
カリブ海の社会主義国キューバでは昨年9月に同性婚が合法化されたそうです。CNNの報道によりますと「9月25日、同性婚の合法化を含む家族法改正が国民投票にかけられ、圧倒的多数の賛成で承認された。選挙管理当局が26日に発表したところによると、投票率は74.1%。同日午前9時に94%の開票が終わった時点で、賛成が393万6790票、反対が195万90票と大きな差がついた。新法は女性や子ども、高齢者の保護を強化し、性的少数者のカップルによる結婚や養子縁組を認める内容」とのことです(注1)。
私は10代の頃から、キューバ革命には関心があり、1991年7月には実際にキューバを訪問したこともあります。ソ連邦崩壊の直前で、旧ソ連からの経済援助で支えられていたキューバ経済は深刻な状態に陥りつつありました。東西に長い島国キューバの国土を横断するハイウェイには、燃料不足のためほとんど自動車の姿が見られず何と牛車がゆったりと通行していたことを覚えています。フィデル・カストロとチェ・ゲバラらによるキューバ革命の後に革命政府が同性愛者を強制労働キャンプに収容したという話を聞き、強い失望感を味わいました。キューバを旅行してから3年後に『苺とチョコレート』(トマス・グティエレス・アレア/フアン・カルロス・タビオ監督 1994年 キューバ、メキシコ、スペイン合作 上の写真は同映画のポスターです)というキューバ人の監督に制作された映画を見ました。熱心な共産党員の主人公と同性愛者の青年の交流を描いていました。映画では同性愛者の青年が不当に抑圧されキューバを出国せざるを得ない状態に追い込まれていく状況をありのままに描いていました。LGBT差別の問題に正面から向き合う文化創作活動が容認されていることを知り、少し安心した記憶があります。その後、このような状況を打ち破る声がキューバ国内であがるようになり、2010年8月にフィデル・カストロはメキシコ紙記者のインタビューで、1960年代に同国政府が進めた同性愛者への迫害政策について、「ひどい不正だった」と自らの責任を認めたのでした(注2)。
最終的に同性婚が認められるようになった背景には、何とフィデルの姪(実弟のラウル・カストロの娘さんです)のマリエラ・カストロ氏が政府批判の声をあげ、国立性教育センターを基盤にLGBT解放の活動を行い、多くの同性愛者を力づけたことがあるそうです。1959年に始まったキューバ革命から、ここまで辿り着くために60年以上の年月を要したとはいえ、キューバではLGBTの結婚が公認されたのです。私も含めた多くの日本国民が社会主義国のキューバを人権状態の悪い国として散々批判してきたと思いますが、そのキューバにわが日本は追い抜かれてしまったのです・・・
(注1)https://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-17035020100901
(注2)https://www.cnn.co.jp/world/35193783.html