1、有尾地区の浸水について
この地区の浸水被害については飯山市報(pdf)にも記載があります。
このpdfの2ページ目に今回の浸水被害があった場所が地図上に示されています。
拡大して確認してください。
そこに「有尾区 内水の氾濫よる浸水」と示された場所があります。
グーグルマップでは「JA虹のホール みゆき」と書かれたあたりでしょうか。
さて、「そんなところに川があったのか?」と言うのが最初の疑問でした。
そうして「国土地理院の地図」にも「グーグルマップ」にも対応する川などそこには無いのです。
実際はそこにあるのは「農業用の用水路」でした。(注1)
さてではこの用水路が氾濫した?
いやいや、この用水路の起点はそんなに大したところには無く、そのあたりに降った雨を集めて農業用にしている、と言うしろものでした。
それではなぜこの用水路に沿った場所が氾濫したのか?
この用水路に多量の水が流れ込んだからであります。
その流れ込んだ水の出所は、といえば「皿川の左岸越水」と「有尾樋管あけっぱなしによる千曲川からの逆流水」でした。
そうしてこの場所に氾濫の被害を与えた主原因は「皿川の左岸越水」ではなく「有尾樋管あけっぱなしによる千曲川からの逆流水」でした。
このことについては詳細は後述致しますが、従ってこの場所の氾濫は「内水の氾濫による浸水」ではなく「外水の氾濫による浸水」と記録されるのが正確であります。
さて、それではなぜ飯山市は「内水による氾濫」と公表してきたのでしょうか?
それは「有尾樋管が開きっぱなしだったという事を知られたくなかったからである」と推察いたします。
しかしながら、後日、情報公開請求によって「有尾樋管が開きっぱなしであった事」が公開されてしましました。
最初に報告をした頃は飯山市は「こんな事にはならない」「有尾樋管が開きっぱなしだった事は隠しておける」と思ったのでしょうね。
しかし、残念な事には、そのような飯山市の予想は裏切られ、情報は公開されてしまったのでした。
2、有尾地区氾濫の舞台となった場所の説明
飯山市の報告のpdfではピンポイントで場所が示されているだけでした。
しかしならが、実際は相当に広い範囲が浸水の被害を受けていました。
その正確な範囲については下記の河川事務所の報告が良いでしょう。
その26ページに飯山で浸水被害に遭った場所が地図上に赤色で示されています。
拡大して確認をお願いします。
その地図の左側から堤防道路に直角にぶつかっている線は国道292号線です。
その国道を挟んで上下に赤色で示された部分が「有尾地区で浸水被害を受けた場所」になります。
地図では「有尾」とかかれた文字が皿川左岸部分に確認できます。
それから292号線とJR飯山線が確認でき、浸水被害は中央から下では飯山線の右側に上部では飯山線をまたいで左側にひろがっていたのが河川事務所の報告から分かります。
そうしてその浸水エリアを結ぶように用水路が青色の線で示されています。
国道292号線と堤防道路、それからJR飯山線が確認できます。
それからもう一つのランドマークである「JA虹のホール みゆき」の場所も確認できます。
さてそれで順番に近づいていきますと、
航空写真4で今回の氾濫のメイン舞台の全景となります。
皿川とその左岸道路、高水福祉会と書かれた建物、その建物の左側の道路を上に行ったところにあるのが飯山市の「公共下水道有尾中継ポンプ場」の建物、その建物に通じる道と左岸道路が交わる辺りが皿川から左側に越水した場所になります。
そうであれば越水した水はそのあたりを水浸しにしながらポンプ場にも押し寄せたのでした。
その時刻が13日の2時15分、しかしちょうどそのころにそのポンプ場の裏側(北側)を流れる、通常はそこから千曲川に余剰になった雨水を排水する排水路から千曲川の水が逆流し氾濫し始めていました。
この千曲川の水は排水路を右に見ていくと堤防にぶつかるのですが、堤防を越えてさらに右側をみるとそこに今回主役の「有尾樋管」があるのが分かりますが、そこのゲートが閉められておらずあけっぱなしだったので千曲川の水が樋管を通じて内側に流れ込んだというものです。
