MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『君の膵臓をたべたい』

2017-08-04 00:47:53 | goo映画レビュー

原題:『君の膵臓をたべたい』
監督:月川翔
脚本:吉田智子
撮影:柳田裕男
出演:浜辺美波/北村匠海/大友花恋/森下大地/小栗旬/北川景子/上地雄輔
2017年/日本

出会いの「偶然性」になすすべがない高校生について

 主人公の山内桜良が2003年11月29日から付け始めた「共病文庫」と名付けられた闘病日記をたまたま同じ病院に入院していた「僕」が2005年4月12日に読んでしまったことから2人の「友達以上、恋人未満」の奇妙な関係が始まる。
 作品の冒頭は2017年4月、高校教師になって6年経った「僕」がサン=テグジュペリの『星の王子さま』を教材に授業をしている。「僕」はキツネと別れる際に「相手を悲しくさせるのなら、仲良くなんかならなければ良かった」と嘆く王子に対して「大切なものは、目に見えない」というキツネを言葉を教えているのであるが、これはもちろん「僕」と桜良の関係を暗示したもので、出会いの「偶然性」という目に見えないものだからこそ大切なものなのである。実際に、桜良の元カレの学級委員長の隆弘とは親友の恭子の紹介で交際するようになったのだが、上手くいかずに別れてしまっている。
 2人の関係は6月11日の桜良の予期しない死で終わりを迎えるのであるが、恭子の結婚式当日に恭子宛ての桜良の手紙を見つけた「僕」が恭子に届けることになる。しかしここの演出は上手くいっていないと思う。手紙を読んだ恭子はこの時初めて「僕」と桜良の関係の奇妙さの原因を知ったはずで、それならば「僕」ではなくて恭子の方が「僕」に感謝を込めて友達になってくれるように頼むのが筋であろう。全く女心が分かっていない脚本だと思ったら、何と吉田智子が脚本を担っており驚いた次第である。


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