7、「1時44分にゲートを閉めた」とされている樋門操作員の活動形跡がない
河川事務所の報告 : ・情報公開請求によって河川事務所から提示された皿川樋門操作記録:https://archive.fo/NOD6b : https://archive.fo/ffrn2 :によれば「12日の20時55分に皿川樋門に出動し13日の1時44分にそこを退避した」となっています。
しかしながら「ゲートを閉めた時刻が1時44分」ですから、その操作をした後でゲートが実際に降りたのかどうか室外に出て確認し、それから操作室内を片付けて明かりのスイッチを切ってドアをロックしてその場所を離れるのですから、「2時頃に皿川樋門を離れた」という事になります。
しかしながら ・飯山水害「なぜ皿川は氾濫したのか」の2 で示した様にその樋門操作員の活動形跡が皿川の水位を確認するためにたびたびその場所に出向いていた方によってまったく目撃されていないのです。さてこれは一体どうしたことでしょうか?
そうであれば「実際は操作員は皿川樋門では活動していなかった」という事になります。
8、ゲートを再び持ち上げる為にその場所に現れた樋門操作員は存在しない。
報告によれば樋門操作員が再びその場所に出動したのは13日の14時とされる。その時には皿川樋門の前では排水ポンプ車が一台、排水作業にあたっていた。
13日9時頃の皿川樋門前の状況: https://archive.fo/8RpSJ
14時であれば周囲はもっと明るくなっていた事であろう。そうして排水ポンプ車を操作している作業員はそこにいた。だがその作業員は再出動した樋門操作員を見る事はなかった。
そのかわりにもっと不思議な光景を目にしていた。樋門操作員が現れた形跡がないのにもかかわらず、樋門のゲートがすでに上がっているのを確認していたのである。
皿川樋門のゲート全開時のゲート上端の高さはその場所の水位標読み値で8.5m。ちなみにこれは実は皿川樋門入口側に立っている水位標の高さと同じ値である。
・ゲート上端高さ 8.5m : https://archive.fo/nms1F
それはつまりその場所の水位が8.5mになるとゲート上端が水面に現れる、という事である。そうしてその時刻は13日の午前10時頃。水面上に何やら見え始める。
12時には水面上に1m程ゲートが飛び出す。そうしてポンプ車がそこを退去してもっと南側に移動した時刻、午後3時には水面の上に2mもゲートが姿を現す。
排水ポンプ車の作業担当者は「ゲートが開いていたのならこの場所で排水作業をしても無駄だな」ということで、15時にそこを移動した、と飯山市は議会で答弁している。(注1)
まことにもっともな判断である。
だが報告書を書き上げた「だれかさん」はその点を見逃した。そうしてゲートを上げた時刻を13日の15時30分と書いてしまった。
しかし「物事の整合性をとる必要性」からいえば、「ゲートを開けた時刻は15時」としなくてはならなかった。
そうしておけば「ゲートが15時に開かれたので、排水ポンプ車はその場所を移動した」となり「つじつまがみごとに合った」のである。
9、15時30分にゲートを上げた、その時の内水位は6.40mではない
報告書では「13日15時半の皿川ダム湖水位は6.4mであった」としています。これを標高になおすために+309.1mを足しこむと315.5mとなり、これが15時半の水位の標高となります。
ところで決壊場所の最終的な姿はこうでした。:水が引いた後の景色 : https://archive.fo/0O1iv
決壊場所のすぐ外側は遊園地になっており、滑り台がある事が確認できます。さてそれでこの場所のこの時の標高はいくつでしょうか?地図読み値では316.3mで、それプラス堆積した土砂分という事になります。: ・公園 滑り台の写真 : https://archive.fo/3BKlo
・・・という事はいずれにせよ皿川ダム湖の水位315.5mよりも高い、つまり「午後3時半には皿川決壊場所からの泥水の流出は止まっていた」と主張している事になります。
さてそれで、横丁大家さんは市内にあふれた水位の経時変化を記録・報告されています。まずは水位上昇変化の写真。
・「ときでん」周辺~10月13日午後5時近くに最高浸水深~標高315・8mまで上昇~洪水発生源は~ : https://archive.fo/cigGj :時系列浸水深の写真
それらの写真から上町あたりの屋外での水位の経時変化を出してグラフ化したものがこれ : https://archive.fo/qk2dU
上町あたりでの水位のピークは17時である事がわかります。(注3)
