「城山の雨水排水ポンプ場は能力不足」の2

2021-08-10 10:54:37 | 日記

前ページの・「城山の雨水排水ポンプ場は能力不足」の1 では表面雨量指数を使った説明方法をとっており、この方法にあまり慣れていない方には違和感があったかと思います。

それでここでは従来から使われている降水量ではどうだったのか、振り返っておく事にします。

気象庁のデータベースからアメダス飯山観測所の情報を以下に示します。

・2019年10月12日 : https://archive.fo/000K8

・2019年10月13日 : https://archive.fo/fr1D7

降水量の状況を確認するならば、12日の17時に1時間降水量10ミリがピークとなっています。そしてその後も1時間当たり6ミリ程度を限度に13日の4時頃まで雨は降り続きますが、それ以降は降水量は順次減少し10時には雨が止んだ、という記録になっています。

それで市内に降った雨が雨水排水ポンプ場に雨水下水路を通じて到達するのは30分もあれば十分でありましょう。

そのような状況の時に何故13日の1時50分に3台目の排水ポンプを稼働させなくてはならなかったのか、というのがそもそもの問いの始まりでした。

雨水排水ポンプ場の内水ゲートを降ろしたのが「・樋門操作記録2(飯山市公開) : https://archive.fo/PeSqm 」より20時45分であり、その後1号及び2号排水ポンプを20時50分と21時00分に稼働させています。(注1

それで21時の時点での千曲川の水位は4.80mであって、この水位の時にはポンプ場貯水池の水位は1.3m程であった。ちなみに貯水池の深さは3.5mほどであればその時点ではあふれ出すまでには2.2m程の余裕があった。(注2

さて、ピーク降水量が17時で遅くともその水は18時にはポンプ場貯水池には到達していた。そうなると18時頃が貯水池水位のピークであった事になります。

そのピーク水位から3時間後の21時に内水ゲートを降ろして排水ポンプを2台、動かし始めた。貯水池に流れ込む雨水の量はピークを越えていますからそれまでポンプ場に流れ込んでいた水量よりは増える事はない。そしてその時の貯水池の水位は1.3m程。その様な状況で13日の1時50分を迎えた訳です。

さあそれで「どうしてそのタイミングで3台目の排水ポンプを動かさねばならなかったのか?」という事になります。

当初我々は「それはどこからかは知らないが雨水のほかに排水ポンプが排除しなくてはならない水が貯水池に流れ込んできたためだ」と推測しました。(注3)これは市長の「1台あたり1分間に110トンの排水能力をもつ排水ポンプだ」という主張を鵜呑みにした結果でした。

しかしながら市長のこの発言・主張は千曲川の水位上昇の影響を排水ポンプが受ける事を無視した「お話にならない主張だった」のです

事実はと言えば「1時50分のタイミングでは2台の排水ポンプが動いていたにも関わらず貯水池の水位は上昇し続け、あふれ出すまであと50センチを残すほどにまでなっていた」のです。

つまりポンプ場の排水ポンプは千曲川の水位上昇の影響を受けて思うようには水を排出できていなかった、そういう訳で13日の21時のタイミングでは満水まで2.2m程の余裕があった貯水池水位は上昇を続け、13日の2時頃には残り50センチの余裕しかない状況になっていました。(注4

それでポンプ場の担当者は3台目の排水ポンプの起動スイッチを入れたのでした。

さてそれで1時50分に3台目も動きだしたのですが貯水池の水位はそれでも上昇を続けました。(注5

そうして3時には仲町通り、城見橋の東側の栄川左岸の歩道付近でも浸水が確認されています。(注6

また4時には『上町区堤防沿いのAさん
「13日4時に起きたら30㎝も浸水していてビックリした。慌てて車をNTTの駐車場に避難し、近所へも知らせた」』という報告が上がっています。(注6

そうして5時には「1-2、5時時点でポンプ場貯水池オーバーフロー状態(栄川の城見橋で浸水5センチ)」となったのでした。(注7

あるいは福寿町Eさん(注6
「5時頃に近所の人の知らせで浸水に気づき、お客様から依頼された書類や、業務用のコンピュータを2階にあげた後、水の中で車を避難した。水の中を走ったこともあり、結果的には6台の車を廃車せざるを得なかった」

