現在、国立西洋美術館において、「モネ、風景をみる眼」という企画展が催されている。
印象派の巨匠と呼ばれているモネではあるが、やはり若い頃は先達に倣い、例えば、
写真左のジャン=バティスト・カミーユ・コロー(Jean-Baptiste-Camille Corot)の
「ナポリの浜の思い出(Reminiscence of the Beach of Naples)」(1870年ー1872年)と
写真右のクロード・モネ(Claude Monet)の「並木道(サン・シメオン農場の道)
(Walk (Road of the Farm Saint-Simeon))」(1864年)は筆のタッチとしては
ほとんど変わらない。
1972年の「印象・日の出(Impression, soleil levant)」を境にモネは独特の
技法を取るようになり、例えば、「舟遊び(On the Boat)」(1887年)を少し離れた
場所から観賞するならば、あたかもボートが水の上に浮かんでいるように見える。
ところが本展において同じ「ボート」をテーマとして扱っていながら奇妙な作品があった。
1890年の「バラ色のボート(The Pink Skiff)」という作品なのであるが、何故か
この作品においてモネはいつもの自身の手法をとっていないように見える。実際に、
少し離れて観てみても水面からボートが浮き上がってくることはない。モネは水の中の
藻を描いたと証言しているようだが、私にはモネがゴッホの技法を真似て描いたように
見える。しかしながらゴッホの作品のように狂気をはらんだ「グルーブ感」が
湧き上がってこないのは使用している絵の具の量が足りず、絵に厚みがないからであろう。