原題:『一代宗師』 英題:『The Grandmaster』
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ/ゾウ・ジンジ/シュー・ハオフォン
撮影:フィリップ・ル・スール
出演:トニー・レオン/チャン・ツィイー/チャン・チェン/マックス・チャン/ソン・ヘギョ
2013年/香港・中国・フランス
流派に対するこだわりについて
そのきらびやかな映像には文句のつけようが無いのであるが、ウィルソン・イップ監督の『イップ・マン 序章』(2008年)、『イップ・マン 葉問』(2010年)を観てしまった者としてはトニー・レオンが演じた主人公の葉問(イップ・マン)に違和感を持たざるを得ない。イップ・マンが用いる詠春拳は手技に重点を置いた拳法のはずなのであるが、手技ということに全く拘りが無いかのようにトニー・レオンは脚も大胆に使ってずいぶんと派手に飛び跳ねてしまっている。エンターテインメント作品として盛り上げる上での演出はある程度仕方がないとしても、メインストーリーは中国南北武術界の統一による真の「グランド・マスター」を決めるというものであり、監督は中国の上海出身で香港育ちのウォン・カーウァイなのだから中国武術に無知なわけではないにも関わらず、それぞれの流派に対するこだわりが見受けられず、結果的に、画面だけは豪華なのであるが、感動には程遠いものになっているように思う。
それにしても宮宝森(ゴン・パオセン)の一番弟子である馬三(マーサン)がどのようにして師匠を殺害したのか、その手際が余りにも鮮やかすぎてよく分からなかった。