩の魔術師(le magicien de la couleur)」あるいは「光の魔術師(le magicien de la lumière)」

と呼ばれる所以であろう。


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