すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

万事笑い事で済ます

2015年07月21日 | 読書
 【2015読了】66冊目 ★
 『笑いは心と脳の処方せん』(昇 幹夫  リヨン社)

 
 つくづく「笑顔」とは武器だと思う。仕事上、多くの子どもや保護者に接するが、笑顔があるだけでそこがぱっと明るく感じたりすることは、たくさんの人が語る通りである。それは授業や会議等でも同じ。笑顔の頻度が、その時間の充実を決めるといったら言い過ぎだろうか。「一回も笑いのない授業をする教師は死刑」とは、かの有田和正先生の名言である。


 本そのものには、そんなに新しい知見はなかったように思われる。しかし、ちょこちょっと興味深い記述がある。本当にそうなのか、データはあるのかと疑ってしまうものもある。例えば「にらめっこで一番強いのは、B型の人」というのはどうだろう。相手から顔を逸らさない性格ということらしい。私はO型だが、絶対的な自信がある。しかし恥ずかしがり屋だ。


 笑いを掲げる本だけに、小噺、川柳のような類は多く引用されている。私のベスト3はこれである。

 三位  さからわず いつもニコニコ したがわず

 この時代を生き抜く一つの処方箋であろう。結構、したたかさが養われると思う。

 二位  ローバは一日にしてならず

 これは以前にも聞いたことがあるが、じみじみとした句である。
 先日のドラマで「年配者」と言わず、「年輪を重ねた方」と言うと件があったが、同類ですな。

 一位  昭和天皇がある学者に「人はなぜ寝なければならないか」と尋ねた。それに答えた学者曰く「国民の中には、ふとん屋もおりますので…」

 お見事な返答。ドラマ「天皇の料理番」にもあるように「お上」の心情を察する鋭い結論である。


 最近アハッと笑った経験は…、と思い出してみる。一瞬の、ごくあどけないことについての笑いだが、一年生の食育の授業を見たときだな。「野菜のパワー」の学習をしたあとの振り返り、教師はこう問う。「では、どんなことを頑張りたいですか」。手を挙げて答えた男の子。「ぼくは、なすです。」続いて言う女の子、「わたしは、ゴーヤです」…野菜人がいっぱい。

伺う・窺う・整える・調える

2015年07月20日 | 雑記帳
 毎学期の大事なお仕事(笑)である通知表点検をして、今回二つの言葉が気になった。一つは「うかがう」。この動詞を使う人は結構文章が達者なのかもしれないなあ。「~~から~~なことがうかがえます」といった表現をとる。実は複数の人がここに「伺う」という漢字を使っていて、あれっと思ってしまった。


 「伺う」と書けば「問う・聞く」「訪問する」意味になる。上の場合は「見て察知する」なので、漢字だと「窺う」だ。ただPC辞書でこの漢字は「のぞき見る・様子を探る」と出るので迷うはずだ。明鏡に次の記述がある。「現代では、多く『うかがわれる』『うかがえる』の形で、自然に察知されるの意で使う



 もう一つは「ととのえる」である。「身支度を調える」という表現があった。「ととのえる」と読めるのだが、ふだんあまり使わない。もう一人は「身支度を整える」と書いてある。これははっきりさせるべきか。辞書を引くと漢字は「整・調」と二つがあるのが普通で、大辞典になると、さらに「斉」も出てくる。


 大まかに言えば「整」は整理・整頓に代表されるように、正しい状態にする、きちんとさせるという意味だ。一方の「調」は、調和、調整のように秩序ある状態にまとめるという意味になる。PC辞書にも「整える(乱れないように)整理・整備」「調える(過不足なく)調達、成立」とある。するとこの場合は…


 一般的には「整える」か。しかし「給食の身支度」となると、必要なものを不足なく揃えるという意味も重なる。準備OKという状態を考えるなら「調」の方が強いのではないか。また「整」はそもそも乱れを直すような印象が強い気がする。乱れていることが前提というのも変な話だ。ということで決断できず…。

回転独楽のような見え方

2015年07月19日 | 読書
 【2015読了】65冊目 ★★
 『ジャイロスコープ』(伊坂幸太郎  新潮文庫)

