すぎなみ民営化反対通信

東京・杉並発。「一人が万人のために、万人がひとりのために」をモットーに本当のことを伝え、共に歩んでいきたいと思います

子どもと保育労働者を食い物にビッグビジネスめざす㈱日本保育サービス

2011年02月20日 | 保育民営化(幼保一体化)に絶対反対

幼保一体・民営化は、保育職員の総パート・アルバイト化と保育そのものの解体・きりすてだ

  その① 「新システム」のモデル企業=JPホールディングス・㈱日本保育サービスを暴く! 

  ・・・・シリーズ・実践編(第六回)・・・・

 今回は、政府の「子ども・子育て新システム」、幼保一体化・こども園法案と保育民営化に対する批判として、ズバリ、実体モデル・実例の暴露で切り込みます。制度案の内容的批判は重要ですが、先取りやこれがモデルといえる実例があればその具体的暴露は議論をわかりやすくします。

 「子ども・子育て新システム」、「幼保一体化・こども園」の場合、俎上に上せられるそういう格好のモデルはあるか?あります。介護保険制度の場合の人材派遣最大手・グッドウィルグループ(折口雅博代表)とその子会社コムスンのように、「新システム」の実施を前提にその先頭に立とうと狙い、既に行動をおこしている企業があります。山口洋代表の㈱JPホールディングスとその最大のグループ子会社・㈱日本保育サービスです。

介護保険制度とグッドウィル・コムスンの場合は?

 ちょっと回り道しますが、この問題は示唆するところ大で、参考になります。

 介護保険法制度導入を前に人材派遣会社グッドウィルグループは、「介護ビジネスがビッグチャンスになる」と他に先駆けて介護事業で子会社コムスンをたちあげ、シェア占有を目的に、導入時には全国に1000の事業所をつくって大量募集で職員を確保しました。バブル期の大型ディスコチェーン展開と投機で稼いだ資金を介護事業に集中投資し業界トップの座をとることが狙いでした。事実、グッドウィル・コムスンは、制度実施数年後に最盛期全国2000事業所を有する巨大企業になり、「介護といえばコムスン」というくらい、業界トップの地位を手にし、莫大な企業収益、企業利潤をあげました。

 グッドウィル・コムスンのこの「驚異の成長」は、他に先駆けたシェア占有のための集中投資、「介護保険制度の受け皿」としての事業所とヒト(介護員・労働力)の先行確保によるものと言われています。

 「成長の秘密」は、政府、政・官界との利権的癒着関係労働者派遣制度をフルに使った介護労働者に対する劣悪な労働条件による強搾取、介護保険制度の介護報酬のしくみを悪用したあくどい中間搾取超低賃金と過酷な労働ーこの二点にこそありました。

 二つの「秘密」の後者は、介護労働者からの内部告発に端を発して企業根がらみの労働者派遣法違反等の組織的不正の発覚として明るみに出ました。今では昔日の感も否めませんが、2007年厚労省からグッドウィル・コムスンに業務停止命令が出され、最終的に事業廃止、企業解散に追い込まれたのは、そう言われてみれば・・・と皆さんもご記憶のところと思います。 

 二つの「秘密」の前者①では、グッドウィル・コムスンが訪問介護事業の顧客数でニチイとしのぎを削って争い、コムスンの訪問介護員処遇や提供サービス実体で種々の問題が表面化しはじめていた時期の安倍晋三発言というエピソードがあります。安倍発言がマスコミ沙汰になったのはコムスン事業停止決定直前の2007年夏のことですが、2003年当時小泉政権の官房副長官だった安倍晋三が「やはり企業は機動力が大事でコムスンは一生懸命よく頑張っておられる」(“介護保険制度の受け皿としてコムスンが一番頑張っている。問題があっても機動力があるコムスンで行く”)とグッドウィル・コムスンを業界トップに推す発言をしました。コムスンがニチイを蹴落とし、顧客数でトップにつけたのはその後まもなくのこと。密接な癒着、つながりがあったのです。シェア占有をめざしていたとはいえ、グッドウィルの介護ビジネスへの全面参入、当時としては巨大な規模の先行投資も、人脈を通しての政界中枢サイドからの「受け皿」便宜・打診と応諾・呼応関係があったとみるのが自然でしょう。

 グッドウィル・コムスン問題(「驚異の成長」と「またたく間の落日」)の核心は、グッドウィル・コムスンこそ介護保険制度のしくみそのものだったということです。コムスン不正問題を介護保険制度の崩壊に直結させないために、政財界は制度防衛の一点で、コムスン擁護から転換し、グッドウィル・コムスンを切りました。政府主導で業界再編を強行し、コムスン廃業で空いた介護保険制度の「受け皿」の大きな穴(空白)に対して、コムスンのシェアをワタミ、ニチイ、ベネッセグループ等の他企業に分割することで介護保険制度を制度としてかろうじて護持したのです。 

JPホールディングスを見れば「子ども・子育て新システム」・幼保一体化の正体がみえる!

