原題:『The East』
監督:ザル・バトマングリ
脚本:ザル・バトマングリ/ブリット・マーリング
撮影:ロマン・バスヤーノバ
出演:ブリット・マーリング/アレキサンダー・スカルスガルド/エレン・ペイジ
2013年/アメリカ
理想には届かない物語について
「ザ・イースト(The East)」と呼ばれる環境テロリスト集団と、テロ活動からクライアント企業を守る諜報機関との対立構図は物語として分かりやすく、例えば、メンバーの一人であるイジーの両親が経営する工場が排出する汚水を問題として扱うことはまだしも、新薬の副作用に関して糾弾する際に、「目には目を」というスローガンの元、病気でもない発売元の会社役員たちを騙して薬を飲ませることには違和感を感じる。実際に、新薬は様々な試験を経て認証されており、その薬で助かる人たちもたくさんいるから発売されているはずで、話に無理があると思うのだが、そもそもいきなり両手を縛られて食事をさせようとする際に、口を使ってどうにか食べようと試みるジェーンを見下すように、他のメンバーたちはお互いの口に食べ物を運ぶのであるが、新入りのジェーンにそのようなずうずうしいことが出来るわけがなく、それならば最初から隣に座っているメンバーが口でスプーンを咥えてジェーンの口に食べ物を運んであげればいいわけで、そのようなことも理解できないほどイタい集団が存在することは認めなければならないだろう。環境には気を使えても「他者」には気を使えないのである。
主人公のジェーン・オーエンが選んだ行動は、「ザ・イースト」のようなテロ活動ではなく、かと言っていくら正義ではあっても利益が発生しない活動はしない諜報機関でもない行動だった。恐らく入手したリストを手掛かりに自分と同じように潜入捜査をしているメンバーたちを集めて、怨念からではなく、利益も度外視した冷静な行動になるはずなのだが、ジェーンの行動がラストでダイジェストのように誤魔化し気味に描かれているように、果たしてそのような理想的な活動が可能なのかどうかは微妙である。例えば、『ダラス・バイヤーズクラブ』(ジャン=マルク・ヴァレ監督 2013年)で描かれているように、主人公でエイズを患ったロン・ウッドルーフが自ら人体実験をして無認可の新薬を試し、法的不備を問うくらいの気概が必要であろう。