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沁みる「挽歌」のドラマ

2020年12月29日 | 雑記帳
 NHKで2夜連続放送した『チロルの挽歌』というドラマを観た。高倉健主演、山田太一脚本そして舞台が北海道とくれば、なんとなくイメージが湧く。その通りに思えたことも多かったし、懐かしさや寂しさなどいろいろと感情が押し寄せた内容だった。題名の「挽歌」はかなり先の現在まで見通しているようだった。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%AD%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%8C%BD%E6%AD%8C

 バブル期、90年代初めに地方が置かれた状況を見事に物語っているし、そしてその考えや願いの辿った道が、まさに衰退・転落だったと30年後にしみじみ思う。もちろんドラマが描きたかったのはそれではなく、その場所にいる個の在り方や佇まいであるのは山田脚本の特徴でもある。どう現実に向き合うか、だ。


 登場した俳優の大半はもういない。高倉健、大原麗子、杉浦直樹、河原崎長一郎、岡田英次、菅井きん…健さんはさておき、40代半ばの大原麗子は若い時とは違う魅力があった。言ってみれば彼女の役がこの物語を結論づけた。その着地の仕方はある面で現在にも通じる。大原が自ら「生涯の代表作」と語ったとある。


 岡田英次の印象的な台詞があった。観光施設のためには自分の土地を売らないと突っぱねる牧場主の役だ。「人民は抵抗しなければならない。そうしなければ、向こう(行政側を指す)もこちらも腐っていく」。古臭い言い回しではあるが、その力が緩くなり、予定調和で進めてきたツケがこの国や自治体を覆っていないか。


 新聞を見ていたら、各政党党首の年末年始の私的な予定が記事になっていた。多忙の政治家にもゆっくり休んでほしいし、当然その権利はある。一部しか伝えない分量で判断してはいけないと思いつつ、どうにも「上」への信頼感が益々揺らぐ内容だ。大晦日の紅白歌合戦はこの国の「挽歌」となって響くのだろうか。