活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

となりの達人 ~サッポロライオン 海老原 清さん(中)

2007-11-21 23:12:20 | 活字の海(新聞記事編)
毎日新聞 11月21日 朝刊 9面 経済がわかる 企業がみえる  より

副題:うまいビールついで40年  タンクの洗浄こそ命


昨日に引き続き、ライオン銀座七丁目店の海老原さんのお話。

今日のこのコラムが、またとても面白かった。

新聞にも写真が載っているが、銀座七丁目店には高さ約1.5mの
ステンレス製の大型タンクが6本在る。

このタンクは、その大きさ故持ち運びが出来ないために、
(何せ、大ジョッキ約1600本分のビールが入るというのだ!)
すえつけた店舗で洗浄を行う必要がある。

これが結構な大仕事なために、現在では工場に持ち帰り、機械洗浄出来る
小型のタンクに殆ど変わってしまい、銀座七丁目店のような大型タンクは
新橋ライオンと、他1店に各1本ずつしか残っていないそうだ。

その大型タンクの洗浄には、1本約40分かかる。

セ氏2度に保たれた貯蔵庫での作業は、体に厳しいと思う。

しかも、その洗浄プロセスたるもの、あだやおろそかではない。

最後には洗い残しが無いことを、試験紙まで使って確認するというのだから、
恐れ入る。

しかも、洗浄はそれだけではない。

毎日閉店後に、タンクとサーバーを結ぶ30mもあるポリエチレン製の
ホースも、専用のスポンジと水できれいに洗う必要があるのだ。

食品に関する不正や偽装が横行している世の中で、
40年もの間、これらの洗浄を実直に繰り返し、なおまだ情熱を燃やし続ける
海老原さんの、旨いビールを出したい、という思いに圧倒される。

同じ手間隙かけるのでも、返品された包装紙の賞味期限シールを
取り替えるのとでは、大違いだ。

海老原さん曰く、

「サーバーまで手入れの行き届いたビールを送るのが仕事の八割。
 つぐのは、ほんの一部分なのです」

く~、格好いいではないか。

ホールで、お客様の視線を浴びながら、ジョッキにビールを注いでいく。

その一番目立つ場面を敢えて仕事のほんの一部分と言い切り、
本質は、バックヤードにこそあるとする、その美学に心打たれた。
#なんだか、「さよなら 絶望先生」モードが少し入ってきたぞ(笑)。

本当にいい仕事というものは、そういうものなのだろうな、と思う。

目立つところ、派手なところも勿論大切だが、
そこに行き着くまでに必要な一つひとつの工程にこそ、
その仕事の真髄があるのだろう。

自分の仕事を振り返ってみたとき、

人から見えるところでしか頑張っているのではないか、
見えないときには、どこかで自分をごまかしていないか?

…ビールを飲んで、反省します。


付記

ただ、今日のコラムで、一つだけ納得できないところがあった。

海老原さんは、この大型タンクの洗浄は

「自分でやらないと気がすまない」

として、部下にも任せていないそうだ。

自分の仕事に責任感を持つのは当然だが、上司がそれでは、
部下はどうすればいいのだろう?

職務に忠実であるあまりに、部下がそのスキルを学ぶ機会を
スポイルしてしまっているのではないか?

もっともこれは、海老原さんに、その気にさせるほどの部下が
まだ現れていない、ということなのだろうか?

#ライオン銀座七丁目の皆さん、すみません。
 単なる無責任な妄想です…

勿論、お客様にお出しする商品を扱う以上、失敗は許されない。
しかしながら、部下を育成することも上司の仕事ではないか?

このお店が、海老原さんの個人所有であれば、自分の意思で閉店も出来るが、
そうでは無いのだから…。

その点だけが、心に引っかかってしまった。




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1 コメント

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コメントありがとうございます。 (ル・コルビジェ)
2007-11-23 10:19:55
7丁目のライオンは都内や地方のライオンとは雰囲気が違っていて、イイですよね。
観光名所化してるのもイイかもです。
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