不知火(デコポン)
世人為栄利纏縛、動曰塵世苦海。
不知雲白山青、川行石立、花迎鳥咲、谷答樵謳。
世亦不塵、海亦不苦、彼自塵苦其心爾。
不知雲白山青、川行石立、花迎鳥咲、谷答樵謳。
世亦不塵、海亦不苦、彼自塵苦其心爾。
世人は、栄利に纏縛せられて、動もすれば塵世苦海なりと曰う。
知らず、雲白く山青く、川行き石立ち、花迎え鳥咲い、谷答え樵謳うことを。
世も亦塵ならず、海も亦苦ならざるに、彼自ら其の心を塵苦にするのみ。
「塵世苦海は心の持ち方から」
世間の人々は、名誉や利益を求める心に束縛されて、
ともするとこの世を穢れた世の中であるとか、
苦労の多い世界であるとか言いがちである。
その様な人たちは、雲は白く、山は青く映え、
川には清らかな水が流れ、岩はそそり立ち、野には花は咲き迎え、
鳥は歌いかけ、谷にはこだまが聞こえ、
きこりは長閑に歌うと云う、素晴らしい自然の姿があるのを知らない。
この世自体は別に穢れてはいなく、また苦労の多い世界でもないのに、
世間の人々は自分から、その心を穢れや苦しみの世界としているのである。