太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

小川さん

2013-06-12 19:42:38 | 人生で出会った人々
夫は日本にいたとき、高校で英会話を教えていたのと同時に、

子供や大人のグループにも英会話のレッスンをしていた。

その大人のグループの一人に、小川さんという90歳の男性がいた。

グループのほかのメンバーはみんな、高校で英語を教える先生たちだったが、

小川さんはただ英語が好きで仲間に加わっていた。

面長のおだやかな笑顔の紳士で、とても90歳には見えなかった。

漫画「ちびまるこちゃん」のおじいちゃんに、どことなく似ている。



小川さんは20年以上前に奥さんを亡くし、一人娘はチェコスロバキアで暮らしており、

広すぎる家に一人住まいをしていた。

夏の盛りの日に、夫は時々、小川さんの家の庭の草刈に行き、

私も何度か小川さんの家を訪ねたことがある。

80歳を過ぎてからも気軽に外国旅行をし、いろんなことに興味がある小川さんの話は、とてもおもしろかった。

「あまり年寄りと話したくないんだよねえ。ジジ臭いから」

と言ってからからと笑う。

年寄り、つったって自分よりも20も若いような人達だ。



エンジニアだったらしいというだけで、詳しいことをよく知らない。

戦争にも行っただろうけれど、苦労した話を一切しないから

彼の長い人生で何があったのか、その優しい顔の奥に覗い知ることはできない。



91歳の誕生日を、仲間の一人の家で祝ったことがある。

ちょうど夫の両親が来日していた時で、一緒に行った。

小川さんはその席で、みなさんへのお礼に、といって『荒城の月』を歌った。


♪ はるこうろうの はなのえん~ めぐるさかづき かげさして~ ♪


目を閉じて朗々と歌う小川さんの声は、よく通って、荒城の月ってこんなにきれいな歌だったのかと感動した。




「僕はね、死なないような気がするんですよ。

いや、いつか死ぬんですけども、もういつくたばっても構わないとずーっと前から思ってるんですけども、

その一方で、もし死ななかったら、という思いもあるんです。

おかしいでしょう?

