すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

懸田克躬「病的性格」

2005-03-06 13:20:02 | 書評
クレオパトラの鼻がもう少し低かったら歴史が変わっていたように、ケリーの顔がもう少し短かったら………


かなり前の話で、かなりうろ覚え。
ブッシュ(父)大統領が来日した際に、日本の平均的な家庭を紹介するというので、えらく小奇麗な格好をした夫婦の一軒家を訪ねたことがありました。多分、都内だったと思うのですが、とても「平均的な家庭」とは言えない広さの一軒家だったのを覚えています。(ニュースキャスターにも、つっこまれてました)

ええかっこしようとしているんだか、何なんだか………。

なにが平均? というのは、けっこう怪しいもの。
所詮、数字だからね。扱う数字を選べば、自分の望んだ結果を導き出すことも、できます。

まして人間の性格なんて、どうやって平均を考え出すのやら。


病的性格または精神病質という概念は実践的な概念であり、異常性格のうちで、その異常性のために自分が悩み、または第三者(シュナイダーは社会が悩むという表現を使っている)が悩まされるものであると一応約束されている。したがって、病的性格の判定には、まず、性格の異常が認められること、次いで、そのためにみずから、あるいは他人が悩んでいるという二段の操作を必要とするのである。(懸田克躬「病的性格」24頁 中公新書)

「慎重」と「臆病」、「勇敢」と「猪突」、「豪華」と「過美」、「溺愛」と「過保護」等等、過ぎたるは及ばざるが如しですが、まぁ、そのさじ加減は難しいものです。

本書では、極端なところ、その性格が「邪魔か? 邪魔ではないか?」と、ずっぱりと功利的な基準で判断しております。
分かり易い基準です。

しかし、ちょっと古い本なので、摂食障害の「過食/拒食」を「巨食/無食欲」と表現しています。初版が1965年となっていますので、仕方ないのでしょうけど。

内容は古いですが、非常に網羅的です。さすがに今まで版を重ねているだけあります。そのため、ちょっと専門的です。軽い気持ちで手にすると、ちょっと面食らうかもしれません。

入門書としては最適ですので、なにかに入門したい方には、よろしいのでは?