博多住吉通信(旧六本松通信)

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エア・ストライク

2020年09月25日 | 読書・映画

 表題の「エア・ストライク」(シャオ・フェン監督 2018年 中国)という映画を見ました。1938年から1943年にかけて実施された日本軍の中国に対する重慶爆撃を描いた映画ですが、非常に珍しいと思ったのは、主人公らが、はっきりと国府軍将兵達だったことです。共産中国の映画で主人公が国府軍という映画は、これまで無かったのではないかと思うのですが、どうでしょうか。国府軍とは正式には中華民国国民革命軍といい、毛沢東らの中国共産党と対立していた蒋介石の率いていた軍隊なので戦後の中国にとってはもっぱら敵役だったと思うのです。日中戦争中の日本では重慶軍とも呼ばれていました。日本の重慶爆撃は、ドイツのゲルニカ爆撃と並んで非戦闘員市民への無差別爆撃として非難されてきました。当時の国府軍にはソ連から供与されたポリカールポフI-16や複葉機のポリカールポフI-15などの戦闘機があったのですが、運動性能やスピードでは日本爆撃隊を護衛する零戦の敵ではなく、主人公らの兄弟や戦友はどんどん撃墜されて死んでいきます。無差別爆撃下の重慶市民が大勢死んでいく場面もリアルに描かれています。アメリカのライフ誌カメラマンが撮影した写真で有名になった石段で大勢の市民が混乱のために死んだ場面も出てきます。大勢の重慶市民が日本爆撃隊に対して、怯むことなく中華民国国旗の青天白日旗を翻して抗日の気勢を挙げる場面など、きちんと当時の国府側の様子を(多分)公平に描いています。

 しかし非常におかしな点があって、中国側の登場人物が全員、小さな子供に至るまで英語をしゃべっているのです。それは吹替らしいのですが、日本人は全員-中国の俳優が演じている人物も含めて-ちゃんと日本語を話しているので、何だかとても不思議でした。ちなみに敵役零戦隊長の佐藤は、日本人俳優の渋谷天馬さんが演じていました。

 後で知ったのですが、この映画に出演した女優が脱税をしたとかで、中国では上映中止になったというのです。どうも私には国府軍を英雄的に描きすぎたので中国政府当局に忌避されたのではないかと邪推しています。


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