山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

小農・家族農業が立国の礎

2020-11-02 20:45:56 | 読書

 前々から農業に生きる山下惣一さんの発言に注目してきたが、やっと『小農救国論』(創森社、2014.10)にたどりついた。大規模・専業農業はいずれ破たんすることを喝破し、かつての日本の農業は小農・家族農業が支えてきたし、これからもそれを支えるしくみが大切だと著者は強調固辞する。

   

 ロシアの人口の70%が郊外に「ダーチャ」という自給農園を持つ。野菜の77%がこのダーチャで生産されるという。政情が厳しくともそれを潜り抜けてきた庶民の生活の知恵だったのかもしれない。著者はそうした日本農業の再生のヒントを紹介しながら、農業とその関連作業は国民のいのちにかかわる「公益」であって、「農業はもともと儲かるものではない」と断言する。

      

 大規模農業は日本の事情に合わないばかりか、農業と自然とを市場化してしまったことでますますの赤字と不安と人口流出を生み出している。それは林業でも全く同じことが言える。山下さん自身が農業を懸命に従事してきただけにブレない強さがある。

                   

  日本は「経済成長するほど、農業や地方が疲弊してきたのがこれまでの歴史」で、その犠牲の上で都会は流出した地方の労働力を食い物に利潤を得てきた。その結果、人間はモノに支配され欲望を拡張してやまない。たしかに、イギリスの産業革命以来、その流れは本質的にはいまだに変ってはいない。

 そして、畜産業の大規模化による破たんが明らかだが、規模拡大、単作化、コスト低減を勧めてきた。そのことで農業生産の担い手を家族農業から企業農業へと選手交代させ「農業潰し」を邁進してきているのが現在の農政だと警告する。

   

 同時に、「グローバリゼーションになって以降、流れを変えたのは全部現場。生消提携も、農産物直売所もそう、有機農業なんか、国が認めていないのを現場が広げていったわけだから、そういう農家をまわりの消費者が支えれば地域は変わる」と、山下さんは希望の筋道を力説する。

 続けて、「そんな時代を生き抜くには自分の足元を固めること。とにかく自分と家族が食べるものだけは自力で確保することが何よりも重要」という視座を明確にする一方、「成長よりも循環、拡大よりも持続、競争よりも共生。これが日本の農村の論理であり、農業の原点だ」として、「市民皆農の時代」に期待をかける。荒っぽい山下さんの論調だったが、農業を真摯に背負ってきた人だけに基本がぶれない言葉の強さがそこにあった。

  

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