MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『午前中の時間割り』

2017-08-01 00:03:46 | goo映画レビュー

原題:『午前中の時間割り』
監督:羽仁進
脚本:羽仁進/中尾寛治/浜田豊/荒木一郎
撮影:佐藤敏彦
出演:国木田アコ/蕭淑美(シャウ・スーメイ)/秦野卓爾/沖至/吉田まさ子/矢部正男
1972年/日本

「サマー・オブ・ラブ」の栄華と失墜について

 『妖精の詩』(1971年)が『禁じられた遊び』(ルネ・クレマン監督 1952年)から着想を得たように、本作は『ひなぎく』(ヴェラ・ヒティロヴァ監督 1966年)から着想を得たように思う。撮影方法も『妖精の詩』と同様に、最初に4人のメインの登場人物に8ミリカメラを持たせて自由に撮影させた後に、その8ミリフィルムを編集しながらストーリーのようなものを築き上げたように思う。
 主人公で17歳の高校生の山中玲子は旅行から帰ってくるなり、友人の今木草子の実家を訪れるのだが、彼女の母親は娘に関心がないように慌てて出かけてしまう。実は玲子は草子と旅行に行っており、そこで草子は行方不明になってしまったのであるが、玲子は崖から落ちて草子は死んだと思っている。しかし高校の国語教師の浜口は玲子と同級生の下村親二に口外しないように口止めし、授業では草子の「青い雲 猫ものぞくよ ダリの窓」という詩を引用しながら彼女の想いをとくとくと語るのであるが、やがて浜口自身が精神を病んでしまう。
 実は玲子と草子は旅先で沖という男と出会っていた。沖は空高く駆けようと気球を制作していたのであるが、玲子と草子はそんな沖を憧れの目で見ていた。ある日、草子が沖と2人きりで過ごした後に、草子がかなり落ち込んでいたことが玲子は気になっていたのであるが、その後に草子が行方不明になったのである。
 旅行先から戻って来た玲子は沖を訪ねたのであるが、沖はしがない郵便局員で警察にも追われていて、玲子は落胆する。沖は元自衛隊員でラッパ吹きだったのであるが、時間を知らせるためのラッパ吹きがサラリーマンのように感じて嫌気がさし、辞める際に備品を盗んだために追われていると言うのである。しかし玲子を襲い親二に邪魔をされた後に沖は逮捕され、化けの皮が剝がされる。その後玲子と親二は残された8ミリフィルムで映画を完成させようと試みる。
 これは1967年のアメリカ、サンフランシスコの「サマー・オブ・ラブ」の栄華と失墜を描いたものであろうが、メインカルチャーを象徴する浜口でさえ精神を病んでおり、チャップリンを装った草子が崖から落ちたのであるならば、カルチャーそのものが迷走しているのであろう。


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