シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その16・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-01-02 15:35:12 | 日記

皿川堤防にあった弱点

皿川堤防には2つの弱点があった。
しかしその存在を飯山市も河川事務所も知らなかった。

1、皿川右岸堤防と飯山線との接続部分にその弱点はありました。

まずは航空写真で見てみましょう。

画面左から右に流れているのが皿川です。
上流から見て右側が右岸堤防になります。
ちなみに「高水福祉会」とかかれた場所の皿川に面した道から左岸には越水が始まりました。: https://archive.fo/us8rz   

さて飯山線と右岸堤防の接続部分を拡大していきますとこうなります。
飯山線と右岸堤防の接続部分   

右岸堤防上面の白く見えている所は「道」になっていますが、接続部分のまえ6mほどは「道」ではなく3本のポールで「通行止め」とされている写真では草がぼうぼうと生えている部分となります。https://archive.fo/Yi6dy
その部分を横から見るとこうなります。     

皿川右岸堤防は2段構造になっており、一段目はほぼ垂直の法面構造のブロック積み、二段目は斜面を違う種類のブロックで覆った構造が基本です。
その有様は画面左がわ、草でおおわれていない部分でよく確認できます。https://archive.fo/dEijB

この構造が飯山線との接続部6mほど前まで続いており、そこで2段目の「法面ブロック構造」は終わります。https://archive.fo/oOQmS
それではそのあと飯山線の所までどうなっていたか?https://archive.fo/j2Kbo

そこは単に土を固めただけの、「耐水性のない法面構造」でした。
その状況は堤防が決壊した後の写真で一部確認できます。
http://archive.md/93ysb

さてそうでありますから、水は堤防の一番弱い部分を破壊したのです。
そうしてこれは自然の法則に従った「当たり前の事」でありました。

そうしてその様な事を理解した長野県は次のようにこの部分を改善、修復し「法面の耐水性」を向上させました。
堤防修復後の状況
http://archive.md/DILHv

ちなみに「皿川管理は長野県」とされており、長野県は当然この皿川堤防が持つ弱点の事はしっていました。
しかし残念な事には今回の水害が起きる前に、今回の様な改修は行われていませんでした。

その事を含めて、なぜこの部分が弱点を持つ構造のままで数十年前に行われたであろう前回の堤防の改修作業が終わりとされたのか、長野県には説明を求めたいと思います。

2、もう一つの弱点
さてもう一度この写真に戻りましょう。
堤防修復後の状況

堤防の高さが左側から右側、飯山線の線路に近づくにつれて低くなっていくのが確認できます。
さて何故このような「堤防の高さを低くするような構造」が必要なのでしょうか?

これではまるで「飯山線との接続部分から水が外に漏れやすくしている」としか見えません。
そうして実際に今回もこの部分から最初に水は外にあふれたのでした。

そうしてこうなりました。
右岸堤防決壊の状況
http://archive.md/KCeME

・皿川決壊現場(10/13 午前 6 時) : https://archive.fo/gIso6  :  流れ出す泥水が決壊場所でJR線路側に流れ出し、線路下の土台を削り込んでいる写真。泥水はその反動で反時計回りに渦を巻きながら線路の反対側にあたる堤防の土を丸く削り取っている。

・その場所で少し左側を見る : https://archive.fo/mWE0a :左側から線路方向に向かって泥水が勢いよく流れ込んでいるのがよく分かる。


まずは一番低い場所から水は外にあふれ出します。
そうしてその部分は単に土を固めただけの構造ですから、水が流れることによりどんどんと削り取られていきます。(流水による堤防の洗掘現象)

その結果ついには堤防のその部分は水圧に耐えられなくなり一気に崩壊します。(堤防の決壊)
そしてその時刻が4時15分でした。
(飯山市発表よりー>◎皿川 4時15分頃 左岸堤内地の水位が低下、右岸堤内地の水位が上昇したため、この時に、決壊したと思われる。)

さてそれではどうしてこのような「低い部分が必要」だったのでしょうか?
じつはこの部分は飯山線の線路部分に降った雨水を線路外に排出するための排水路になっていたのです。

その様にしなければ線路の土台部分を作っている盛土が水で侵食され、その上にのっている砕石部分にゆがみや段差ができ、ひいてはレールにそれがつたわり列車が脱線する、とそういう事になるからです。
したがって線路の砕石層より高くした状態では堤防は線路に接続できないのです。