それで「5:40 城山雨水排水ポンプ場のポンプ室内に浸水が始まるが、土嚢等で防止」(注8)5時40分にはポンプ場のあたりでは貯水池から水があふれだしその周辺を30センチから40センチの水位で満たしていました。

それで6時40分には「1-1、ポンプ場が動いていても6時40分時点で市役所(福寿町)地点、40センチ浸水 」でした。(注9

さて以上みてきました様に、13日の3時までの状況は「排水ポンプを3台動かしたにもかかわらずポンプ場貯水池の水位は市街地に降った雨水だけで上昇し続けた」という事がわかります。

つまり「城山の雨水排水ポンプ場の排水能力は不足していた」のです。

ちなみに3時以降はこの状況に加えて皿川からの氾濫水がポンプ場に到達しはじめますから、ポンプ場の貯水池は簡単にオーバーフローしたのでした。


こうして明らかになった様に「ポンプ場のポンプが空回りしている事に気が付かない対策本部」は「排出できていない雨水と皿川からの氾濫水を排出できているもの」と思い込むという「致命的な判断ミスをしていた」のでした。

その為に「皿川の氾濫を確認」しても「空回りするばかりのポンプ場」を頼りにして「すみやかに市内全域に対する警報を出す」という「とても基本的で大切な事をしなかった」のであります。

そうしてまた付け加えますれば、飯山市が残念そうに言う「ポンプ場さえ浸水で停止せずに動いていたならば、、、」という主張は全く意味をなさない、という事も分かるのです。

何となれば千曲川の水位が9.6m以上になるとポンプ場からは千曲川に水が排出できなくなり、唯ポンプが空回りを続けるだけだからです。そうであれば13日の3時以降12時過ぎまではポンプがいくら回転をしていてもポンプ場からは水は千曲川には排出されなかったでしょう。(注10

つまり「市内の浸水状況はポンプ場のポンプが回転していようが止まっていようが13日の3時から12時までは全く同じであった」という事になるのです。

従いまして「ポンプ場の耐水化だけ」では全く意味をなさず「ポンプそのもののオーバーホール」、場合によっては「ポンプの新規差し替えが必要になる」という事になります。

 

注1:・令和元年台風19号関連災害経過報告【第2報】 3ページ目、「7.樋門、ポンプ等」 を参照願います。

注2:・水位データ詳細: http://archive.fo/lMbFk

ポンプ場貯水池の水位については・その26-2・ポンプ場周りのその他の情報について の「追記2(2020/10/21):栄川樋管の千曲川出口底の標高に関連して。」を参照願います。

注3:この時点では皿川からの氾濫水はポンプ場には到達していない、2時の時点では「皿川右岸堤防から越水がはじまったかな」というタイミングです。

注4:・「皿川氾濫・決壊に対する避難勧告発令」の3 の「1-3、25m道路アンダーパス北側エリア(@福寿町)は2時過ぎには浸水が始まっていた」を参照願います。

注5:25m道路アンダーパスの北側では2時以降も浸水が続き(近所の方の証言有)、つまりは「3台目のポンプが稼働したにも関わらず水位は低下する事はなかった。」という事になります。

そうしてまた3時までは皿川からの氾濫水はポンプ場には到達してはいなかったと推測されますので(この部分の推測は市長もその様に主張しており、珍しい事に唯一市長の発言の中で同意できる部分となります。)、したがって「雨水を排水するのに3台排水ポンプを回しても足りなかった」という結論になります。

注6https://archive.fo/114f5 :この件、左記の記事を参照願います。

『田町のBさん
「朝3時ごろには栄川が仲町通りの辺で溢れ始めていた」』

場所については : https://archive.fo/vBpse を確認願います。十字クロスで示された場所が言及されている所であり、その場所の標高値が314.2mである事が左下に示されています。

上町地区のAさんは25m道路下のアンダーパスの南側にお住まいであり、そのありの場所はここになります。: https://archive.fo/FxhKZ :十字クロスで示された場所が言及されている所であり、その場所の標高値が313.9mである事が左下に示されています。

