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ニャンニャンワールドへ

2021年11月17日 | 絵本
 この作家の猫の描写はお気に入りだ。『ネコヅメのよる』は、持ちネタにしている(読むほどに面白みも増す)ほどだ。この一冊は猫を飼っている家でよく留守番を頼まれる?猫の妄想であり、その擬人化がとても愛くるしい。人間が楽しんでいる様々な日常を人間と同様に、いや、あくまでも猫らしく振るまってみせる。


『ねこは るすばん』(町田尚子 ほるぷ出版) 




 洋服ダンスの奥の秘密の抜け穴から通ずるニャンニャンシティ(沼澤命名)に出かけた一匹の猫。コーヒーショップに始まり、ヘアーサロン、書店…と様々な店に立ち寄って、それぞれを満喫する。猫なりの楽しみ方のウイットが効いている。話の脈絡もきちんとあり、何よりその表情にニンマリさせられてしまう。


 猫好きならずとも、その絵の魅力は十分に感じられる。際立つのは表情を描く巧みさである。ややくすんだ色合いが、本物感というより存在感をアピールするように思う。『ネコヅメ』では夜なので暗めの色調が中心になっていたが、この作品は店ごと、ページごとの変化もある。ただ、紺色は特徴的でここでも目立つ。


 1ページ1行なので読むだけなら2分程度か。しかし、じっくり見せたいページもあるし、余裕をもってめくっていく点が一番の配慮になるだろう。細かい小道具なども描かれていて、それを見つけるのも読む楽しみになる。対象や設定にもよるが、事前情報を付け加えたら、「見る」楽しさに寄与するかもしれない。


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