昔からの友達はもう、一人も生きとらんですよ」





数年後、私たちが日本を離れることが決まったちょうどその頃、

小川さんは少し体調を崩して一人住まいが心もとなくなり、横浜のケアホームに移った。

ホームのロビーにグランドピアノがあり、小川さんはそれを弾きたくて、93歳にしてピアノを習い始めたという。

きっとホームの中でも人を楽しませる話をして、人気者なんだろうとみんなで話した。

いつか会いにいこうと言っている間に月日は過ぎ、それもかなわずハワイに来た。


ハワイに来てからも、小川さんの元気なエピソードが、グループの仲間たちからメールで届いていて、

帰国するときには必ず会いに行くつもりで、場所まで調べ上げていたのだったが、

私たちが帰国する1ヶ月前、小川さんが亡くなったという知らせを受けた。





小川さんが亡くなる2日前、小川さんは横浜から静岡県の自宅にいったん帰って来たのだという。

空き家になっていた家の中をくまなく点検し、

荷物の整理をし、掃き清めてから横浜のホームに戻り、2日後に眠るように息を引き取った。

小川さんらしい最後だと、誰もが言った。

確か「ちびまるこちゃん」のおじいちゃんも、亡くなる直前まで元気で、

突然旧友たちに会いにいくようになったと思ったら、ぽっくり亡くなってしまったはず。

顔だけじゃなくて、死に方まで似ているなんてなぁ。



こんなふうに生きたい、こんな自分になりたい、ということに一生懸命できたけれど、

ここ数年、時折だが、死ぬときのことを考えることがあり、

けれども漠然として、「自分の死」はなかなか形にならないのだった。

しかし、小川さんに出会い、私もきれいさっぱりと死にたいものだと思うようになった。

きれいさっぱりと死ぬということは、きれいさっぱりと生きていたからだろう。

やりたいことをどんどんやり、愚痴を言わず、1日1日を大切に楽しんで生きる。

そういうことなのかもしれない。



小川さんの訃報を聞いた時、なぜだか涙は出なかった。

あまりに生き生きと生きていて、煙のように亡くなったから、小川さんがもういないということが

実感としてわからない。

でも、どこかで「荒城の月」を聞いたら泣けてしまうだろうと思う。







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いましめ

2013-06-11 07:20:07 | 日記
「今日は4周走ってきた」

夫がランニングを始めたらしい。

さては体重が増えたんだな、と思ったが黙っていると

「93キロになってた・・・」

おととしの年末あたりが最高に太っていて、106キロあった。

いくら身長があっても、骨太なタイプではないから、106キロあるとそれなりにぽっちゃりだ。

仕事のストレスもあったし、なにしろよく食べ、よく飲んでいた。

ベスト体重は85キロ、とアンパンマンみたいな顔して言われても、とても想像ができなかった。


昨年の秋口に、何かが降りてきて、突然デトックスとダイエットとランニングを始め、

するすると83キロまで落ちた。

そのあとは、増えても88キロぐらいで、いい感じでスリムさを保っていたのだった。





93キロになっていたのがわかった24時間後、

再び体重を測ると88キロになっていた、という。

「これってありえる?」

1日に2回1時間ずつのランニングをしたのと、小麦を食べないで野菜とたんぱく質だけとる、

それだけで24時間に5キロ減?