さてその結果はJR線路側の砕石と土台が左右で線路2本分、(=合計で4本)ほど削り取られました。

その状況では線路は空中に浮いたままでした。

・(10/13 午前9時44分 )の写真 : https://archive.fo/COn7j :右岸堤防のJR線路に向かって低くなり始める手前に通行禁止のポールが4本、たっているのが分かる。決壊場所にももちろんこのポールはあったが、流されてなくなっている。

・空中に浮いた線路

https://archive.md/zFEAI

・同上 ブロック投入後 別角度から

https://archive.md/93ysb 

その空中に浮いた線路を取り去った後の画像はこうなります。

https://archive.md/L6Cen

画像左側に移っているのが応急的に決壊場所に入れられたコンクリブロックですが、その位置よりもずうっと後ろまで線路の土台が削り取られているのが分かります。

さてその様に皿川樋門側からJR線路側に堤防の幅を超えてその後ろまで線路の土台を削り取るほどの大量の泥水が何故、押し寄せる事ができたのでしょうか?

その大量の泥水の供給源はどこですか?

この疑問は本当に今回の水害が人災である事をよく示しています。

 

そうしてJRによる復旧作業が始まりました。

飯山線の土手、レールの復旧作業
http://archive.md/x00e2
線路の上も動ける珍しいトラックと重機が写っています。
新しい土と砂利が投入され、新しい(?)レールと枕木(これは新品でした)がすえつけられます。

皿川堤防部分の復旧作業
http://archive.md/C331M
飯山線の修復が終わりましたので、次は堤防の修復です。
まずは左側の皿川堤防の高さより約70センチほど低い所まで土をいれて固めます。

その寸法は線路復旧の写真で示した投入された砂利が作る厚さに相当するものと思われます。
そうして完成形はこうなります。
堤防修復後の状況 : 現状完成形 <--2020年3月25日現在

さて皿川右岸堤防のこの部分の標高は地図から317.7mほどになっています。
そこから70センチ低いこの飯山線の排水路部分の標高は317.0mとなり、左岸堤防道路の一番低い場所の標高317.5mよりもこちらの方が低い事になります。(注記:追伸その2

そうでありますから、堤防左岸での越水が始まった時刻2時15分よりも早い時間帯に右岸のこの部分からはすでに越水が始まっていた、という事になります。

以上、述べてきたような事は飯山市は知らない様です。
「皿川と皿川堤防の管理は長野県」としているからです。

そうして事実、飯山市のHPにのっている「飯山市地域防災計画」の「第2編 風水害対策編」に載っている「重要水防箇所」には皿川堤防のこの部分についての記述がありません。(注2
「第2編 風水害対策編」
https://www.city.iiyama.nagano.jp/assets/files/kikikanri/tiikibousaikeikaku/02.pdf

そうであれば飯山市はこの部分を巡回監視することもなく、消防団が水防工作をする対象とも認識していないという事になります。
しかしながら、事実といえば「このような危険個所は重点監視対象」とすべきであり、「越水が確認されたらすぐさま水防工作を行う対象」とすべきであります。

そのようにできていなかった事が、「皿川と皿川堤防は県の管理」として県に責任を放り投げていた事が、今回の水害を招いた遠因になっております。

そのような態度で飯山市民の安全が守れるはずがありません。
そうして事実、守れませんでした。


さらに申し上げれば、河川事務所も皿川堤防の一番低い部分の高さを知らず、ただ単に「千曲川の水位が高くなり水が皿川に逆流しそうになったら樋門を閉める」という、それだけの条件で皿川樋門のゲートを下すタイミングを決めています。
そのような「樋門操作マニュアル」を作って飯山市に配布し「これで良し」としています。

しかしながら、その様な「実際のそれぞれの樋門が設置された場所にある固有の条件を考慮していないマニュアル」では適切な樋門操作のタイミングが決められるはずはありません。(注1)
そうしてまた、「皿川樋門は国の、河川事務所の管理である」としてそこに一歩も立ち入ろうとしない、「どのような条件で樋門が閉められ、そうしてまた開けられるのか」を知ろうともしない飯山市の態度もまた今回の水害を招いた遠因になっております。


