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雑感や書評など

井波律子「奇人と異才の中国史」

2005-03-01 11:08:18 | 書評
三国志だけが、中国史ではない


陳舜臣「小説十八史略」を読んで以来、中国史は好きです。

これのおかげで、高校の世界史では、中国地域に限っては勉強が必要ありませんでした。
ありがとうございました。


で、久しぶりに軽く中国史関連の本が欲しくて手にしたのが、「奇人と異才の中国史」です。

本書では古代から近代までの歴史上の人物五十六人を、簡潔に紹介しております。
思想家の孔子、英雄の曹操、詩人の李白といった正史的な人物から、講釈師の柳敬亭、蔵書家の毛晋という野史的な民間人まで拾い上げています。


こちらは、岩波新書から出ております。
なんとなく思ったことなんですが、こういう形式の本が成り立つのは、「日本史」以外では「中国史」だけではないでしょうか?
探せば「奇人と異才のイタリア史」とか「奇人と異才のインド史」とか「奇人と異才のモルディブ史」もあるのかもしれませんが、それが岩波というメジャーな出版社で、新書という一般向けの形式で出版されることは、ないのでは?

日本人にとっての中国史は、「日本史に内包している」とまでは言えなくても、「日本史と併走している」という意識があるんでしょうなぁ。


隠忍して苟しくも活き、糞土の中に幽せられて辞せざる所以の者は、私心に尽くさざる所有り、鄙陋にして世を没し、文彩の後世に表れざるを恨めばなり。(井波律子「奇人と異才の中国史」24頁 岩波新書)

で、引用した文章は、司馬遷が死刑ではなく宮刑という辱めを選んだことについて、自分で説明しているくだりです。

今回は、歴史の父である司馬遷に敬意を表して、という感じです。


「奇人と異才の中国史」の方ですが、一人の人物について3頁~4頁程度で簡単に説明しているので、サクサク読めます。
内容も平易ですので、ちょっと中国に触れたいという時には、かっこうの本では?


奇人と異才の中国史

岩波書店

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