注7:・「皿川氾濫・決壊に対する避難勧告発令」の3 の「1-2、5時時点でポンプ場貯水池オーバーフロー状態(栄川の城見橋で浸水5センチ)」を参照願います。

注8:・令和元年台風19号関連災害経過報告【第2報】 の最後にある時系列表を参照願います。

注9:・「皿川氾濫・決壊に対する避難勧告発令」の3 の「1-1、ポンプ場が動いていても6時40分時点で市役所(福寿町)地点、40センチ浸水 」を参照願います。

注10:・「城山の雨水排水ポンプ場は能力不足」の1 の「2、ポンプ場に流入する雨水が増えてもいないのに、何故3台目のポンプを動かす必要があったのか?」を参照願います。bbb


追記真面目な市役所担当者さんの「情報統制前の回答」について

・飯山市のHP :令和元年10月 台風19号に関する被害状況等
(令和元年10月13日 10:00現在): https://archive.fo/K9Uxa :から引用

『令和元年10月 台風19号に関する被害状況等
(令和元年10月13日 10:00現在)

避難に関する情報
・・・
10月13日
・・・
5:34 瑞穂地区の戸那子区全域、富田区の一部、中組区の一部、関沢区の一部に避難勧告発令
6:37 内水の能力を上回る増水により、飯山地区の福寿町区、本町区、肴町区、上町区、新町区、鉄砲町区、奈良沢区、栄町区、県町区と秋津地区の北畑区に避難勧告発令
・・・』

の「内水の能力を上回る増水により、」の部分の意味がよく分からなかったので、市役所に質問したのでした。(質問の送信はHPの問い合わせからです。)そうしたら当日夕刻に真面目な担当者から以下の様な回答が返ってきました。

飯山市よりの回答メール 13日 18時04分時点  

『お問い合わせいただきました件について、ご説明いたします。

「内水の能力を上回る増水により、・・・」についてですが、以下のとおりとなります。

本日未明より、市街地の広範囲に(千曲川本流ではない)河川からの流水等に
よる内水氾濫が発生しております。

千曲川本流の水位が、市街地に流れる河川の水位より高く、自然流下しないため
通常開放している水門等を閉め、流れ込んだ河川の水を複数台でのポンプ等に
より排水処理を行うのですが、流れ込む水量の方が多いことにより、水が徐々に
溜まり、引きにくい状況となったものです。

内水の「排水」能力が雨水等による河川水位の増加に対応できなかったという
説明のほうがわかりやすいかもしれません。

以上となります。
よろしくお願いいたします。』

↑ 真面目な担当者さんの「まだ対外的な情報操作・統制がなされていない時のすなおな現状認識がよく表れている文章」となります。

そうして「流れ込む水量の方が多いことにより、水が徐々に溜まり、引きにくい状況となったものです。」という所はもちろん「(市内に降った雨水と皿川右岸堤防決壊場所からの氾濫水がポンプ場貯水池に)流れ込む水量の方が(城山の雨水排水ポンプ場の3台の排水ポンプによる千曲川への排水量よりも)多いことにより、(飯山市内に)水が徐々に溜まり、(その水が増え続け、現在でも市内に氾濫した水が)引きにくい状況となったものです。」と言っておられるのですね。

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台風19号 飯山水害の検証報告・一覧

 

 


「城山の雨水排水ポンプ場は能力不足」の1

2021-08-08 14:03:27 | 日記

「その26-1」では以下の様に「栄川樋管からの逆流水がないと説明できない」という結論になっていました。

・その26-1・城山雨水排水ポンプ場のポンプ稼働状況と浸水深さについて検証した。
3号機を動かす必要がないにも関わらず動かしている。-->栄川樋管からの逆流が疑われる。
皿川からの氾濫水だけでは13日7時15分時点での飯山市の浸水状況は到底説明できない事がわかった。

しかしながらこれは市長の説明にミスリードされた結果の結論でした。

それで市長が市議会答弁で答えた内容は以下の通りです。(注1

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 ・飯山市  令和 1年 12月 定例会(第370回)  12月13日-04号 : https://archive.fo/z1jCi

◆7番(市川久芳) 
 市長さん。6時40分まで旧市街地に避難勧告が実際出せなかったわけですよね。それが週刊誌にも大きく載っているわけです。これはやっぱり行政に大きな落ち度があると思います。そういう中で、この間の記者会見だと、マニュアルが無かったというのはとても理由にはならない。どうして出さなかったか、詳しく説明してください。

