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桜と絵本と豆乳と

皆「いいね!」と思う訳

2022年01月24日 | 読書
 読み聞かせ用にヨシタケシンスケの名前で検索をかけていたとき、「絵」で引っかかった一冊だ。「作」つまり著者の名前に見覚えがあった。去年、ある雑誌で亡くなった脚本家を偲ぶエッセイを書いていたな。さて、この書名はいかにも今風ではあり、確かに児童書と言ってよい内容だが、なかなかユニークだった。


『いいね!』(筒井ともみ  あすなろ書房)



 「○○っていいね!」と題づけて3~4ページの短いお話が続く。ある学級の子どもたちそれぞれを話者にしながら、様々な観点で「いいね!」が展開される。最終的に、ほとんどの場面で登場する「ネコ」がいて、終盤で「ネコ新聞」の形でそれぞれが回収される構成も面白い。著者が取り上げた観点に共感する。


 全部で20個あり、「ヒーロー」「ひざ小僧」「鼻の穴」「眠れない」等々、ふつうに「いい」ものだけが挙げられているわけではない。つまり何気ない物事、普通あまり良くないと思われる事態、悲観的なことなども含まれている。また、ごく普通にいいと思われること、例えば「あいさつする」も考えさせられる。


 そこでは「あいさつする」のが大嫌いなアタシが語る。何故好きでもないヒトたちと一緒に混ざらなくちゃいけないんだ。そこへ転校生の「あのコ」が登場し、最初のあいさつは「右の肩を、アタシの右の肩にゴツンとぶつけた」こと。それが繰り返されて、アタシは「あいさつするのって、気持ちいいかも」と思う。


 ボクは「口がくさい」おばあちゃんがイヤでだんだん離れていった。ところが病気のおばあちゃんが亡くなり、ボクはそのくさい匂いを思いきり吸い込み懐かしむことをいいね!と思っている。遠ざけたい、否定したい物事にも宿る心があり、それは距離をおいてみれば煌めいて見える。「さびしい」「会えない」も。


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