 後書きがわりのインタビューに答えて、著者はこう語る。「長編は自分が一番やりたいこと、(略)基本的には自分のために書くだけで。短編はそれに比べると、依頼されたから頑張って書く(笑)、という感じで。」人気小説家の多くがこうだとは言わないが、ある程度予想できる答え。この文庫は底本がまちまちなので、様々なパターンの短編が盛り込まれていた。


 著者は続けて、短編には「面白い仕掛け」「驚きのある展開」を用意しようと思っていると語る。その仕掛けや展開が、肌に合うかどうかは読者次第だ。今回の7編のうち、二つばかり自分の頭でなかなか像が結べない作品があって、苦労した。もちろん今まで読んだ伊坂作品と似通っている部分はあるのだが、びっしりと密度濃く反映されるとつらいこともある。


 とてもよく読める(わかりやすい?)作品が二つあり、一つは「if」。「もし、あの時、ああしていればどうなったのか、と想像する」で始まる主人公山本の、二通りのストーリーである。テレビにも取り上げられそうな展開だ。しかし単なるパラレルでないところが伊坂の伊坂たる所以。小さな決断の連続によって成り立っているのが人生と今さらながらに思う。


 お仕事小説といってもいい「彗星さんたち」。これは新幹線清掃の仕事を取り上げているのだが、実に上手いつくりになっていた。主人公以外のキャラクターが見事に立っているし、よく使う著名人の言葉の引用なども実に巧みで伊坂らしい。女性が主人公なのは苦手と著者はいうが、あまり心理の奥底までに入らずあっさり書いているので、つまり男性読者向き?

暑い一週間だった

2015年07月18日 | 雑記帳
 月曜日。ぐんぐんと気温が上昇した一日。朝、オランダからの体験入学生を迎える。お母さんへ学校の説明などをする。書写展入賞者、土日のスポ少大会のことを記事にして学校報を書き出す。昼休み、猛暑の中だったが休み時間の避難訓練。来週の統合会議の資料に取りかかる。とにかく熱い。記録的な日だった。


 火曜日。昨日よりは若干いいがまだ熱い。朝一番で学校報を仕上げ、会議のために教育委員会へ。次年度以降の陸上競技大会について協議する。帰校したら一年生が着衣でプールへ。写真に収めてブログアップ。給食は冷やし中華で嬉しい。午後から年休をもらい通院、帰宅後、家族のためにちょっとした飾り作り。


 水曜日。雨がほんの少し降った後、また気温が上昇してくる。統合関係の書類作り。合間を見て食育学習地区子ども会を回る。来客1名あり。午後から地区内の中学校の授業研究会。生徒全員が知っている子である。授業参観で時の流れを感じる。学校にもどってから書類の続き、めどがつく。今日もビールが旨い。


 木曜日。諸帳簿の提出日。今日はいくらかしのぎやすい気がする。出てきた通知表を順に点検する。一年生の食育の授業があったので、2学級を半分ずつ参観、簡単に感想を書く。午後から「ふるさと学習」の一環で盆踊りカードの作成。講師と盆踊り論議をする。その後再び点検。5時半までで4学年分を終了する。


 金曜日。今朝も蒸し暑い。朝の活動は全校の歌。9時に教委で火曜日の案件の続きを協議、無事に決着した。学校へ帰って帳簿点検続行。昼をはさみ2時前には終了した。来週の学校報に取り掛かる。オランダの子とお別れはインタビューを試みる。4時半より町工業倶楽部の方々と情報交換、活気ある懇談会だった。

「読むこと」の指導で何が大切か

2015年07月17日 | 教育ノート
 以前のデータを見ていたら目についた。
 何かの助言のメモなのだろうか。
 ピンチヒッターとして載せておく。


 「読むこと」の指導で何が大切か

1 多く読む

  ○なぜか…字を読むことの主体性が衰えてきているのではないか
  ○学級担任、教科担任としてどれだけ時間的な保障ができるか
  ○単元目標として読書意欲を刺激する授業づくり
  ○一単位時間で量的に増やす工夫も(繰り返しのある変化)
  →子どものやる気を引き出すのは、行動だ。初めに行動ありき

