もう今は母親の話していることが分からない。
しかし、おばさんは見事に分かるのだ。。
「分かるようになるまでに、あと3ヶ月はかかるよ」
でも3ヵ月後はもう、声すら出ないのではないかな。。
今日は保健所の方が「パネルの発音器」みたいなのを持ってきてくれた。
「あ」~「ん」まで並んでいるボタンを押し、「決定」すると比較的滑らかに「発音」を始める。
便利な機器があるもんだ。
この2週間、母親の言葉が聞き取れずに自分は
「ごめん!もう一回言って!」
ということを繰り返していたので、素直にそう思った。
そんな中、おばさんが保健所の方に質問をした。
「話せるうちは話させたほうがいいと思うのですが、どうでしょうか?」
保健所の方が答えるには
「何度も聞き返されると、(お母さんは)話すだけでも疲れるんです。もちろんストレスも溜まりますし。機器を使う練習をさせたほうがいいと思います。」
・・・恥ずかしかった。
自分は何にも分かっちゃいない。
一番辛いのは、聞き取れない自分でも誰でもなく、意思を伝えれない母親なのだ。
それなのに自分は何度も聞き返したり、分からないことにイライラしたり。
イライラしたいのは母親なのだ。
一通りの面談が終わり保健所の方が帰ろうとしたとき、おもむろに母親がパネルに指をかざして一句一句ゆっくりとボタンを押した。
「あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す」
この一言で自分は、もう一度がんばろうと決心した。