秋の台風に翻弄されている日本列島の夜、のそのそわが家に侵入してきた虫がいた。ゴキブリかと思いきや、近づいても動きが鈍い。これはふつうのゴキブリではないと直感した。畑で「オオゴキブリ」を以前捕獲したことがあるが、この個体は翅がない。翅がないゴキブリっているんだ?
調べてみると、亜熱帯性の「サツマゴキブリ」のようだ。1979年に八丈島で初めて発見された新顔だ。ソテツなどの観葉植物の運搬に付随して上陸した侵入生物らしい。九州あたりが北限だったが今では静岡・愛知・神奈川・千葉などで確認されている。寒さに弱いので家屋に浸入したのかもしれない。今までは暖かい海岸地域で見られたようだが、内陸部側のわが中山間地で確認されるのは珍しいのかもしれない。
と同定したものの、微妙なところで違和感があった。というのは、「オオゴキブリ」の幼虫にも似ていたからだ。成虫と思っていたのが間違いのもとかもしれない。サツマゴキブリには縁取りがあるのに、これはないから結論的には「オオゴキブリ」の幼虫だった、というのが順当のようだ。これでも幼虫だからこれから翅が生えるわけだ。というわけで、森のお掃除屋でもある「オオゴキブリ」を畑に解放したのだった。