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おいしさは「人」がいるから

2018年05月03日 | 雑記帳
 「1人で食事をとるのは味気ないが、鏡1枚用意するだけでおいしく感じられる」…えっ、どういうこととまず思う。にわかに信じがたいことだが、「孤食の研究」として真面目に取り組んでいる方がいらっしゃる。『通販生活』の夏号に「そこに知りたいことがあるから研究する人たち」という特集があり、その一つとしてあった。


(雑な入れ方だが、まず今年のワラビ初収穫ということで…まだ痩せが多い)

 名古屋大大学院の中田さんらがまとめた研究成果が、米国の科学誌に掲載されたという。実験によって「鏡を見て食事をするとおいしく感じる」ことが証明されたというのである。ううん、興味深い。その方法の詳細は略すとして、実験では甘さやしょっぱさも取り上げられたが変化はなく、「おいしさ」に差があった。


 そこにこの研究の肝があるように思えた。つまり中田さんが書くように「味覚は舌で感じ、おいしさは”心”で感じるということ」なのだ。心理学でよく語られるミラーリング、これはもちろん相手あってのことなのだが、この場合鏡に写った自分の食べる姿を見ることによっても、人の存在を認知できるということだ。


 ミラーリングは好感や信頼関係の基、「鏡の中に人の存在を感じる”鏡食”(きょうしょく)によって、食べる量が増えおいしく感じられる」に通じるのだろう。この脳のだまされやすさ(笑)を利用して、子どもや高齢者等の「孤食」問題に立ち向かえるのかもしれない。しかし、もちろんあるべき姿は「共食」に違いない。


 今さらだが「おいしさは”心”で感じる」はしみじみと重い。どんなに高価で美味といわれる食事であってもおいしく感じない場合があることは、当然なのだ。安心感のある場で、心許せる人たちと共に食べられる幸せは貴重だ。食に限らず、個別消費形態に持ち込んだ経済社会と私たちの責任をもう一度問い直したい。