
既に報道されておりますように、イスラエルがイランの原子力施設への攻撃を行いました。毎日新聞の報道によりますと、イラン中部ナタンツのウラン濃縮施設などを攻撃したとのことです(注)。イスラエルの行動は十分に正気の沙汰ではないと思うのですが、同国が敵性(と見なす)国家の原子力施設への攻撃はこれが初めてではありません。今から44年前の1981年6月7日にイスラエルはイラクで建設中だったオシラック原子炉をイスラエル空軍のF-16戦闘機8機が爆撃し破壊しています。この攻撃で警備のイラク軍兵士と技術指導を行っていたフランス人技術者が犠牲になっています。この時もブログ主は呆然としましたが、オシラック原子炉は建設中で核燃料が装填される前だったので放射能汚染は起こりませんでした。この時のイスラエル政府は汚染を起こさせないという選択をしたことで、まだ「理性的」でした。だからと言って全く許されることだとは思いませんが・・・今回のイランの施設はどうなのでしょうか。同施設でのウラン濃縮は既に行われていたようなので、周辺地域への放射能汚染が起こっているのではないかと懸念されます。またイランが報復のためにイスラエル南部ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲヴ原子力研究センターへの攻撃を行った場合、国土の狭いイスラエルは甚大な被害を受ける可能性があります。同センターで同国が核兵器を製造しているという「噂」が公然と囁かれている施設なのでたいへん心配です。ロシアによるウクライナへの侵略では、ウクライナ国内のザポリージャ原子力発電所などの施設が紛争の渦中に置かれて世界中から危惧されていますが、ウクライナ国内の原子力施設が完全に破壊されるような事態になればロシア南部も放射能汚染にさらされる可能性が高いので双方自制が働いていると思われますが(実際に1986年のウクライナ北部のチェルノブイリ原発事故の際はモスクワにも放射性物質が飛散したと伝えられています)、イランとイスラエルの場合は、そもそも国境を接していないので、そういう自制も働かないのでしょうか・・・心配です。
上の書籍は上記のオシラック原子炉破壊事件を描いたドキュメンタリー『あの原子炉を叩け』(ダン・マッキノン著 新潮文庫 1988年)です。
(注)https://mainichi.jp/articles/20250613/k00/00m/030/054000c?inb=ys