MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『東京喰種 トーキョーグール』

2017-08-05 00:22:12 | goo映画レビュー

原題:『東京喰種 トーキョーグール』
監督:萩原健太郎
脚本:楠野一郎
撮影:唐沢悟
出演:窪田正孝/清水富美加/鈴木伸之/桜田ひより/蒼井優/大泉洋/小笠原海/村井國夫
2017年/日本

人間の臓器の「食べ方」について

 時代設定は2017年9月頃だろうか。主人公で大学生の金木研は気になっていた神代利世とデートの最中に人肉食種「喰種(グール)」の存在を知ることになる。利世に食されることは免れたものの、利世の臓器を移植されたことで「半喰種」と化し、人肉を食べたい衝動に苦悩することになる。
 様々な葛藤の末に幼なじみの永近英良を食そうとする寸前に四方蓮示と霧嶋薫香に連れられて、以前から通い詰めていた喫茶店「あんていく」がグールの溜まり場であることを知った金木はそこで働き始めるのだが、店主の芳村は人間との共生を目指しているものの、喰種対策局(CCG=Commission of Counter Ghoul)の存在を知り、自分が人間に命を狙われる立場になっていることを知る。
 深刻かつ火急の事件の割には関わる人物が異常に少ないのではあるが、その少なさが日本人と在日、あるいは琉球やアイヌの少数民族との「対立」の構図を身近に感じさせる。
 金木と笛口雛実がヘルマン・ヘッセの『デミアン(Demian)』という小説について語るシーンが印象的である。「鳥は生まれる時に卵の中から抜け出そうと戦う」という金木の引用した部分に対して、雛実がよく分からないと答える。金木は実際に卵(=世界)を割って、「生まれようと欲するものは一つの世界を破壊しなければならない」と説明する。それは雛実にグールとしての覚悟を説いたもので、実際に雛実は喰種捜査官の真戸呉緒を襲うことになり、真戸は41歳で、部下の草場一平は33歳で命を落とすのである。
 『noise』(松本優作監督 2017年)において中上健次や永山則夫などの日本の私小説が現代社会に対応できないのではないのかと疑問を呈しておいたのだが、『君の膵臓をたべたい』(月川翔監督 2017年)のサン=テグジュペリの『星の王子さま』や本作のヘッセの『デミアン』など海外文学にはまだ可能性が残っているのではないかと感じさせられた。
 それにしても人間の臓器が食べたいという同じテーマでありながら、『君の膵臓をたべたい』と本作の作風が正反対なところに思わず笑ってしまう。


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