注1
皿川樋門の場合、バックウオーターはある水位以上になると発生します。
そうしてそうなってしまったらどれほど待っても千曲川より皿川の水位は低くはならず、したがって「千曲川の水位が高くなり水が皿川に逆流しそうになったら樋門を閉める」という条件が満たされる事はないのです。

つまり「当初計画が樋門を閉める」というプランになっていたとしても「国が定めているマニュアルに従った場合は今回の台風19号では適切なタイミングで皿川樋門を閉める事は出来なかった」という事になります。

注2:本記事投稿時には記述がありませんでしたが、その後の改訂によって記述が追加された模様です。(2023/9追記

追伸
皿川堤防に作られた飯山線の線路の為の排水路構造を知らなくとも、千曲川本堤防の高さより皿川堤防の高さが低い事は周知の事であり、その値も地図で調べれば右岸で1.7m、左岸で2.0mほどにもなるという事はすぐにわかる事であります。
したがって、「皿川樋門を開いたままで台風の襲来を待つ」などという判断が出てくることがそもそも「おかしな事」、「常識はずれの事」なのです。

そうしてまた、皿川堤防の上記で述べたような弱点を承知していれば、巡回によってその部分からの越水の確認は住民の方からの連絡をまつ事もなかったかと思われます。
あるいは住民の方からの連絡が早かったとしても、すぐさま「あの箇所からすでに越水しているなあ」と言う判断が出来、すぐさま消防団に対して「水防工作の指示」ができたでありましょう。

しかしながら事実は「右岸堤防のどこで越水しているか」も知る事はなく、そうしてまた「皿川の水位が堤防決壊によって低下」しても「どの場所が決壊したのか?」「そもそも決壊したのかどうか」すら判断できていないのでした。

以下飯山市報告より引用
『◎皿川 4時15分頃 左岸堤内地の水位が低下、右岸堤内地の水位が上昇したため、この時に、決壊したと思われる。
(但し、13日の当日は、越水か決壊か不明であった。)』

さてここで一応市長の言い訳を見ておきましょう。
・市長の言い訳 :北信ローカル記事
『一級河川(である皿川)の場合は水位計がなく、状況がわからない。』

・皿川にある水位計(水位標)

さて市長さん、これは一体何でしょう?
飯山水位観測所にある立派な水位計と同じ水位計ですよ、これは。

『特に今回は水が増えたのが真夜中だったので(昼間であれば目視で状況は分かるが)わかりにくかった』そうです。

これは市長さん自らが「今回決壊した場所については重要水防箇所に指定していなかった」と認めている発言となります。
従いまして「その箇所についての事前情報がないためにいったいそこで何が起こっていたのか、まったく分かりませんでした。」と自白されている訳ですね。

そうして「夜が暗いのがいけないのだ」と夜の暗さのせいにされています。
さてそのような表明は「いさぎよい自白」というよりは水防の最高責任者としての市長の発言としては「本当に自覚が足りない、困ったものである」様に見えてしまいます。

さてこの程度の現場把握力しか飯山市にはありませんから、
『5:00 頃 皿川の越水箇所への土嚢積みを指示。』
と言うように、「左岸で越水した」と言う報告を2時15分に受けながら5時ごろまで皿川堤防に対しては「何の対策の指示も出せていない」という「間の抜けた事」をやっております。

そうして「4時15分に堤防がすでに破壊されています」から、5時ころ出された 『皿川の越水箇所への土嚢積み』は意味をなさず
『6:00 北信建設事務所 皿川越水状況調査で、越水が多く応急工事ができないと判断し、その後、市に連絡あり。』
という結果に終わっています。

しかしながらこのような「無様な対応しかできなかった飯山市の自己評価は」といいますれば「飯山市はできる事はやったので、その対応にミスはなかった」と言うものであります。

読者の皆様方はどのように思われるでしょうか、こうした飯山市の自己評価については。
当方の感想としましてははっきり言って「開いた口がふさがらない状態」なのであります。

追伸その2:2021/6/21:右岸堤防のJR線路接続部の一番低い場所の標高の現在の値(堤防の上記修復が終わった状態):危機管理水位計を設定した長野県測定によると317.12mと公表されています。

飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧

https://archive.md/xV88z