原題:『The Impossible』
監督:J・A・バヨナ
脚本:セルヒオ・G・サンチェス
撮影:オスカル・ファウラ
出演:ナオミ・ワッツ/ユアン・マクレガー/トム・ホランド
2012年/スペイン
人種と経済の関係性
イギリス人の医師であるマリア・ベネットとスコットランド人で仕事で日本に出張している夫のヘンリーがルーカス、トーマス、サイモンの3人の息子を連れて2004年のクリスマス休暇を過ごしたタイのリゾート地で遭遇した、スマトラ沖で起こった大地震により発生した巨大津波が巻き起こす物語は「白人優位」という批判が見受けられるが、これは人種の問題というよりも経済力の問題と捉えるべきであろう。もちろんタイトル通りに「ありえない出来事」が度重なる幸運により可能になったことは全くの偶然であるにしても、マリアが自身の判断で現地の医師に抗生物質を注射させたことは、医師としての知識があったためであり、一方、携帯電話を巡る静かなる‘攻防’において、ヘンリーが携帯電話を借りることが出来た理由は、他の被災者たちにはヘンリーのように助けを求められる相手がいなかったように見える。電話を受けたヘンリーの父親が手配したからこそ保険会社が用意したベネット一家専用のチャーター便で一家は助かったのである。もしも経済的に余裕がなければ、父親と離れ離れになったトーマスとサイモンのように他の被災孤児たちと一緒にトラックでまとめてどこかへ連れ去られた可能性もあったはずで、2人は寸前のところでルーカスとヘンリーと再会でき、両親の‘経済力’のおかげで助かったのである。