2 型を読む

  ○なぜか…「ことば」「文」「文章」「まとまり」といった意識化が必要だ。
  ○学習用語を重視することで、基本的指導事項を徹底させていく


3 像を読む(イメージ)

  ○なぜか…イメージできない子、読み書きはできても描けない子が多いのでは
  ○音読の工夫を、発問の工夫を
  ○言葉へのこだわりを


 ※3分ならば何をする
 ※15分ならば何をする
 ※45分だったら
 ※3時間だったら
 という発想

※型で読む

  ○なぜか…繰り返しパターン化されてこそ、技能、技術は身につく(三つの型…基本的指導過程派、分析派、読者論派)
  ○今日、学習したことが手短に言えるか
  ○「武器」を手に入れてこそ、発展性がある。
  ○単元設定の見直し

クール・ジャパンは「世間」から

2015年07月16日 | 読書
 【2015読了】64冊目 ★★
 『クール・ジャパン!?』(鴻上 尚史  講談社現代新書)


 そもそも政府の何かキャンペーン的な文言だと思っていたから、そんなに興味があったわけではない。ただ「クール」が「涼しい、冷たい」という意味で使っているわけではないんだなとぼやっと頭にはあった。しかし今、辞書で調べても「冷静で感情におぼれないさま」と出てくるだけ。この場合は「かっこいい、優れている、素敵だ」という形容なのである。


 この新書では「クール・ジャパン」と(主に外国人から)評価されている「品物」や「商売」や「生活様式」などが、これでもかというほど出てくる。よりたくさん実例を紹介して、読者に考えてもらおうという著者の意図があるようだ。その中身はざっくりいうと、今までこの国が古くから培ってきた部分と、ある特定の文化、習慣等の突出に分かれると思う。


 知識として「クール・ジャパン」の総体はほぼわかったような気がするが、雑談以外には役に立ちそうもない。ただ部分的には少ないが著者が背景を語る部分がとても気になったし、考えさせられる。一つは「世間と社会」という箇所。著者なりの定義づけとして、次の一文がある。「『世間』とは、あなたと人間関係や利害関係のある人たちのことです」。なるほど。


 そして「対抗する概念が『社会』です」と書く。私たち日本人がいかに「世間」に縛られていて、反面「社会」を蔑にしているかについても自論を展開している。たしかに自分自身をみても「世間」に対しては慎重かつ友好的な行動をとっている反面「社会」に対しては薄っぺらだ。国民性などと言わずに、もっと「社会話」をしようという提言は納得できる。


 しかし簡単ではない。そもそも日本人(東洋人)は「良き『受信機』になれと教育」されてきたと、ニスベットという心理学者の論が紹介されている。それは「包括的思考」つまり「場」全体に注意を払い関係を重視する考え方に通ずる。目の前の個と素早く関係づくりをする習慣が根づくだろうか。クール・ジャパンは「世間」から育まれる…と言えば暴論か。

「覚悟」の人に触れる本

2015年07月15日 | 読書
 【2015読了】62冊目 ★★★★
 『教師の覚悟 授業名人・野口芳宏小伝』(松澤正仁 さくら社)


 『教師の覚悟』とは、また良く出来た書名である。
 いや、それは不遜な言い方かもしれない。
 こうとしか付けようのない、まさにこの書のためにあるような言葉が選ばれた。

 「覚悟」を辞書で引くと、次のような意味が書かれている。(明鏡国語辞典)

 「予想される良くない事態や結果に対し、それをそのまま受けとめようと心に決めること。観念すること。

 これは、まさしく野口先生仰るところの「結果幸福論」と通ずる。
 そして先生の半生が、幼少期から俗に言う苦労の連続だったことを改めて知るときに、「覚悟」はこうして培われると思わざるを得ない。

 ただ、昨日書いた「幸福の決定」条件に当てはめると、おそらく先生には「感性」「環境的要因」もかなり豊富だったと思われる。
それは紛れもなく、お父上を筆頭にしたご家族の力が大きい。
 個人的に心に残るエピソードは「厳父」。
 叔父さんからのお小遣いを拒み続けた先生に対する父からの手痛い叱責の場面だった。
 「素直」「感謝」というキーワードが心に迫ってくるシーンである。

