271828の滑り台Log

271828は自然対数の底に由来。時々ギリシャ・ブラジル♪

クロソイド(滑り台にも好適な曲線 その3)

2007-09-04 19:00:18 | 遊具
世界陸上が終わりました。国民全体の体力を総合的に反映するのはやはり陸上と水泳ではないでしょうか?曲率のことをどうしたら分かり易く説明出来るか考えていたところなので、一つ素朴な疑問が浮かびました。
競技の成績は競技者の「速度ds/dt」ではなくて、定められた距離をどれ位の時間で通過したかで争われます。従って「遅度dt/ds」の小さい者が勝者となるのです。言い換えれば速度の逆数です。そして重要なのは条件を同じくすることですね。
100mでは直線コースで争われますが、200mより長くなると走路がカーブしています。セパレートコースの場合、インコースとアウトコースでは曲率が異なることに気が付きます。小さい頃から「かけっこ」と「逆上がり」は大の苦手だったので競技とは程遠い人生でした。それでよく分からないのですが、物理的に考えてアウトコースの方が有利ではないでしょうか?
インコースの曲率半径をr、アウトコースのそれをRとします。(r<R)質量も同じで、同じスピードでコースを駆け抜けるならば、インコースではmv^2/rのアウトコースではmv^2/Rの力を出さないと曲がれません。r<Rという条件からmv^2/r>mv^2/Rになるはずです。接線方向に加速しながら曲がるにはさらに余分な力が必要なので、外が有利と思ってしまうのです。間違っていますか?

話題をクロソイドに戻します。この分野では距離をLと書くのが慣わしなのでそれに従います。「クロソイドは、曲率が曲線長に比例して一様に増大する曲線である」と定義されています。Rを曲率半径、Lを曲線長、Cを比例定数とすれば

R/1=C・L

という関係が成立します。ここで円と直線を考えると、直線は曲率が常にゼロの曲線で、円は曲率が一定の曲線ということが出来ます。前のエントリーでも書いたように、曲率とは、曲線を長さのパラメータで表したときに単位長さでの角度変化に他なりません。勿論角度は弧度(ラジアン)です。円の曲率半径は一定ですが、直線の曲率半径は無限大になるので絵には描きにくいですね。まとめると

直線;R/1=0

円;R/1=一定

となります。これらの曲線の曲率と曲線長の関係を示したのが曲率図です。

R/1=C・Lを書き直すと、R・L=1/C(一定)と書けます。両辺の次元を揃えるために1/C=A^2とします。こうするとクロソイド上の任意の点で、原点からその点までの曲線長Lとその点での曲率半径との間には以下の関係が成り立ちます。

R・L=A^2

これをクロソイドの基本式と呼び、Aはクロソイドのパラメータと呼ばれます。Aは長さの次元を持ち、Aが決まればクロソイドが決定されます。特にA=1の場合を単位クロソイドと言い、単位クロソイドをA倍すれば全てのクロソイドを決定することが出来るのです。
Aが大きな値ならばLに対してRは大きな値をとるので曲線の曲がり方は緩やかになります。円では半径が大きいと曲がり方が緩やかになるのと同じです。このような素直な曲線ですが、これを解析的に解こうとすると初等関数では表すことが出来ません。
昔の本には延々と単位クロソイドの数表が掲載されていましたが、PCの発達した現在では歴史的な使命を終えました。

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2 コメント

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インコースか、アウトコースか (ゆっけ)
2007-09-06 00:22:30
こんばんは。

確かに、体育の時間ではみんなインコースに寄ろうとするし、小学校の算数の時間では円周の計算でこれを説明していましたね。でも考えてみれば、確かに遠心力に打ち勝つ力は必要ですよね。非常に大雑把ですが、考えてみました。(自信はありません;)

カーブを走る時、遠心力は靴の裏の摩擦力を介して脚にかかる負荷になります。この負荷に対して脚は力f(∝1/r)で踏ん張ります。
一方、人が直線を一定の速度で走るために、力F(一定)を脚が出さなければならないとします。
トラックの周長Lはrに比例するので、接線方向に走るために脚がする仕事Wは、W=(F+f)×Lとなり、これはrの1次式(r単調増加関数)となります。つまりトラックを同じ角度回るのに、外側の方が大きな仕事を要する、、という感じです。

ただ、脚の長さとトラックの曲率半径が近くなってくると上の近似は全然成り立たなくなりそうだし、逆に曲率半径が大きく、接線方向速度もあまり大きくなければf無視できそうです。実際のトラックでは後者の理由で、遠心力は無視できるのではないかなと私は思います。

なんにせよ、どんなコースを走っても、運動不足の私がヘトヘトになるのは理屈抜きで言えそうです^^;

>クロソイド曲線
名前や形は見たことありましたが、定義は初めて見た気がします。
先日お話したインボリュート曲線もそうですが、単純な式で特徴的な図形を表現できるのには驚かされます。
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トラックの長さと曲率 (271828)
2007-09-06 10:53:13
ゆっけさん コメントありがとうございます。

>トラックの周長Lはrに比例するので、接線方向に走るために脚がする仕事Wは、W=(F+f)×Lとなり、これはrの1次式(r単調増加関数)となります。つまりトラックを同じ角度回るのに、外側の方が大きな仕事を要する、、という感じです。

200mや400mのレースを見れば分かるようにアウトでもインでも距離は同じなるようにスタートの位置が決められています。インコースからスタートする人は自分より外からスタートするランナーを見ることが出来ますね。
曲線の長さは同じなのに曲率の大きいインコースが不利だと思っているのです。
マラソンのようなオープンコースだったらコーナーからコーナーを繋ぐインコースの方が有利なのは言うまでもありません。

私のブログは「時々、ギリシャ♪」でもありますので、私は時々アルキメデスも読んでいます。y=x^2という表現が発明されるずっと昔に放物線の面積や放物線の回転体の重心を求めています。凄い!と思っています。
最先端のお話はあまり出来ないのですが、若い人にも役立つクラシックな話題にお付き合い頂ければ幸いです。
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