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目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

キャリアの軌跡 PALTEK取締役 徳永郁子さん

2010-02-03 23:54:43 | 活字の海(新聞記事編)
記:無記名のため、不明
日本経済新聞 2009年12月28日(月)夕刊 7面生活・ひと
取り上げられた人:徳永郁子さん(PALTEK取締役)
サブタイトル:社員連携の大切さ知る


こうした記事を読む都度。
僕の中で、整理がつかなくなる。

人の強さとは。
人の弱さとは。

何を一体指すのだろう。


氏は。
アメリカの大学に留学し、経営学修士のMBA取得後。
現地の地方テレビ局に就職する。

そこで、氏が経験したものは。

文字通り。
TVドラマや映画で繰り広げられるような、過酷な出世競争の世界。

「苦労して練り上げた企画が上司の手柄となり、
 他人の失敗が自分のミスにすり変わる。
 『いかに自分がのし上がるかという集団だった』」

なんとも。
凄絶な世界である。

勿論。
僕の所属する社会でも似たような例は有るが。
露骨さに於いては、足元にも及ばない。

そのことを、幸運とみるのか。
ぬるま湯に浸かっているだけとみるのか。

その判断は、個々人によって分かれるところだろう。


ただ。
少なくとも、氏はそうした世界に一度は足を踏み入れた後に。

「信じられる人と仕事がしたい」

という思いから、PALTEKに転職する。


そこでの会社生活における、二つの失敗が。
記事では紹介される。


一つは、仕入れの確保を急ぐ余りに、中継ぎをパスして元売と直接交渉を
してしまったこと。

これにより、信頼関係に齟齬をきたし、激怒された、と氏は述懐する。

もう一つは、仕入先との連携を密にする余り、販売部門との関係が希薄と
なってしまったこと。

仕入れ部門を担当していた氏にとって、商品の仕入れは当然本来業務。
ただ、それに傾注する余り、仕入れた商品をさばいてくれる営業部門と
連携が取れなければ。

必然的に、不良在庫や在庫不測といった問題が生じることは、容易に
想像できることでもある。

会社の仕事と言うものは。
すべからく、連動しているのだから。

自分のポジションだけ見ていたのでは、円滑に回ることなど有り得ない。


関連している、全ての人、全ての組織との関係性を意識して動くことで。
初めて円滑に車輪が回りだすこともある。

そのためのキーワードは、

 「コミュニケーションこそ信頼のきずな」


そうした教訓を学んだことで。
氏は、アメリカでの苛烈な個=弧のパワーによる業績拡大よりも、
組織連携による業績拡大こそが企業の本道であるという持論を
導き出すこととなる。

それに、異論は無い。

実際。
氏の所属するPALTEKの経営哲学は、「多様な存在との共生」
である。

つまり、取締役である氏の理念と企業哲学とは完全にシンクロして
いることとなる。


ただ。
個々の事例として、それが奏功する場合もあるだろうが。

組織論としてみたときの優劣が、簡単に論じられるものだとは、到底思えない。

そう僕が思う根拠の一旦は。
各国における労働生産性の比較である。

財団法人 社会経済生産性本部の2006年度版調査によれば。
労働生産性の各国比較における日本の順位はOECD加盟30カ国中第19位。
主要先進7カ国間では最下位。
ちなみにアメリカは第2位である。


これには、複雑な日本の流通業態等も全て入った総体としての比較論である。
勿論それも、日本の国力を示す物差しではあるが。

個々の生産性の発揮という比較を行う際には、些か公平性を欠くと言うことも
言える。

では。
日本が得意とされるものづくり=製造業における国際比較はどうか?

こちらは。
24カ国中第3位。

おお、やはり。
我が日本は素晴らしいではないか。

そう思いたくもなるが。
この分野における第1位は、アメリカなのである。
(製造業のみ加重移動平均為替レート換算)


このことを、どう捉えるか。

そも。
冒頭に挙げたアメリカにおける氏の経験を持って。
アメリカの全ての企業の経営の根幹を理解したつもりになることも危険
だと思う。

もっとも、それは、僕達が普段から認知しているアメリカ像と余りにも
違和感なく親和するのだが。


いずれにせよ。
バブル崩壊後の、失われた10年以降。
日本は、企業の構造改革を進める一環として、従来のコミュニティ型会社
組織から、個の力量を最大限に評価していく排他型会社組織へと変貌を遂げ
つつある。

その一環として、成果主義の導入や終身雇用制の崩壊等が具現化してきて
おり、その日本における功罪についてもよく議論が為されるところである。

そして。
昨今のトレンドでは。
どちらかといえば、そうした欧米流の人事評価や組織論が、実は日本の
国情にはマッチしていないのではないか?
といった論調の議論が散見されるようになっている。

そも。
日本がまだ従来型の社会構造であった喪われた10年以前の労働生産性比較に
おいては、日本がアメリカを上回りダントツの1位だった時代もあるのだ


まあそれでも。
企業は、巨大な船のようなもので。
一度切った舵を切り戻すのは、その大きさと反比例して大変な労力を要する。



その中で。
あえて、共生を企業哲学の中に掲げているPALTEK。

実際の雇用や企業運営上に。
その共生の概念がどのように反映されているのかまでは知る由も無いが。

氏の

「ひとりのパフォーマンスには限界がある。
 社員が連携してこそ組織は強くなる」

「取締役として組織の求心力を高める努力がまだまだ足りない」

という述懐からは。

少なくとも。
PALTEKという会社は、社員を選別し切り捨てていくのではなく、
個々の特性を最大限に活かす、そのためのツールとして社員相互の
コミュニケーションを活性化し、組織の全体力を高めていこうとして
いるようにも見える。


日本人という国民性の特性を最大限に活かしていくためには、どのような
組織運営がもっとも望ましいのか。

PALTEKという会社の企業哲学の有り様が。
今後の日本企業が目指すべきベクトルを指し示すのかもしれない。

今後の、同社の動向に注目したい。

(この稿、了)








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