すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

林真理子「着物の悦び」

2005-03-30 18:37:56 | 書評
弱き者よ、汝の名は女なり


三ヶ月ほどプラプラ無職だったのですが、ようやく仕事を再開しました。

で、読んだ本が、林真理子「着物の悦び」
どんな仕事に就いたのか、想像が簡単につく、非常に安易な本の選択です…………。


本自体は、著者が着物道楽にはまっていく過程で感じたこと、考えたことを書きつづっています。
着物に興味のない方にはまったくつまらない本ですが、これから本格的に………とまで言わずとも、ちょっとかじってみたいくらいの初心者にもうってつけの本になっていると思います。


で、興味のない僕としては、下記の部分なんかが面白かったです。
「本物の古典というのは、素晴らしいモダンになる」
 というのは中野さんの名言だが、私も本当にそう思う。何もきてれつな色や柄を持ってこなくても、日本に昔からある、麻の葉や青海波、鱗や巴や縞ものの新鮮な美しさといったらどうだろう。こういうものを自分なりに味つけで若い人が着こなしたら、そりゃあ素敵だと思うのだが、彼女たちが好きなのは毒々しい色とかたちばかりだ。
 成人式やお正月の頃、私はなんとも悲しい気分になってくる。街行く女の子たちが、まるで蛍光色のような、ペンキを塗りたくったような地色の振袖を着ているのだ。週刊誌で、あるアイドルの成人式の振袖を見た私は、あやうく本を手から取り落としそうになった。
 けばけばしいエメラルドグリーンの大振袖に、銀の糸で大きなバラが刺繍してある、きっとプロダクションが用意したのだろうが、こんな着物を着せられて、後で写真を見た時恥ずかしくならないのだろうか。これならば無地の着物に上等の帯を締めた方がずっといい。(林真理子「着物の悦び」18~19頁 新潮文庫)

男性から見た視点としては、得てして「女性は、女性性を憎むよなぁ」というイメージがあるのですが、どうでしょう? 本書でも度々、妙齢だったり、センスがなかったり、下品だったり、配慮が欠けるような女性を批判しております。


もちろん「男性が男性性を憎む」ということもありますが、女性の場合は、特に売りにする傾向があるような。

以前に書いた桐野夏生にしても、(そんな熱心に見たこともないのですが)内館牧子や橋田壽賀子も、妙に女性性の暗黒面を好んで描こうとするのは、そうすると売れるのか、それとも性(さが)なのか。

という感じ。
もっとも本書では、そんなグログロと批判してはいませんけどね。


着物の悦び―きもの七転び八起き

新潮社

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