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いとしのCinderella(その8)作図題ほぼ全滅

2012-03-10 05:03:59 | 幾何学
先月24日、新聞各紙は日本数学会が行った大学生数学基本調査の結果を報じていました。最も詳しく報じていたのは日本経済新聞(2012/2/24)でした。

大学生の4人に1人は「平均」の意味を正しく理解していない――。数学者でつくる社団法人「日本数学会」(東京)が大学生約6千人を対象に行った初の数学力テストで、基礎知識や論理的思考力が乏しい学生が多数いることが24日、分かった。大学入試で記述式問題を経験した学生は好成績で、同学会は「入試や授業で記述式の証明問題などを増やすべきだ」と提言している。

随分昔に『分数ができない大学生』を読んだ事があったので、少しも驚きません。それでも日本数学会の今回の調査が気になったので基本問題、正答例、報告書を読んでみました。

大学生数学基本調査

大学生数学基本調査正答例

大学生数学基本調査報告書

各誌が見出しに取り上げた小6で学ぶ平均の問題は演算としては易しいけれど、意味が理解出来ていないのは、この平均と言う考えを使って「分かった!」という感動が得られなかったからでしょう。rikunoraさんの『悩めるみんなの統計学入門』に倣って言えば「普通って、どういうのが普通?」を考えるのが出発点になるべきですが、ただ足して割るの練習では、やがて忘れます。忘れても日常生活に支障はありません。

今回の調査で最も出来の悪かったのは初等幾何の作図題であったことに触れたのは日経だけでした。

定規とコンパスを使って線分を3等分する方法を尋ねる問題は、正答とほぼ正答の割合が計7.6%にとどまった。比例と作図の理解を問う内容で、ほとんどの中3教科書に出ているが、国立の最難関大でも正答率は計22.6%。入試で作図問題の出題が少ないため、指導が十分にされていない可能性があるという。

先日、ブログで「モール-マスケローニの定理、Mohr--Mascheroni theorem」について書いたばかりだったこともあって、これをCinderellaで作図し、動画にしてみました。


動的幾何学ソフトのシンデレラの操作は以下のようなツールを使って作図します。

まるで紙の上で定規とコンパスを使って作図するのと同じような感覚です。しかし上の動画は「ほぼ正解」であって「正解」とは言えません。というのは平行線を描くのに「仮想的な三角定規」を使っているからです。

「定規」で出来るのは既知の任意の二点を線分で結ぶこと、およびそれを延長して直線にすることだけです。それで「直線と、直線上に無い一点が与えられたとき、この点を通り直線に平行な直線を描く」操作を動画にしてみました。


初等幾何学で言う定規とは竹やアクリルの目盛のついた固い板ではなくて、大工が使う「墨壷」と思った方が良いのです。コンパスも「ぶんまわし」と言いますね。
熟練した大工さんは墨壷で曲線も描けるらしい。糸を持ち上げて放す時に糸を捻るのです。建築用語の「むくり」でしょう。この曲線はsn曲線(ヤコービの楕円関数)になるのでしょうか?

さて初等幾何学の重視は老人の懐古趣味とは言えません。見出しの画像に掲げたのはCADのオペレーターのための指南書です。初等幾何学の知識はCADの習得に大きく寄与しているのは間違いありません。しかしこの本には直線に垂線を立てる手法はありましたが、平行線を引く方法が記されていません。ちょっと残念。

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