「城山の雨水排水ポンプ場は能力不足」の2

2021-08-10 10:54:37 | 日記

前ページの・「城山の雨水排水ポンプ場は能力不足」の1 では表面雨量指数を使った説明方法をとっており、この方法にあまり慣れていない方には違和感があったかと思います。

それでここでは従来から使われている降水量ではどうだったのか、振り返っておく事にします。

気象庁のデータベースからアメダス飯山観測所の情報を以下に示します。

・2019年10月12日 : https://archive.fo/000K8

・2019年10月13日 : https://archive.fo/fr1D7

降水量の状況を確認するならば、12日の17時に1時間降水量10ミリがピークとなっています。そしてその後も1時間当たり6ミリ程度を限度に13日の4時頃まで雨は降り続きますが、それ以降は降水量は順次減少し10時には雨が止んだ、という記録になっています。

それで市内に降った雨が雨水排水ポンプ場に雨水下水路を通じて到達するのは30分もあれば十分でありましょう。

そのような状況の時に何故13日の1時50分に3台目の排水ポンプを稼働させなくてはならなかったのか、というのがそもそもの問いの始まりでした。

雨水排水ポンプ場の内水ゲートを降ろしたのが「・樋門操作記録2(飯山市公開) : https://archive.fo/PeSqm 」より20時45分であり、その後1号及び2号排水ポンプを20時50分と21時00分に稼働させています。(注1

それで21時の時点での千曲川の水位は4.80mであって、この水位の時にはポンプ場貯水池の水位は1.3m程であった。ちなみに貯水池の深さは3.5mほどであればその時点ではあふれ出すまでには2.2m程の余裕があった。(注2

さて、ピーク降水量が17時で遅くともその水は18時にはポンプ場貯水池には到達していた。そうなると18時頃が貯水池水位のピークであった事になります。

そのピーク水位から3時間後の21時に内水ゲートを降ろして排水ポンプを2台、動かし始めた。貯水池に流れ込む雨水の量はピークを越えていますからそれまでポンプ場に流れ込んでいた水量よりは増える事はない。そしてその時の貯水池の水位は1.3m程。その様な状況で13日の1時50分を迎えた訳です。

さあそれで「どうしてそのタイミングで3台目の排水ポンプを動かさねばならなかったのか?」という事になります。

当初我々は「それはどこからかは知らないが雨水のほかに排水ポンプが排除しなくてはならない水が貯水池に流れ込んできたためだ」と推測しました。(注3)これは市長の「1台あたり1分間に110トンの排水能力をもつ排水ポンプだ」という主張を鵜呑みにした結果でした。

しかしながら市長のこの発言・主張は千曲川の水位上昇の影響を排水ポンプが受ける事を無視した「お話にならない主張だった」のです

事実はと言えば「1時50分のタイミングでは2台の排水ポンプが動いていたにも関わらず貯水池の水位は上昇し続け、あふれ出すまであと50センチを残すほどにまでなっていた」のです。

つまりポンプ場の排水ポンプは千曲川の水位上昇の影響を受けて思うようには水を排出できていなかった、そういう訳で13日の21時のタイミングでは満水まで2.2m程の余裕があった貯水池水位は上昇を続け、13日の2時頃には残り50センチの余裕しかない状況になっていました。(注4

それでポンプ場の担当者は3台目の排水ポンプの起動スイッチを入れたのでした。

さてそれで1時50分に3台目も動きだしたのですが貯水池の水位はそれでも上昇を続けました。(注5

そうして3時には仲町通り、城見橋の東側の栄川左岸の歩道付近でも浸水が確認されています。(注6

また4時には『上町区堤防沿いのAさん
「13日4時に起きたら30㎝も浸水していてビックリした。慌てて車をNTTの駐車場に避難し、近所へも知らせた」』という報告が上がっています。(注6

そうして5時には「1-2、5時時点でポンプ場貯水池オーバーフロー状態(栄川の城見橋で浸水5センチ)」となったのでした。(注7

あるいは福寿町Eさん(注6
「5時頃に近所の人の知らせで浸水に気づき、お客様から依頼された書類や、業務用のコンピュータを2階にあげた後、水の中で車を避難した。水の中を走ったこともあり、結果的には6台の車を廃車せざるを得なかった」

それで「5:40 城山雨水排水ポンプ場のポンプ室内に浸水が始まるが、土嚢等で防止」(注8)5時40分にはポンプ場のあたりでは貯水池から水があふれだしその周辺を30センチから40センチの水位で満たしていました。

それで6時40分には「1-1、ポンプ場が動いていても6時40分時点で市役所(福寿町)地点、40センチ浸水 」でした。(注9

さて以上みてきました様に、13日の3時までの状況は「排水ポンプを3台動かしたにもかかわらずポンプ場貯水池の水位は市街地に降った雨水だけで上昇し続けた」という事がわかります。

つまり「城山の雨水排水ポンプ場の排水能力は不足していた」のです。

ちなみに3時以降はこの状況に加えて皿川からの氾濫水がポンプ場に到達しはじめますから、ポンプ場の貯水池は簡単にオーバーフローしたのでした。


こうして明らかになった様に「ポンプ場のポンプが空回りしている事に気が付かない対策本部」は「排出できていない雨水と皿川からの氾濫水を排出できているもの」と思い込むという「致命的な判断ミスをしていた」のでした。

その為に「皿川の氾濫を確認」しても「空回りするばかりのポンプ場」を頼りにして「すみやかに市内全域に対する警報を出す」という「とても基本的で大切な事をしなかった」のであります。

そうしてまた付け加えますれば、飯山市が残念そうに言う「ポンプ場さえ浸水で停止せずに動いていたならば、、、」という主張は全く意味をなさない、という事も分かるのです。

