![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/47/18b1a43ff16ca3fdf2d3dd3da91914dd.jpg)
2004年5月、中国の遊具工場視察に出かけました。主な目的は回転成型の製造工程を見ることにありました。成田から上海に飛び、空港で同行者と待ち合わせてから国内線で目的地の浙江省温州市に到着しました。飛行時間は1時間ほどです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/41/007975136105e9dc8e585c05c958a96b.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/9a/69c09ef0c9b5659b02d6fdc3a3789287.jpg)
工場を見学出来たのは2社です。中国でも大手の遊具メーカーだそうで、経営者は従兄弟同士なのです。しかし仲は良くない。工場の周囲は私が子どもの頃見たようなのどかな田園風景が広がっています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/da/0dc08a6c4bba71b47af0597e93488dd4.jpg)
中国では各地に集合住宅が建設され、それに伴って団地の中に公園が造られ遊具の設置も増えているのです。一人っ子政策で少子化が進み、子どもを大切にする施設があると団地の価値も上がるのです。
ここ浙江省温州市は軽工業が盛んな地域で、ボタンの生産から始まって、今では全世界のガスライターの7割を生産している程です。空港や高速道路も国の援助ではなく市が安く土地使用権を買い入れ、これを民間に売却した得た資金で建設しました。これらの一連の経済成長は温州モデルとして知られています。
訪問した遊具メーカーは元々ここで生産される文房具や保育用品を持って中国全土に営業していたのですが、客先で滑り台やブランコのニーズがあることに気がつき生産を開始するのです。
日本の場合は滑り台・ブランコ・鉄棒といった鋼材を加工することが出発点になっていますが、中国では事情が異なります。遊具生産の歴史が新しいため、モデルとしたのが欧米のポリエチレン製の複合遊具なのです。
これは電話の歴史と似ています。先進国では電話事業の歴史が古く、固定電話から携帯電話に長い時間をかけて移行しましたが、中国のような国ではこの過程をすっ飛ばしていきなり携帯電話が普及したのです。中国では溶接より樹脂の成型が技術のコアになっているようです。
熱可塑性樹脂の成型方法には、射出成型・ブロー成型・回転成型があります。射出成型は一般に小型で精度を要求される製品に使われますが、精密かつ剛性の大きい金型が使われます。金型が大きくなり製作費も高くなるので小ロット生産には向きません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/3b/b0ab62bddf96aa799493a3135b5ed670.jpg)
これに対して回転成型は材料に圧力を加えないので板金やアルミ鋳造の型を使用することが出来ます。従って大きな製品を作ることが可能になります。温州の工場での型の製作状況です。板金で叩き出した薄い鋼板を型鋼で補強して型に仕上げます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/06/ad155c7253894ffebd790d2167821591.jpg)
型の表面を研磨するのは女性が活躍していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/17/29a5cff4b9a249b51b222e0391ef245a.jpg)
材料は低密度ポリエチレンのパウダーです。韓国製の一流品を使っているとの説明でしたが、奥には中国産の袋も見えました。ここで材料を調合して次の工程に圧送します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/90/c2cb616833911a643204c6aa217505a1.jpg)
型に決められた量のポリエチレンのパウダーを入れて蓋を閉めます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/00/2069bee6a4e17d8ab3d329a1c5612e45.jpg)
型を加熱するのは直火か大きなオーブンに入れますが、ここではオーブンに入れて加熱していました。中空な製品にするために型を同時に2軸で回転させて、素材を溶解させながら成型するのです。これが回転成型と言われる所以です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/4a/1284fd6445dd34757b41ac5001862e61.jpg)
この工場では同時に2型を同じオーブンに入れて作業効率のアップを図っていました。
素材が型に密着して溶解すると、そのまま冷却して脱型します。この時約3パーセント程収縮するので、脱型は容易です。抜き勾配も少なくて済みますが、寸法精度を確保するのは設計の段階から成型まで高度なノウハウが求められるのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/85/9a59aa8d25abb3b5620c6ea8cf5fd889.jpg)
型から外した製品はバリを取るなどの仕上げをして、検査・梱包を経て出荷されます。帰国後、何点かサンプルを取り寄せましたが、図面と50mmもの誤差があってまだちょっと使えません。やはり日本とは精度の感覚が違うのです。
カナダのオンタリオ州にある回転成型メーカーも行った事があります。ここでは産業用のタンク等の製造がメインで遊具のパーツはその一部門に過ぎません。アルミ鋳造の回転成型用の型を見たのはここが最初でした。アルミを使うのは鉄に比較して熱伝導率が優れているからです。均等に熱くなるのです。熱伝導率と電気伝導度は強い相関関係があり、銅に比べて密度が小さいアルミは高電圧の送電線に使われているのです。
日本でも数社がこの回転成型を行っていますが、カナダと同様に産業用のタンク等が主要な生産品目となっています。こちらに詳しい技術情報が掲載してありますのでご覧下さい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/67/f4c5d34582e26c9422f819a3d766de85.jpg)
最後は上海のホテルで撮影した一枚。電源はAC220V、LANの口も各部屋にあって5年前からインターネットの環境は快適でした。
このレポートは5年前の状況です。世界的な金融危機後の現在では少し事情が変わっていると思われます。
↓ポチッと応援お願いします!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/41/007975136105e9dc8e585c05c958a96b.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/9a/69c09ef0c9b5659b02d6fdc3a3789287.jpg)
