日本橋高島屋8階ホールでは「文化庁新進芸術家 海外研修制度50周年記念展」が催されて
いる。上の作品は入江明日香の『La forêt noire』(2017年)で、本展の中で一番モダンだと
思った。因みにこの作品は「版画」として扱われていた。
しかし画家の中で気になった存在は、有名な政治家と同姓同名の福島瑞穂である。1936年
生まれの福島の最新作は『出口のない部屋』(2017年)というもので、裸電球の下で裸の
男女が薄暗い中にいるのである。画像がないのだが、福島の他の作品と同じような作風である。
気になったのはキャプションで、福島は「不条理を考察しながら描いて」おり、「カミュや
ベルイマン」のような仕事を目指しているが、「サルトルには興味がない」というのである。
しかし作品のタイトルである「出口のない部屋」とはサルトルの戯曲『出口なし(Huis Clos)』
(1945年)と類似しており、明らかにサルトルを意識しているように思う。昨日、本人が来場
していたので訊ねることもできたのだが、話が長くなりそうで、さらに難しい話になった場合に
対応できるほどの知識もなかったので諦めた。日本画壇で「知性派」は珍しく、私が知る限り
岡本太郎くらいである。