何となれば千曲川の水位が9.6m以上になるとポンプ場からは千曲川に水が排出できなくなり、唯ポンプが空回りを続けるだけだからです。そうであれば13日の3時以降12時過ぎまではポンプがいくら回転をしていてもポンプ場からは水は千曲川には排出されなかったでしょう。(注10

つまり「市内の浸水状況はポンプ場のポンプが回転していようが止まっていようが13日の3時から12時までは全く同じであった」という事になるのです。

従いまして「ポンプ場の耐水化だけ」では全く意味をなさず「ポンプそのもののオーバーホール」、場合によっては「ポンプの新規差し替えが必要になる」という事になります。

 

注1:・令和元年台風19号関連災害経過報告【第2報】 3ページ目、「7.樋門、ポンプ等」 を参照願います。

注2:・水位データ詳細: http://archive.fo/lMbFk

ポンプ場貯水池の水位については・その26-2・ポンプ場周りのその他の情報について の「追記2(2020/10/21):栄川樋管の千曲川出口底の標高に関連して。」を参照願います。

注3:この時点では皿川からの氾濫水はポンプ場には到達していない、2時の時点では「皿川右岸堤防から越水がはじまったかな」というタイミングです。

注4:・「皿川氾濫・決壊に対する避難勧告発令」の3 の「1-3、25m道路アンダーパス北側エリア(@福寿町)は2時過ぎには浸水が始まっていた」を参照願います。

注5:25m道路アンダーパスの北側では2時以降も浸水が続き(近所の方の証言有)、つまりは「3台目のポンプが稼働したにも関わらず水位は低下する事はなかった。」という事になります。

そうしてまた3時までは皿川からの氾濫水はポンプ場には到達してはいなかったと推測されますので(この部分の推測は市長もその様に主張しており、珍しい事に唯一市長の発言の中で同意できる部分となります。)、したがって「雨水を排水するのに3台排水ポンプを回しても足りなかった」という結論になります。

注6https://archive.fo/114f5 :この件、左記の記事を参照願います。

『田町のBさん
「朝3時ごろには栄川が仲町通りの辺で溢れ始めていた」』

場所については : https://archive.fo/vBpse を確認願います。十字クロスで示された場所が言及されている所であり、その場所の標高値が314.2mである事が左下に示されています。

上町地区のAさんは25m道路下のアンダーパスの南側にお住まいであり、そのありの場所はここになります。: https://archive.fo/FxhKZ :十字クロスで示された場所が言及されている所であり、その場所の標高値が313.9mである事が左下に示されています。

注7:・「皿川氾濫・決壊に対する避難勧告発令」の3 の「1-2、5時時点でポンプ場貯水池オーバーフロー状態(栄川の城見橋で浸水5センチ)」を参照願います。

注8:・令和元年台風19号関連災害経過報告【第2報】 の最後にある時系列表を参照願います。

注9:・「皿川氾濫・決壊に対する避難勧告発令」の3 の「1-1、ポンプ場が動いていても6時40分時点で市役所(福寿町)地点、40センチ浸水 」を参照願います。

注10:・「城山の雨水排水ポンプ場は能力不足」の1 の「2、ポンプ場に流入する雨水が増えてもいないのに、何故3台目のポンプを動かす必要があったのか?」を参照願います。bbb


追記真面目な市役所担当者さんの「情報統制前の回答」について

・飯山市のHP :令和元年10月 台風19号に関する被害状況等
(令和元年10月13日 10:00現在): https://archive.fo/K9Uxa :から引用

『令和元年10月 台風19号に関する被害状況等
(令和元年10月13日 10:00現在)

避難に関する情報
・・・
10月13日
・・・
5:34 瑞穂地区の戸那子区全域、富田区の一部、中組区の一部、関沢区の一部に避難勧告発令
6:37 内水の能力を上回る増水により、飯山地区の福寿町区、本町区、肴町区、上町区、新町区、鉄砲町区、奈良沢区、栄町区、県町区と秋津地区の北畑区に避難勧告発令
・・・』

の「内水の能力を上回る増水により、」の部分の意味がよく分からなかったので、市役所に質問したのでした。(質問の送信はHPの問い合わせからです。)そうしたら当日夕刻に真面目な担当者から以下の様な回答が返ってきました。

飯山市よりの回答メール 13日 18時04分時点  

『お問い合わせいただきました件について、ご説明いたします。

「内水の能力を上回る増水により、・・・」についてですが、以下のとおりとなります。

本日未明より、市街地の広範囲に(千曲川本流ではない)河川からの流水等に
よる内水氾濫が発生しております。

千曲川本流の水位が、市街地に流れる河川の水位より高く、自然流下しないため
通常開放している水門等を閉め、流れ込んだ河川の水を複数台でのポンプ等に
より排水処理を行うのですが、流れ込む水量の方が多いことにより、水が徐々に
溜まり、引きにくい状況となったものです。

内水の「排水」能力が雨水等による河川水位の増加に対応できなかったという
説明のほうがわかりやすいかもしれません。

以上となります。
よろしくお願いいたします。』

↑ 真面目な担当者さんの「まだ対外的な情報操作・統制がなされていない時のすなおな現状認識がよく表れている文章」となります。

そうして「流れ込む水量の方が多いことにより、水が徐々に溜まり、引きにくい状況となったものです。」という所はもちろん「(市内に降った雨水と皿川右岸堤防決壊場所からの氾濫水がポンプ場貯水池に)流れ込む水量の方が(城山の雨水排水ポンプ場の3台の排水ポンプによる千曲川への排水量よりも)多いことにより、(飯山市内に)水が徐々に溜まり、(その水が増え続け、現在でも市内に氾濫した水が)引きにくい状況となったものです。」と言っておられるのですね。

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台風19号 飯山水害の検証報告・一覧