そうしてこの時は千曲川堤防の上でポンプ車6台+消防団の排水ポンプ(複数台)が動いていました。それでも皿川決壊場所からの流入泥水が多いため、17時まで市内の水位は上昇を続けたのです。(注4)
あれ、おかしいですよねえ。河川事務所は「午後3時半には皿川決壊場所から市内への流出は止まった」と言ってますが、実は止まってはいなかった。(注2)
少なくとも17時過ぎまでは市内への流出は続いていた、つまり「15時30分に皿川ダム湖の水位は6.4mではなくもっと高かった」と言うのが事実なのです。
その値は、といいますれば「河川事務所主張の内水位よりは概算で1m以上は高かった」という事になります。
さて実際に3時半に皿川樋門の場所にいて内水位を計測していたら、こんな「明らかに違う数字を報告書に書く」という事はなかったでありましょう。つまり「河川事務所が主張しているような樋門操作員は15時半には皿川樋門にはいなかった」というのが結論となります。
さて以上が当方が「この報告書は情報公開請求があったので、あとから机の上で作文されたものである」と主張する根拠となります。
注1:飯山市議会議事録から : ・参考資料の5
『◆6番(松本淳一) ちょっと先に進みますが、排水ポンプあるいは樋門についておうかがいします。
皿川から排水ポンプを6台使って排水をしたというふうに報告されているんですが、スタートの時間は多分書いてあったと思いますが、6台になったのは何時ごろですか。
◎建設水道部長(坪根富士夫)
皿川では、13日の5時から15時まで排水を行っております。
皿川の自然流下が可能になった時点で移動し、皿川付近の国道117号で市街地の内水排除のため、排水ポンプが13日の22時から6台体制になっております。
◆6番(松本淳一)
ちょっと説明がよくわからなかったんですけれども、13日の5時から15時の間というのは何台だったんでしょうか。
◎建設水道部長(坪根富士夫)
排水ポンプ車1台でございます。
◆6番(松本淳一)
市街地のところをもう一回ちょっとご説明ください。ちょっと聞き取れなかったので。皿川ではなくて、市街地のほうの排水をしたという部分、もう一回ちょっとご説明ください。
◎建設水道部長(坪根富士夫)
皿川付近の国道117号、具体的に申しますと、栄川樋管と飯山高校のグラウンドのあたりで、排水作業を行いました。』
注2: ・北町住宅東端上階からの13日午後3時2分時点での撮影・堤防決壊場所の写真 : http://archive.md/U0QfF : https://archive.md/HaLqS <--このページの一番下にある写真です。この写真をクリックすることで拡大表示する事ができます。
午後3時2分時点でこの水位である。(水位の程度はJR鉄橋の橋げたと水面の距離から概算可能)。この時間で堤防決壊場所からはまだ左側に泥水が流れ出している事が確認できる。
さて河川事務所はこの水位から1.5m~2m程の水位の低下をたった一台の排水ポンプ車で30分でやれた、と主張しているのである。
そうしてもちろん現実にはそんな事は不可能であって、実際はこの場所からの泥水の流れ出しは17時を超えて続いていたのであった。
ちなみにその場所からはよく見渡すことが出来た千曲川堤防の皿川樋門前には飯山市の報告通りに排水ポンプ車は排水作業を終えて移動していた為に姿がみえず、撮影する事はできなかった模様。
注3:以下13日18時04分時点での飯山市の認識
・飯山市のHP :令和元年10月 台風19号に関する被害状況等
(令和元年10月13日 10:00現在): https://archive.fo/K9Uxa :から引用
『令和元年10月 台風19号に関する被害状況等
(令和元年10月13日 10:00現在)
避難に関する情報
・・・
10月13日
・・・
5:34 瑞穂地区の戸那子区全域、富田区の一部、中組区の一部、関沢区の一部に避難勧告発令
6:37 内水の能力を上回る増水により、飯山地区の福寿町区、本町区、肴町区、上町区、新町区、鉄砲町区、奈良沢区、栄町区、県町区と秋津地区の北畑区に避難勧告発令
・・・』
の「内水の能力を上回る増水により、」の部分の意味がよく分からなかったので、市役所に質問したのでした。そうしたら当日夕刻に真面目な担当者から以下の様な回答が返ってきました。
飯山市よりの回答メール 13日 18時04分時点 質問はHPの問い合わせフォームから
『・・・お問い合わせいただきました件について、ご説明いたします。
「内水の能力を上回る増水により、・・・」についてですが、以下のとおりとなります。
本日未明より、市街地の広範囲に(千曲川本流ではない)河川からの流水等に
