すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

ミロシュ・フォアマン「カッコーの巣の上で」

2005-03-11 17:34:48 | 映画評
造反有理


にも少し書いたのですが、精神病院にお見舞いに行ったときのことです。

知人の患者がいた病室は、閉鎖病棟の個室でした。扉の上にはスモークガラスでカメラが隠してありました。
「見られてるの?」
「嘘か本当か分からないけど、私には使ってないって」
ふーむ。

病室にあるものは、必要最低限といった感じ。借りているテレビに、ベッド、その横には物入れ。見舞い客は椅子を廊下から持っこなくてはいけません。
壁はすっきりしたものです。なにも貼ってありませんし、洋服をかけるようなフックもありません。自殺防止です。窓もあるのですが、五センチくらいしか開きません。逃亡防止です。

携帯電話は没収。使うときは、看護婦に頼まなくてはいけない。電池が切れたら家族に持って帰ってもらい、充電をお願いします。
もちろん、はさみや果物ナイフといったものもNG。
お金も自分では持てません。週に一回おこづかい日がありまして、病院から渡されるとのこと。ただし金額は自分で決めていいそうです。まぁ、病院のお金じゃないですからね。


おもしろいところでは、ライターも駄目でした。

タバコは、喫煙室だけ。そこにライターも置いてあるのですが、持ち去られないように紐で重しにつながれています。テーブルには、そのライター以外に、灰皿代わりの洗面器がありました。洗面器の中では、黒く濁った水に吸殻が浮いています。
僕は吸わないのですが、患者の方が吸いたいと申すので、その喫煙室にいたときのことです。

年の頃は25歳前後で、髪を短く刈り上げた長身の男性が入ってきました。
後から聞いた話なのですが、彼は知能に障害があり、さらに盗癖が治らず入院中とのことでした。

タバコが大好きで、週一のおこづかいの日になると、その日のうちにお金は煙となって消えてしまうそうです。
で、残りの六日間は、人から恵んでもらたっり、十円で買おうとしたり。

僕の知人はかわいそうだからと最初はあげていたのですが、そのうち本人のためにならないと断るようにしたそうです。それでも欲しがるので、
「1本100円よ?」
と言うのですが、100円玉が余っていると、そんな暴利でも買っちゃう。

で、僕が喫煙室にいたときも、彼はタバコを切らしていた様子。所在なげに、椅子ではなく、床に座ります。

そんな彼を見て、僕の知人は洗面器の灰皿を指差して、
「タバコは食べちゃ駄目よ?」
と注意します。

あぁ、吸えないと食べちゃうんだ…………。


で、「カッコーの巣の上で」
精神病院に送りこまれたマクマーフィが、その管理体制に反発し、患者を巻きこんで一騒動起こすという物語。

患者と病院の反目というのは、「17歳のカルテ」と同じなんですが、捉え方がまったく逆方向です。
時代背景があるのかなぁ~と思ったのですが、設定上はそんな大差はありません。むしろ、製作年代の違いなんでしょうねぇ。

作品名患者と病院の関係時代設定製作年代
「カッコーの巣の上で」父性的 病院の命令に一方的に従わせようとする1963年1975年
「17歳のカルテ」母性的 患者自身の自覚を促すように導く60年代末2000年

1975年だと、まだ政治の季節だったんですかねぇ。
主人公のマクマーフィが逃亡のパートナーとして選ぶのがインディアンの患者というのも、虐げられし者を象徴しているのだろうなぁ。


心の中に尾崎豊を抱えている人は、古い作品ではありますが、まだまだ感動できると思います。


カッコーの巣の上で

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17歳のカルテ ― コレクターズ・エディション

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