そうであれば2時15分から皿川右岸堤防が決壊したとされる4時15分までの2時間のあいだは皿川からの越水と千曲川からの逆流水がポンプ場周辺に氾濫し浸水被害を与えていた、という事になります。
しかし4時15分に右岸堤防が決壊すると皿川ダム湖の水位がさがり、左岸への越水はそこでなくなりました。
そうではありますが千曲川からの逆流はますますひどくなり、有尾樋管が閉められた時刻、それは13日の10時ですから、4時15分から10時まで、5時間45分間に渡って千曲川の泥水が樋管を通じて内側に流れ込んできていた、という事になります。
そうしてこの事が有尾地区であれほどの広い範囲にわたって、浸水被害を出した事の原因となりました。
3.ポンプ場まわりの水路について
写真中央に見える、門の奥の建物がポンプ場でそこまでの道は皿川左岸道路から下り坂になっています。そうしてその道の左側に側溝がありそれはこの写真で言うと「左側が山手になる」のですが、通常はそちらの方からの雨水をポンプ場横と裏を通して有尾樋管から千曲川に排出する、そういう構造になっています。
側溝1は皿川左岸道路の上流側を見た時の写真で道の右側に側溝がみえます。
側溝2はその位置で後ろを見た時にみえる景色であって、中央電柱奥にポンプ場の屋根が一部確認できます。そしてこの側溝はそのポンプ場まで続いています。
この排水路を有尾樋管を起点に見るとこうなります。
飯山市「公共下水道有尾中継ポンプ場」浸水高は~浸水レベル▽GL+86cm~台風19号災害
最初の写真( https://archive.fo/ZTRSG )は千曲川側から有尾樋管を見たものです。
2枚目( https://archive.fo/ZJCBX )は樋管ゲートを降ろす為に渡る橋の上部の写真です。そして有尾樋管が堤外地にある田んぼに水を供給する為の樋管である事が分かります。
3枚目( https://archive.fo/SztkJ )はその場所から後ろを見た時の絵でJAの建物とその駐車場が見えます。
4枚目( https://archive.fo/KmE2O )は樋管の側面からの写真。
5枚目( https://archive.fo/nwtAe )は堤防を渡ってJAの駐車場を見渡すもの。このときには樋管に続く排水路が駐車場の左を走っているのが確認できます。
6枚目( https://archive.fo/EWZHF )は排水路の写真、下水道中継ポンプ場の屋根が一部確認できます。
7枚目( https://archive.fo/cLmVQ )はポンプ場の裏を走っている排水路を、用水路との分岐点から堤防の方を見た時の絵です。右のフェンスと建物はポンプ場、左はJAの駐車場です。そうして一番奥に堤防が写っています。
8枚目( https://archive.fo/h69MW )は山から下ってきた水を右側の排水路ー>有尾樋管に流すものと、そのまま直進させて農業用水としてつかうものに分ける分岐点の写真で、堰を上下させるハンドルが写っています。
9枚目( https://archive.fo/JYh1j )はポンプ場横を走る山からの水をそこまで導いてくる側溝の写真。右側の建物はポンプ場です。
10枚目( https://archive.fo/WF6Y0 )はポンプ場の正面、道の左側に山手に通じる側溝が写っています。
ちなみに11枚目( https://archive.fo/jkAaM )がこのポンプ場の側面のかべに貼られた浸水深さのピークを示す表示。GL(グランドレベル)から860mmまで水が上がった事を示しています。そうしてこのテープがどこに貼られていたか、といいますと、それは9枚目の写真で確認できます。
そうして、有尾樋管のゲートの様子や、その閉・開日時、そうしてその位置についての航空写真は以下の記事で確認できます。
台風19号による千曲川増水時~飯山市街地北に位置する有尾樋管が開いたままで~千曲川が逆流してた~
注1:この用水路は有尾地区皿川付近を起点とし、終点はおだての排水機場となります。つまりはおだての川そのものの事になりますね。そうであれば、有尾地区に氾濫した水でこの用水路に流れ込んだ水はおだてのポンプ場から千曲川に戻された、という事になります。