体重計がおかしいのかと、もう1台の体重計で測っても同じだった。





何を食べてもあまり変わらない私に比べて、夫はデリケートにできているらしく

食生活がすぐに体調や体重に出る。

特に砂糖や小麦やアルコールをとり過ぎると、すぐに便秘になる。

私以上に「ON」と「OFF」が激しく、その中間がない性格のため

いったん境界線を超えると、どんどん食べる。

そしてまた臨界地点を迎えると、修行僧のようにストイックになる。

子供の頃に虚弱体質だった夫は、きっと基本的にそれほど丈夫ではないのかもしれない。

だから食生活に気をつけないと、あちこちいうところが出てくるのかもしれない。



「測ったら93キロだったとき、たぶんあなたの天使が足を乗っけたんだよ」



私がそう言うと、

「ああ、うん、そうかも。

僕の天使はやることが荒っぽいんだよ、いつも・・・」





日本にいた時、夕食のあとで夫がしこたまビールを飲んで、

飲み尽くしてしまうと、自転車でビールを買いに行くという。

家の中でもヨロヨロなのに、自転車で出かけるというので私が止めた。

こういうとき、彼はものすごく頑固になって、どうしても行くと譲らない。

それで、もし行くなら私も一緒に行くといって、二人で出かけた。

歩道を走っていた夫が、向こうから来た人をよけようとしてよろめき、パタンと車道側に転んだ。

車が走ってこなくてラッキーだった。

おもむろに立ち上がって、振り返って手を振った夫のTシャツの胸が血だらけだった。

転んだときに顎を切ったのだった。

出血が止まらず、救急病院に駆け込んだ。

骨が見えるほどの深い傷で、破傷風予防の注射もしてもらった。


今でも残る縫い跡をさすって、

「これは天使が僕を突き飛ばしたんだ。僕がすごくバカだったから」

と言う。




必ず見守ってくれている存在がいる。

それは疑いようがない。

夫を見守ってくれている「厳しい」存在たちにも感謝。








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ヘンゼルとグレーテル

2013-06-09 14:11:33 | 日記
どこに行ったときだったろう。

来た道を戻れるかわからないときに、

「パンくずを落としていって目印にできたらいいね、ヘンゼルとグレーテルみたいに」

と私が言ったら、夫が

「ヘン・・・なに?知らない」

と言う。

「ヘンゼルとグレーテルを知らないの?おとぎ話だよ」

「どういう話?」

兄妹が二人で森に分け入って、お菓子の家を見つける話をした。

それを聞いていた夫が

「同じような話がアメリカにもある」

と言い、

夫「そこには目が悪い魔女が住んでいて」


私「そうそう」


夫「二人を閉じ込めて、おいしいものを食べさせて、太るのを待つ」


私「なんだ、同じ話じゃん」


夫「兄妹の名前が違うだけだね」


私「アメリカでは何ていう名前?」


夫「 ハンスゥルゥ~ エン グルェ~トゥエル 」


私「・・・は?・・・」


夫「 ハンスゥルゥ~ エン グルェ~トゥエル 」



発音が違うだけで同じ名前だと思われる。

ヘンゼルは ハンス に近い発音になるのだね。

どうりでヘンゼルをいくら英語っぽく発音しようとしたところで通じないわけだ。

ちなみにアクセントは  からいきなり音が上がって 、 スゥ にアクセント、ルゥ~とくる。 



子供を国際人に育てようとした場合、読み聞かせをするときには

「ハンスゥルゥ~ エン グルェ~トゥエル は夢中になって歩くうちに、パン屑を鳥たちが食べてしまったことに

気づきませんでした。ハンスゥルゥ~が振り返ってみると・・・」

というように、英語っぽく発音するとおもしろくなる(おもしろくなるだけか・・)





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芸能人似

2013-06-08 08:01:27 | 日記
職場で、ある日本人のお客様が私の顔をジーっと見て

「あなた、誰かに似てるのよね」

とおっしゃる。

「誰だろう、思い出せないけど、女優さんで、うーん・・・・」

女優さんつってもいろいろだからな。

「誰かに似てるって言われたことない?」

「ありませんよー」

過去、○○さんに似ていると言われたことはあるが、私はそれを絶対に人に言わないようにしている。

というのも、芸能人似と言われて、本当に似ている人に出会ったことがあまりない。



その昔、「付き合い始めた彼がとんねるずの貴さん似なのぉー」、とハートをまき散らして友人がうれしそうに言う。

実際会った彼は、私はとんねるずの貴さんを勘違いしていたのでは?と思うような風貌であった。

けっしてブ男なんかではない。

貴さん似、とさえ言わなければ普通に爽やかないい感じの青年なのだ。





こうして、芸能人似と言ってしまうことで、

そしてその芸能人が美形であるほど、その人の印象が残念なことになりがちだ。




「ね、高岡早紀(正しい字か?)って知ってる?」

そのお客様が突然言った。

「ええ、わかります」

「このまえ日本に帰った友達が、高岡早紀を見たんだって。

そうしたら、私が似てるっていうのよぉー」

私はどう答えていいかわからなくなった。

高岡早紀というよりは・・・・



市原悦子。



かな・・・



「ねえ、似てるかしら」

「あ、ええ、うん、眉と目の辺りが似ているかもしれませんよ」


ああ、だから人には言わないほうがいいというのだ。

だから私はけして、人には言わないようにしているのだ。






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矛盾してない?

2013-06-07 07:21:55 | 日記
6月から、車の後部座席に座る人もシートベルトをすることが義務づけられた。

道路のあちらこちらに、そのことを知らせるサインがあるし、

いつもより警察も多く出ているように思う。

安全のために後部座席もシートベルトをするのは大変よいことだ。


そう、とっても良いことなんだけど、

やいのやいの言うわりには、

オートバイはヘルメットが義務づけられていないし、

トラックの荷台には、平気で人が乗ってOKっていうのはどうよ?

オートバイで転んだときに、ヘルメットがなかったら重大な怪我をする確率が高い。

荷台に人が乗ったまま追突されたり、追突したりしたら、

真っ先に放り出されるのは荷台の人達じゃないか。

なんかちょっと矛盾・・・・




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