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(写真は、2007年6月JPホールディングス・日本保育サービスが運営する保育園・キッズプラザアスク晴海園への視察訪問、左から御手洗富士夫経団連会長、山口洋JPホールディングス代表取締役、石原慎太郎東京都知事。JPホールディングスのサイトの「トピックス」から

 本題に戻ります。「《グッドウィル・コムスン》型の成長」を念頭において、グッドウィル・コムスンを横に見ながら、子育て支援事業に参入したのが、JPホールディングス・㈱日本保育サービスだということです。確かにJPホールディングスは、制度導入時に全国1000事業所を擁していたグッドウィル・コムスンとは比較にならないほどまだ規模は小さい。しかし、着眼点、発想、戦略、政官との気脈一体、経営手法は、そっくりです。「介護保険制度」ーグッドウィルーコムスンを、「子ども・子育て新システム」「待機児童ゼロ作戦」―JPホールディングスー日本保育サービスと置き換えて考えて差し支えありません。

 (1) 子育て支援ビジネスでJPホールディングス設立  同社前身は1993年設立のJプランニング、オフイス向けコーヒーサービス、パチンコ店等アミューズメント施設へのコーヒーワゴンサービスで急成長した企業です。1999年新エンゼルプラン(エンゼルプランによる子育て支援計画に、0~2歳低年齢保育の拡充と延長保育・休日保育等多様なニーズへの対応を加えた)を受けて同年、保育・学童等子育て支援事業をスタート2001年7月閣議決定「子育てと仕事の両立にむけて」(《待機児童ゼロ作戦》の端緒)と保育規制緩和を受けて2002年JASDAQ上場、2004年JPホールディングスに商号変更、子育て支援事業を担うグループ子会社として㈱日本保育サービスをつくり、2009年民主党政権と「子育て支援」マニフェストに呼応して飲食関連会社を譲渡・売却し、子育て支援事業に特化、傾斜集中投資で事業を拡大し、2010年10月「子育て支援事業のリーディングカンパニー」「保育・学童の最大手」の「評価」を得てJASDAQ市場を代表するJ-STOCK銘柄に選定されました。2011年までに首都圏を中心に85保育園、37学童クラブ、9児童館に事業展開を伸ばし、現在120箇所の保育士募集を行っている。JPホールディングスは「子ども・子育て新システム」「待機児童ゼロ作戦」を「チャンス到来」としてこの市場に全面的に参入しました。お年寄りを食い物に介護ビジネスの独占をめざしたのがグッドウィルでした。子どもを食い物に子育て支援でビッグビジネスを狙っているのがJPホールディングスです。

                             

 (2) JPホールディングス山口洋代表自身が「新システム検討会議」メンバー、ワーキングチーム委員  山口代表の歩みそのものが、JPホールディングスという企業の狙いと戦略と手法を示しています。▲前職は大和証券(M&A担当)、▲2008年9月、厚生労働省「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に関する保育事業者検討会」委員。▲2009年4月、内閣府「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」のテーマ「保育・幼児教育」有識者。▲東京都「東京都認証保育所見直し検討会」、世田谷区「保育の質向上委員会」、志木市「児童福祉審議会」委員に選出。2009年9月、厚生労働省「社会保障審議会少子化対策特別部会保育第二専門委員会」委員。▲2009年11月、経済産業省「第5回成長戦略検討会議」有識者。▲2010年4月、内閣府「子ども・子育て新システム検討会議」有識者。▲2010年7月、東京都社会福祉協議会「保育所待機児問題対策プロジェクト」委員。▲2010年9月、内閣府「子ども子育て新システム基本制度ワーキングチーム」「子ども子育て新システム幼保一体ワーキングチーム」委員。▲2010年11月、東京都「児童福祉審議会」委員。山口洋は省庁・官・財の畑に食い込み、耕してきた、ただ一点、JPホールディングスが子育て支援事業でビッグビジネスのチャンスを手にするために!(前掲の石原都知事、御手洗経団連会長、山口代表の写真が示す通りです)

 (3) 「村木銘柄」と言われるわけ(理由)   民主党政権は、「障害者郵便制度悪用の不正疑惑」で無罪となった時の人・村木厚子を内閣審議官・「待機児童ゼロ作戦」担当特命チームの事務局長に任命しました。JASDAQ市場でJPホールディングスの株価がこの「村木人事」を受けて一時急伸しました。JPホールディングスのキャッチコピーは、「365日年中無休で子育て支援」、「従来の月極め保育ではなく本当に求められている一時保育、延長保育、年中無休のサービスを提供」、「保育園、児童館、学童クラブのすべてにわたる子育て支援」、「待機児童ゼロ作戦」。民主党「子育て支援」マニフェスト、「待機児童ゼロ作戦」、経団連「成長戦略2010」に手を挙げたJPホールディングスに、「村木人事」で投機筋の「買い」が入った結果の株価「急伸」でした。