 私も含めて、全国に数多くいるだろう先生を慕う者にとって、この本は「どこを切っても野口芳宏」である。
 半生記であるから当然と言うなかれ。
 つまり、読み手がとらえられる力量で、その内容を堪能できるという意味合いである。

 深く知っていらっしゃる方にとっては、その「滋味」を感じることができるだろうし、まだ浅い方であってもそれなりの面白さや痛快さを心に刻める。
 こんなふうに仕上げた著者の松澤先生の腕に敬服する。


 それにしても「覚悟」なのである。

 どんなに「感性」や「環境」が後押しをしても「活動と実践」がなければ、その一途によってコントロールしなければ、仕事にも家族にも「覚悟」を持つことはできない。

 自らの活動と実践によって切り開いてきた見事な人生。
 その具現者と間近に接する機会が得られた幸せを、感謝して噛み締めたい。

夏の研修ウィーク告知

2015年07月14日 | 教育ノート
 「夏の研修ウィーク」と勝手に名付けた週まで、あと2週間少しとなった。
 ぼやぼやしていて、広く告知もしないままに、今日に至った。
 いずれも自分が大きく関わっている(主催だったり、実行委だったり…)。

 7月31日から8月6日までの一週間の間に、同じ会場で三つの研修会を開く。
 もしよろしかったら、参加してみてください。


 【まるごと一日国語教育講座】 湯沢雄勝国語研究会主催

 1 期 日  平成27年7月31日(金)
 2 会 場  羽後町文化交流施設 美里音ホール
 3 テーマ  国語授業が目指す“スキルの先の雲”
 4 講 師  岩下 修 先生(京都・立命館小学校アドバイザー)
 5 参加費  1,000円
 6 日程・内容
 10:30~10:50 受付
  10:50~11:00  開会行事
  11:00~11:40  模擬授業Ⅰ「読むこと」
 11:40~11:50  模擬授業に関する質疑応答
  11:50~13:20 昼食・休憩
  13:20~14:00 模擬授業Ⅱ「書くこと」
  14:00~14:10  模擬授業に関する質疑応答
  14:25~15:25 講話「国語授業が目指す“スキルの先の雲”」
 15:30~16:30  質問・交流タイム(質疑応答など)
 16:40~       閉会行事
  ※懇親会も予定しています
 7 申し込み
   湯沢市立湯沢北中学校   北林 尚子先生
   FAX 0183-72-5128 か 38577★sch.city-yuzawa.jp(★を@に替えて)
   所属・氏名を記入して申し込む。21日まで。


 【羽後町教育振興協議会夏季研修会・教育講演会】羽後町教育振興協議会主催

 1 期 日  平成27年8月4日(火)
 2 会 場  羽後町文化交流施設 美里音ホール
 3 テーマ(演題)  医師の目から見た授業づくりのあり方
 4 講 師  横山浩之 先生(山形大学医学部教授)
 5 参加費  無料
 6 日程・内容 
  13:10~13:25  開会行事
  13:30~14:50  講演
  14:50~15:05  質疑応答
  15:05~15:10  閉会行事
 7 問い合わせ 申し込み
    羽後町立羽後中学校   銭谷郁雄教頭先生へ
    TEL 0183-62-1144 FAX 0183-62-1145


 【鍛える国語教室第7回全国大会・秋田大会】

 1 期 日  平成27年8月6日(木)
 2 会 場  羽後町文化交流施設 美里音ホール
 3 テーマ  新提案! 国語科「学習用語」辞典とその活用法
   (本校児童が授業を受けます)
 4 詳細・申し込み等は以下のアドレスで
  http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/study/?id=20150327


 「美里音」での夏の研修ウィーク、お待ちしています。

Workは根を張るために

2015年07月13日 | 読書
 【2015読了】62冊目 ★★★
 『ハーバードの人生を変える授業』(タル・ベン・シャハ― だいわ文庫)

 「全体を振り返って」という最後の項目を除いて、51のWorkのどれかひとつでも徹底してやれるのなら、きっと「生産的知識」ということを実感できるのだと思う。いや、こんなふうに、初めからあきらめムードではいけない。心に残ったWorkについて、ぶらぶら語ってみることで、芽が出る場合もある。ヒントに気づくことがあるかもしれない。