工場を見学出来たのは2社です。中国でも大手の遊具メーカーだそうで、経営者は従兄弟同士なのです。しかし仲は良くない。工場の周囲は私が子どもの頃見たようなのどかな田園風景が広がっています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/da/0dc08a6c4bba71b47af0597e93488dd4.jpg)
中国では各地に集合住宅が建設され、それに伴って団地の中に公園が造られ遊具の設置も増えているのです。一人っ子政策で少子化が進み、子どもを大切にする施設があると団地の価値も上がるのです。
ここ浙江省温州市は軽工業が盛んな地域で、ボタンの生産から始まって、今では全世界のガスライターの7割を生産している程です。空港や高速道路も国の援助ではなく市が安く土地使用権を買い入れ、これを民間に売却した得た資金で建設しました。これらの一連の経済成長は温州モデルとして知られています。
訪問した遊具メーカーは元々ここで生産される文房具や保育用品を持って中国全土に営業していたのですが、客先で滑り台やブランコのニーズがあることに気がつき生産を開始するのです。
日本の場合は滑り台・ブランコ・鉄棒といった鋼材を加工することが出発点になっていますが、中国では事情が異なります。遊具生産の歴史が新しいため、モデルとしたのが欧米のポリエチレン製の複合遊具なのです。
これは電話の歴史と似ています。先進国では電話事業の歴史が古く、固定電話から携帯電話に長い時間をかけて移行しましたが、中国のような国ではこの過程をすっ飛ばしていきなり携帯電話が普及したのです。中国では溶接より樹脂の成型が技術のコアになっているようです。
熱可塑性樹脂の成型方法には、射出成型・ブロー成型・回転成型があります。射出成型は一般に小型で精度を要求される製品に使われますが、精密かつ剛性の大きい金型が使われます。金型が大きくなり製作費も高くなるので小ロット生産には向きません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/3b/b0ab62bddf96aa799493a3135b5ed670.jpg)
これに対して回転成型は材料に圧力を加えないので板金やアルミ鋳造の型を使用することが出来ます。従って大きな製品を作ることが可能になります。温州の工場での型の製作状況です。板金で叩き出した薄い鋼板を型鋼で補強して型に仕上げます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/06/ad155c7253894ffebd790d2167821591.jpg)
型の表面を研磨するのは女性が活躍していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/17/29a5cff4b9a249b51b222e0391ef245a.jpg)
材料は低密度ポリエチレンのパウダーです。韓国製の一流品を使っているとの説明でしたが、奥には中国産の袋も見えました。ここで材料を調合して次の工程に圧送します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/90/c2cb616833911a643204c6aa217505a1.jpg)
型に決められた量のポリエチレンのパウダーを入れて蓋を閉めます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/00/2069bee6a4e17d8ab3d329a1c5612e45.jpg)
型を加熱するのは直火か大きなオーブンに入れますが、ここではオーブンに入れて加熱していました。中空な製品にするために型を同時に2軸で回転させて、素材を溶解させながら成型するのです。これが回転成型と言われる所以です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/4a/1284fd6445dd34757b41ac5001862e61.jpg)
この工場では同時に2型を同じオーブンに入れて作業効率のアップを図っていました。
素材が型に密着して溶解すると、そのまま冷却して脱型します。この時約3パーセント程収縮するので、脱型は容易です。抜き勾配も少なくて済みますが、寸法精度を確保するのは設計の段階から成型まで高度なノウハウが求められるのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/85/9a59aa8d25abb3b5620c6ea8cf5fd889.jpg)
型から外した製品はバリを取るなどの仕上げをして、検査・梱包を経て出荷されます。帰国後、何点かサンプルを取り寄せましたが、図面と50mmもの誤差があってまだちょっと使えません。やはり日本とは精度の感覚が違うのです。
カナダのオンタリオ州にある回転成型メーカーも行った事があります。ここでは産業用のタンク等の製造がメインで遊具のパーツはその一部門に過ぎません。アルミ鋳造の回転成型用の型を見たのはここが最初でした。アルミを使うのは鉄に比較して熱伝導率が優れているからです。均等に熱くなるのです。熱伝導率と電気伝導度は強い相関関係があり、銅に比べて密度が小さいアルミは高電圧の送電線に使われているのです。
日本でも数社がこの回転成型を行っていますが、カナダと同様に産業用のタンク等が主要な生産品目となっています。こちらに詳しい技術情報が掲載してありますのでご覧下さい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/67/f4c5d34582e26c9422f819a3d766de85.jpg)
最後は上海のホテルで撮影した一枚。電源はAC220V、LANの口も各部屋にあって5年前からインターネットの環境は快適でした。
このレポートは5年前の状況です。世界的な金融危機後の現在では少し事情が変わっていると思われます。
↓ポチッと応援お願いします!
![にほんブログ村 科学ブログ 技術・工学へ](http://science.blogmura.com/engineering/img/engineering80_15.gif)
前々から、シットオントップのカヤックの価格の安さが不思議で仕方ありませんでした。
大きなものですし、世界中に販売しても、型の製作費が出ないように思っていたのです。
ポリ製の出現以前はFRPがメインでしたが、三倍以上の価格で中空構造のものはありませんでした。
疑問が解消できてすっきりしました。ありがとうございます。
ポリエチレンの回転成型なら大型の中空製品が製作可能です。日本のメーカーさんの工場見学も大変有意義でした。4m程度なら出来ますね。
ここ会社で小型ですがカヌーも作っていました。
http://www.e-suiko.co.jp/products/tokutyu.html
大学との共同開発と伺いました。良い設計と需要さえ見込めれば国産できるのです。
今、つとに願っているのは、ベロモービルのシェルをどこかで売り出してくれないかということです。
ベロモービルを初めて知りました。巨大事典で画像も確認しました。フェアリングは大きく、大抵はFRPで造られいると思いますが、PEの回転成型なら十分製作可能です。PEなのでリサイクルマークも付けられるはずです。
このメーカーに連絡し実現できる企画か検討してもらいましょう。
良き情報をありがとうございました。