先日、苫小牧市で障がい者支援に携わっていた方がご病気でお亡くなりになりました。
紙風船スタッフの代表として、そしてこれまで地域で仕事をご一緒させていただいた私個人として参列させていただいたお通夜には、とても多くの方達が集まっていらっしゃいました。
本当に多くの人でした。
故人のお名前を書かせていただきたいのですが、それは…了解を得てからにしたいと思います。
でも、その方のことは、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思っています。
(今回、写真は内容とは関係ありません。ちょっとブレイクタイムです。柳町の猫ちゃんたちです。)
私がその方に出会ったのは、20年も前になりますでしょうか。
地域に開設されたパン作りの授産施設にいらっしゃいました。
事業所の見学に伺ったのが最初です。
開設前にパン屋さんで修業なさったそうで…。
「へぇ~」と感心したことを覚えています。
(まだ新人だったもので、その程度の感想なのでした。)
後々、前職が新聞記者でいらっしゃったと聞き、「そんな転職もあるんだ!」と驚きました。
そのまた後、学生時代は福祉を学ばれていたと聞き、「えっ、ではなぜ新聞記者になられたんだろう?」と興味深々でした。
(くつろぐ猫ちゃんパート2)
私は、地元苫小牧市において、障がい者(特に精神障害者)を支援する人たちの「人ネットワーク」が比較的風通し良く繋がっていると感じています。
そこに共通している思いは、「当事者のため、ご家族のために何かできることはないか」ということだけです。
ひとりで考えるよりふたりで考える。そして悩む。
一事業所内、施設内、医療機関内で考えるより、複数の事業所間をまたいで考える。そして悩む。
大変な時こそ、多くの人に意見を求め、意見が出せなくても集い、そして悩む。
とにかくこれらを繰り返してきたと思います。
そんな時に大切なのは「まず話してみる」「まず相談してみる」ということ。
自分自身の働きかけも大切ですが、受け手側の度量の大きさ、懐の深さもあると、本当に良い関係が築けます。
築き続けていけます。
(苫小牧の夕陽)
今回お亡くなりになったその方は、本当にいつでも相談に応じてくださいました。
本当にいつも、分け隔てなく受け入れてくださいました。
本当にいつも、一緒に悩んでくださいました。
年数が経つと同時に、地域の必要性にも応じてどんどん役割も増えていき…
明らかにお忙しい状況の中でも、ひとりひとりの相談者について本当に丁寧に話しを受けてくださいました。
でも、時間は限られていますので…
お互いにどうしても時間が合わず、役割分担をして進めていくことも増えていきました。
そんな時も、簡単な連絡や事後報告含めて、スムーズに事を進めていくことができていたのではないか?と、私は感じていました。(もしかしたら、この方にはとても負担をおかけしていたかもしれないですけれどね。)
仕事をご一緒させていただくのが、本当に有難かったです。
どんな事柄でも「とりあえず一緒に関わることができれば、きっと、何とかなる!」
…と、根拠のない安堵感を覚えたものです。
「どんな話でも、まずは聞いてくれる」
私が尊敬していたのはこういうところでした。
年齢や経験や立場は関係なく、とにかくいつでもそう思わせてくれる方でした。
「支援者」としては、当たり前のことと思われる方もいらっしゃるかもしれません。私自身も、そうでありたいと常に思っております。
気持ちだけではなく、行動でも示そうとしております。
でも、残念ながら私にはまだまだ足りません。
(8月18日のフルムーン)
話しは少し逸れますが、先週苫小牧市の自立支援協議会が開催されました。
会議終了後に、ハローワークの障がい者雇用担当者(雇用指導官)とお話しさせていただきました。
その時に仰っていたのが、「まずはどんなことでも、こうしてほしい、こんなことはできないか?と声をあげてほしい。」ということでした。
そういった要望があって初めて検討していける、と。
これまた「当たり前のこと」かもしれませんが、改めて気付かされました。
その時にできることには限界があるのは当然。
言っても、無理な事があるのも当然。
でも言わなかったら、「要望すらない」ものとなってしまうかもしれない。
お困りの方、障がいを抱える方の代弁者となるべき私たち支援者がその声を揉み消してしまってはいないか?
言う前に、あきらめてはいないか?
もしくは
「前に言っても無理だったので、もう同じ件では言っても無理」と決めつけてはいないか?
「異動なさるお立場だから、言ってもまた変わってしまうだろうからやめておこう」とあきらめていないか?
以前に無理だったことも、状況は刻々と変わるものだし、タイミングというものもある。
だから絶対にあきらめてはいけない。
同じことでも、何度でも相談する価値はある。
意味もある。
しなければならない。
雇用指導官のお言葉はありがたく、これから先、どんどんと活用させていただこうと思う。
(8月18日フルムーンパート2。とましんスタジアム周辺にて撮影。)
そして、逆の立場になって考えてみた。
周囲の方達に、「紙風船に言っても、どうせ無理だろう」「前に駄目だったから、これからも無理だろう」とあきらめさせてはいないだろうか?
…大いにあり得る。
これは、払拭していかなければならない。
話しを、今回亡くなられた故人に戻します。
「まずは話すだけ話してみよう」
「相談してみよう」
…そう思わせてくれるこの方の聴く姿勢、そしてにじみ出る温かさ、優しさを目指したいと思います。
笑顔の時の目じりのしわと、おひげが印象的でした。
心より、ご冥福をお祈りしています。
ご一緒させていただいていた何件かの仕事は、責任をもって、関わりを継続していきたいと思っています。
でも、私ひとりでやっていくことはできません。
どうぞ見守っていてください。
そして私は、「人ネットワーク」をこれからも広げて、一緒に悩む相手を見つけていこうと思います。
いずみまさこ
(2016年8月 朝陽)