よる内水氾濫が発生しております。
千曲川本流の水位が、市街地に流れる河川の水位より高く、自然流下しないため
通常開放している水門等を閉め、流れ込んだ河川の水を複数台でのポンプ等に
より排水処理を行うのですが、流れ込む水量の方が多いことにより、水が徐々に
溜まり、引きにくい状況となったものです。
内水の「排水」能力が雨水等による河川水位の増加に対応できなかったという
説明のほうがわかりやすいかもしれません。
以上となります。
よろしくお願いいたします。』
↑ 飯山市の「まだいろいろと対外的な情報操作していないこの時のすなおな認識」がよく分かります。
そうして「流れ込む水量の方が多いことにより、水が徐々に溜まり、引きにくい状況となったものです。」という所はもちろん「(皿川右岸堤防決壊場所から市内に)流れ込む水量の方が(堤防で排水中の排水ポンプ車6台+消防団所有の複数台の可搬式排水ポンプによる千曲川への排水量よりも)多いことにより、(飯山市内に)水が徐々に溜まり、(その水が増え続け、現在でも)引きにくい状況となったものです。」と言っておられるのですね。
注4: 消防団の対応
次に排水ポンプ車による排水量の計算です。
皿川エリアには合計6台の排水ポンプ車が配置され、皿川担当に1台、残り5台は市内に流出した水の処理にあたりました。そうして皿川担当の1台は午後3時に市内担当に合流しました。
それから地元の消防団が可搬式の小型ポンプ7台で排水の補助をしています。
http://archive.md/KRvw4
この部分は本来は動画になっています。午前7:58 · 2019年10月13日
https://twitter.com/zakkey_zzr/status/1183155046533386241?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1183155046533386241&ref_url=https%3A%2F%2Fmatomedane.jp%2Fpage%2F39432
追伸:(2021/7/12):皿川樋門のゲートが降りていなかった、という決定的な、直接的な画像がありました。
・水門の閉鎖、国伝えず 長野・飯山の皿川、堤防決壊 (中日) : https://www.chunichi.co.jp/article/39265 <-写真をクリックすると拡大できる。皿川で排水作業中のポンプ車1台、確認可能。ちなみにこの画像は昼ごろ飯山市がとばしたドローンによるもの。
拡大画像で皿川樋門を見てください。ゲートが降りていない事が確認できます。
見にくい時は150%に拡大しましょう。はい、お疲れ様でした。貴重な画像を提供していただいた飯山市には感謝する次第であります。
おまけ:◎総務部長(栗岩康彦)
ドローンにつきましては、13日の午後1時半ごろからドローンによる撮影をして、市街地の状況調査を行っているところでございます。
おまけの2:近づいて堤防の上からゲートを見るとこう見えます。: https://archive.fo/nms1F
おまけの3: https://archive.fo/dHJuW
補足:皿川樋門関連 ゲート上端位置と千曲川の水位について
・ゲート上端高さ : https://archive.fo/7pRbN :写真からわかる様に8.5mである。そうしてこの数字は皿川側にある水位標の高さと同じである事をしめす。
・外水位計 水位標 : https://archive.fo/xF3E6
・ゲートが開いた状態での千曲川側からの画像 : https://archive.fo/pzIvW :ゲートが降りた場合は手すりが写っている作業用の通路の部分あたりまでゲート上端が降下する事になる。
ゲートが降りた状態では・外水位計 水位標の値で5m以下にゲート上端が降りる。これは飯山水位観測所の数値に換算すると7m以下になる、ということである。
いっぽうでゲートが開いた状態では上端は8.5m、水位観測所の数値に換算で10.5mの位置にある。
さて13時半の千曲川の水位は9.17m@水位観測所である。
そうであればこの時にゲートが降りていたならば、その上端は千曲川の水の下にあって、上からでは見えない。
他方でゲートが開いていたならばその上端は千曲川の水面上に1.3m程出ている事になる。
さてそういうわけでドローンが13時半に撮影した皿川樋門の写真にゲートが写っていた、という事は「13時半にはゲートは開いていた」という事である。
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