 Work32「わからない」を受け入れる
 無知でいいというわけではない。未知を心から受け入れることが大切なのだ。そのために「畏敬や驚きという感情」を持てるようにしたい。そのための訓練、Actionがいい。「ただ歩くことを習慣にすること」という。「ただ歩く」が「五感を最大限に」使うことに通ずれば、きっと身の回りの自然に対して、そういう感情を抱けるし、それは社会的な事にも通ずる。


 Work42安心できる場所をつくる
 このエピソードは痛快だ。チームワークの研究をしている学者が、効率的な医療チームはミスが少なくなるという仮説を持って調査をしたら、結果は驚くべきものとなった。「効率的な条件」を満たすチームは、ミスが少ないどころか、他のチームより多くのミスが出た。その原因は何か…。あえて書かないがよく考えるとわかる。そこにチームワークの真実がある。


 Work44バランスをとる
 実現したいことがあれば、それを念頭に他のことを制限したり抑制したりできなければ…。Actionとして「『あきらめること』を決める」が出された。ここを読み、野口芳宏先生が以前から仰った「絶縁能力」ということが思い浮かんだ。ずいぶんと「あきらめられない」私は、ふらふらしていることを実感している。あきらめることをあきらめるっていうのは、駄目か。


 Work49深く根を張る
 冒頭の二文が印象深い。「幸福の深さは木の根のようなものです」「幸福の高さはちょうど木の枝のようなものです」。どちらに満足するか、人によって違うのかもしれないが、より本質的なのは言わずもがなである。幸福の決定を「幸福に対する感性」「環境的要因」そして「活動と実践」に区分し、自らコントロールできるのはどれかを問う。確かにそれしかない。

「夏一つ」の場に感謝

2015年07月12日 | 雑記帳
 ここ数年は参加したい参加したいと思っていても、どうにも行事などが入り参加することが叶わなかった野口先生のご自宅での素麺塾。今年はなんとしてもという思いが強く、無理を承知で行かせてもらった。いったい何年ご無沙汰したろうと調べてみたら、なっなんと前回は10年前だった。記録はしておくものだ。

 http://blog.goo.ne.jp/spring25-4/d/20050717
 http://blog.goo.ne.jp/spring25-4/d/20050720
 http://blog.goo.ne.jp/spring25-4/d/20050721


 松澤正仁先生の著した『教師の覚悟・授業名人野口芳宏小伝』(さくら社)が木曜日に届き、それをバッグに詰めて朝一番の飛行機に乗り込んだ。フライト中はその本をずっと読み進めていた。羽田からバスで君津ターミナルに着き、最初にお会いできた一行も、松澤先生たちであり、早速にご挨拶させていただいた。


 会場の涼暉荘の佇まい、それを囲む一つの「森」は、どなたかが「テーマパークのよう」と喩えていたが、なるほどと思った。ここで実践発表、流し素麺の昼食を挟んで、散策そして10年前はなかった書斎、書庫見学…と続く。先生の使われている椅子でちゃっかり記念写真を撮らせていただいた。これは宝物になる。


 それからこれも10年前はなかった俳句会。参加者全員、野口先生も含めて一人2句、全部で70句ほどから一人が3句選び、最高点を競う。句作などしない自分にはいい刺激となった。しかも全体で第2位という名誉もいただいた。1位に輝いたのは小学館(元)編集長だった横山英行さんという方。この句には参った。


 「山も田も人に譲りて夏一つ」…これは先生が午前中に語られた、野口家の歴史を取りこんだ作品。特に「夏一つ」の持つ象徴性に圧倒された。そこには刹那もあり、永劫もあるような感覚だった。文句ない特選句だ。そして自分にも「夏一つ」のような空間、時間があるのだろうか。そんな内省にも駆り立てられた。


 楽しみの宴席は、文句ない歌姫の生歌あり、それぞれの教育に対する熱い思いがあり、充実したものだった。同年代の愛媛の方々と語らい、「教師の覚悟がない者」と結論づいたのには苦笑だったが…。こうした時間も自分にとってはまさしく「夏一つ」かと思った。ちなみに拙句は「師の語る肩越しに湧く夏の雲