 「柳の下にいつもドジョウがいるわけではない」  

 私たちは、子育て支援ビジネスでカネ儲けを狙うJPホールディングスについて、こう断言してさしつかえないと思います。

  この場合「柳の下」とは、《新制度》。「介護保険制度導入をビジネスチャンスとして、シェア占有、急成長で業界トップの地位をグッドウィル・コムスンが手に入れた」ことが、野心企業にとっては「一匹目のドジョウ」ということになります。グッドウィル・コムスンの場合は介護保険制度導入が「柳」。

  JPホールディングスにとっての「柳」は「子ども・子育て新システム」、その制度導入でコムスンのように首尾よく業界トップの座、シェア占有の大成長を遂げれば「二匹目のドジョウ」の「サクセスストーリー」というわけです。

 しかし、そうはなりません。

 ① 表面的直接的な理由をあげれば、たとえ財界・資本家階級が死活的な21世紀国家戦略として「新たなマーケットと雇用の創出」の「成長戦略」に「子育て支援」を掲げ、しゃにむにその制度化を強行しようとしても、そう簡単に制度化できるものではありません。

 そもそも政権公約に「子育て支援」を掲げ「子ども・子育て新システム」「幼保一体化・こども園」法案の2011年国会成立・2013年実施をめざしている民主党政権そのものがいつ倒壊してもおかしくない「死に体」状態。法案一本通せないのが現実です。民主党政権が吹っ飛んだら、財界がどんなにわめこうとも「新システム」は起動しません。

 さらに、かなり大きな問題として、「子ども・子育て新システム」自体、その制度財源、その方策が定まってもいません。政府も財界もこの点での一致は何もありません。「新システム」は「株式会社の全面的参入、そのための自由化」を柱としていますが、実際に投資し参入する側の企業にとっては、制度への交付補助金(幼保一体給付勘定)がどの程度の規模になるのかは、市場規模、収益規模、企業利益を見通すうえで、大きな判断材料です。企業と利用者の直接契約によるサービス売上といってもその多くはこの補助金によります。介護保険制度の場合のように制度財源が決まっているわけではなく、その見通しも何も見えていません。政府と財界が「保育の市場全面開放」「運営費の使途の自由化」等で《笛》をふいても、企業の側でいまだ全面的にこの分野に殺到するというような状況にはなっておらず、《踊らず》の現状があるということです。

 こういう先が見えない状況下で、JPホールディングスが一定突出して、「子育て支援の最大手」になっていますが、保育園・学童クラブ・児童館あわせてまだ120の事業展開です。たとえ動機や発想、戦略、手法がそっくりでも、介護保険制度導入のときに1000事業所をたちあげていたコムスンの場合のように進むとはとうてい思えません。

 ② 本質的な理由は、核心問題としての保育労働者の決起の問題、非正規労働者の決起の問題です。

 「新システム」・幼保一体化・民営化とは、幼保現場を総パート・アルバイト化することです。次回記事でJPホールディングス・㈱日本保育サービスが認可保育園や認証保育所、指定管理者制度や業務委託で運営している保育園、児童館、学童クラブの保育職員の賃金等の労働条件を具体的に暴露しますが、とうてい保育の仕事だけでは生活できないような低賃金です。「新システム」が実施されようがされまいが、公立であろうが民間であろうが、認可であろうが認可外であろうが、この生きていけない超低賃金と週3日・1日6時間といった細切れシフト勤務で、親代わりの子育て・保育の仕事を心身をすりへらしてもやれということに対しては、必ず保育労働者の怒りが爆発します。

 そもそも「柳の下の一匹目のドジョウ」=介護保険でのグッドウィル・コムスンの場合にも、実際には「大成長」ですんだわけではなく、組織的不正の発覚で事業停止に追い込まれ、業界トップの座からまたたく間に企業解散にまで転げ落ちたのです。訪問介護で働く介護労働者の内部告発、労働者派遣法違反の中間搾取による超低報酬と劣悪過酷な労働条件への怒りの爆発によって、コムスンが企業として引きずり倒されたということです。

 私たちが、保育所、幼稚園で働くすべての労働者、そこに子どもを委ねている保護者(労働者)を先頭に「幼保一体・民営化に絶対反対」の大運動をまきおこし、「新システム」もJPホールディングスの野望も挫折させるということにほかなりません。

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