活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

自由に「何でもあり」  さをり織りの魅力とは

2009-11-11 00:26:30 | 活字の海(新聞記事編)
            (※ 写真は、手織適塾さをりのHPより)


2009年9月13日(日) 毎日新聞朝刊 20面くらしナビより

くらしナビ 楽しむ Amusement
記:反橋希美
サブタイトル:「即決」がコツ 傷もまた味



マライカのようなエスニック系の衣料が好きで、よく買い求める。

あの、独特の風合い、色使い。

綿主体の優しい肌触りの生地が。
毒々しいようで、でもどこか落ち着くアースカラー主体の色調が。

僕の、お気になのである。


エスニック衣料は、細やかな造作のものも多い。
丹念にパッチワークされたカバン等を見ていると、その緻密な
縫い目の裏に有る労力を想像し、大事に使いたいと思う。

更に。
目の詰まった生地そのものを見ていると。
それを織り込む手間を思い、頭が下がる。

自分が、縫い物、裁縫系は全く造詣が無いために。
その思いは、一入(ひとしお)である。



そう。
僕にとって。
基本的に、生地といえばきちんと目の詰まったもの。
それが常識だった。

#そういや、高校生の時に彼女に貰ったマフラーは、ところどころ
 目がほつれていたが、それはまあご愛嬌というものであろう(笑)。


その常識が。
今回の生地を、いや、記事を読んでコペルニクス的転回を遂げてしまった。


それが、さをり織りである。


記事の冒頭で、さをり織りの特徴が簡潔にまとめられている。

曰く。
『織り手の個性を尊重し、折り方に決まりがない「さをり織り」』


もう少し具体的に言えば、

 ・織り機を使って、自分で生地を織っていく

 ・その際に、糸を通し忘れたり、端がつれたりしても気にしない

 ・そうしたものを全て飲み込んで織り上げた生地は、世界に一つ
  だけのオリジナルなものとなる

 ・その「何が出来るか分からない」感が、さをり織りの魅力である


といったところだろうか。

実際。
記者も、自らさをり織りに挑戦してみて。

「織り目にすき間があったり、フェルトの原毛がもこもこ飛び出したり、
 何となくアーティスティックなストールを完成」

させている。


織りに用いる糸も、自由自在。
綿、レーヨン、麻…。
更に、色合いも。

大切なことは、それらを選ぶときに「0.5秒で判断すること」だとか。

別に、糸選びに限らない。

何かにつけて。
人は、あれこれと迷って選択する。
時には、迷った末に、結論を出さず(出せず)に先延ばしにすることも。

なぜ、そうしたことが起きるのか。

それは、自分の選択が完璧なものでありたいからではないか?

こうありたい。
こうあらねばならない。

そうした思いが、重石となって選択の自由を奪っていく。

よいよい選択をしたい。

それは、自己を高みに導こうとする意欲が有る人であれば、
当然持つ思いだろう。

それでも。
いや、それだからこそ。

その思いに拘泥しては、いけないのではないか。


「こうでなければ」

その頚城(くびき)から逃れて。


どんな素材の、どんな色の糸を使ってもいい。
そう思えた時に。


もう無いと思えていたところに、新たな選択肢も生まれてくる
のではないか。

勿論。
どのような選択肢でも可。
という訳にはいかないだろうけれど。

何かを実現したい。
そう思ったときに、その実現の達成を為すことが出来ずに。
歯がゆい思いをすることは間々ある。

漫然とではなく、積極的に努力しているという自負があれば、
尚更だろう。

それでも。
そうしたときに。
少し、振り返って。

自分が本当にやりたいことを実現する方法が、今トライしている
ものだけなのかどうか。

もっと他にアプローチのしようもあるのではないか。

そう考えることの出来る余裕を持つこと。

それこそが、さをり織りの真価である多様性の発揚なのだろう。




大切なことは。
そうした、多様性を受け入れ取り込める柔軟さを持つこと。


そんなことを、さをり織りに教わったような。

そんな気がした。


(この稿、了)





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