271828の滑り台Log

271828は自然対数の底に由来。時々ギリシャ・ブラジル♪

ゴムにつての迷信(その1)

2010-05-20 04:12:08 | 遊具
昨年のことになりますが、神保町の明倫館書店で戸田盛和さんのエッセイ集『おもちゃと金米糖』(岩波書店)を購入しました。若い頃、『おもちゃセミナー ─叙情性と科学性への招待─』(日本評論社、1973年初版)を読んでからすっかり戸田さんのファンになり、目に付くと買ってしまうのです。おもちゃに関する記事は『おもちゃセミナー』と重複していますが、金米糖の記事には寺田寅彦が出てきたり、砂糖の歴史にまで話が及びとても面白いのです。しかし購入を決定したのは目次に「バネについての迷信」を見つけたからです。表紙をクリックすると目次が開きます。

遊具には機能部品として、また設置面に緩衝材としてゴムが使われているので、昔からゴムの弾性には興味を持っていました。この分野では久保亮五さんの『ゴム弾性』という名著があることは知っていますが、中身は統計力学らしい。今のところパス。

さて戸田さんの「バネについての迷信」は次のような書き出しです。読者の皆さんはバネをゴムと読み替えてみてください。

 バネは力を弱め、振動を弱めるために椅子や自動車などに使われているというような意味のことが本に書いてるのを見る場合がある。これはひとつの迷信だと思う。椅子に入れてあるバネは腰かけた人の重さのために縮んで、その縮みに相当するだけの力で人を支えている。人の重さを”弱め”るわけではない。バネに力を加えると変形する。”このような”バネのはたらきを利用した台秤があり、また”このような”バネのはたらきを利用した椅子がある。この二つの”このような”の間には相当な違いがある。こう考えてくると、
(1)台秤などにおけるバネのはたらき
(2)椅子におけるバネのはたらき
(3)自転車・自動車におけるバネのはたらき
の三つをバネが伸び縮みする性質だけでまとめて扱うのは無理であるといわなければならなくなる。(同書210頁)

(3)の防振バネ・ゴムの場合は力学的に込み入った話になりますが、ゴムは「力を弱める」という誤解は一般的であろうと考えています。この誤解は「水中では重さが無くなる」という考えと極めて近いと言ってよいでしょう。言い換えれば「素直な見方」です。アルキメデスは「ひねくれた見方」をして成果を上げ、ガリレオはアルキメデスの手法を学んでこれまた大きな成果を上げることに成功しました。

私の関心は”このようなゴムについての迷信”がどれほど生きているか、またそれが製品の設計や採用にどの程度影響しているかにあります。それで「ゴムは力を弱めるか?」という簡単な問題を選んでみました。まずは圧縮の問題です。

会社に郵便物の重さを測る台秤があり、流しにはスポンジがありました。そして昔は遊具に使ったと思われる直径7/8インチの鋼球があったのでこれらを使うことにします。
スポンジの質量は5g、スチールボールは45gでした。この二つを秤の皿に並べて乗せた場合と

スポンジの上に鋼球を乗せて測った場合では秤の目盛りがどうなるか、これです。クリックすると拡大して目盛が見えます。

また引っ張りの問題も作れます。私の手元に秤量100gのバネ秤があり、輪ゴム5本で1gでした。穴の開いた錘としてベアリング#6201があり、これを測ると36gでした。輪ゴムとベアリングを一緒にフックに吊り下げた場合と

輪ゴムを5本連結してその先にベアリングを絡げて、輪ゴムをフックに吊り下げる場合では目盛りが違うでしょうか?

私の予想では、これら二つの問題を小学生から大人に出題した場合、正答率が50%に達することは無いでしょう。

(お願い)二つの問題は仮説実験授業研究会の授業書《ばねと力》から採りました。これらの問題を「つまみ食い」することなく、授業書全体の意図を理解した上で通しで授業をされることをお願いします。昔、この《ばねと力》を社員向けの講習会で行ったことを思い出します。

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