◎市長(足立正則) 
 避難勧告につきまして、時系列に経過を含めて説明をしていきたいというふうに思いますので、お願いします。

・・・

そして、このときには、城山の雨水排水ポンプも3台フルで動いておりました。
当時の状況では、それぞれ1分間に110トンの能力のあるポンプが動いていたわけでございますけれども、このうち市街地の部分の内水は2台で足りるというような状況でございます。
したがって、皿川からあふれた水につきましても、城山の雨水排水ポンプが排出をしていたということでございます。

これは推測でございますが、皿川の越流が流入してきたと思われるのは、午前3時ごろでございます。
そして、皿川の水がさらに増えてきまして、城山の排水ポンプ場が停止となって動かなくなってしまったのが7時ということでございまして、この間約4時間ちょっとでございますが、この間に約7万6,000トンの水を排出したということでございます。・・・

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「市街地の部分の内水は2台で足りる状況。3時には皿川からの氾濫水がポンプ場に届いていた、そうしてポンプが異常停止する7時までの間に毎分330トンの水を千曲川に排出できていた。」という説明になっています。

さてこの市長の主張、説明は成立していたのでしょうか?

「市街地の部分の内水は2台で足りる状況」は成立していたのか?

・その26-1・城山雨水排水ポンプ場 の第一章によれば

上記気象庁の表面雨量指数と稼働ポンプ台数の関係でいえば
黄色エリア出現~継続状態ーー>排水ポンプ1台稼働
赤色エリア出現~継続状態ーー>排水ポンプ2台稼働
で十分の様にみえます。
従いまして13日1時50分では本来は
『1:50 城山雨水排水ポンプ場 3基にて稼働開始。』
ではなく
「1:50 城山雨水排水ポンプ場 2基ーー>1基にて稼働」
と言うように記述されるべきでありましょう。
気象庁はそのように言っているのであります。
そこには「排水ポンプを3台稼働してまで排水する必要のある雨水はない」のでありますから。という結論になっています。

つまり「本来であれば排水ポンプ2台稼働で市内に降った雨水の処理はできたはずである」という結論であり、これは一見すると市長の主張である「市街地の部分の内水は2台で足りるというような状況でございます。」を支持している様に見えます。

しかしながら実際には『1:50 城山雨水排水ポンプ場 3基にて稼働開始。』としなくてはならなかった。

逆に本来のポンプ性能が出ていたとしたらこの時には『1:50 城山雨水排水ポンプ場 3基にて稼働開始。』ではなくて「1:50 城山雨水排水ポンプ場 2基ーー>1基にて稼働」と言うように記述されたでありましょう。

さて何故そうできなかったのか?

ポンプ場の排水ポンプの性能が出ていなかったから」であります。

その為に本来であれば一台稼働で十分であったはずのポンプ稼働台数が三台稼働となってしまっていたのです。

そであれば13日の1時50分時点で市長の主張である「市街地の部分の内水は2台で足りるというような状況でございます。」は成立しておらず破たんしていた、と言うのが事実です。

さらにいえば「三台稼働してもその時にポンプ場に流れ込んできていた雨水を千曲川に排出するには十分ではなく、雨水はポンプ場の貯水池に溜まり続け、貯水池の水位は上昇する一方だった」と言うのが事実となります。(注2

そうであれば市長が言う「皿川からあふれた水につきましても、城山の雨水排水ポンプが排出をしていたということでございます。」は成立していない、と言うのが事実です。

ポンプ場に流入する雨水が増えてもいないのに、何故3台目のポンプを動かす必要があったのか?

実は1時50分の時点ではそれまでよりもポンプ場に流入する雨水の量は減っていました。にもかかわらずポンプ場貯水池の水位は上昇を続け、つまりは2台の排水ポンプを稼働させただけでは排水量が足りず、したがってポンプ場の担当者は3台目のポンプを稼働させることになったのです。

ほほう、何故そんな事になるのですか?

千曲川の水位が上昇した為です。

13日の2時時点の千曲川水位は8.86m。標高換算で315.96m≒316mです。

他方でポンプ場≒貯水池ふちの標高は314.7m。

つまり2時時点で千曲川水位はポンプ場標高よりも1.3m程高かったのです。

そうして、この状況では二台の排水ポンプを動かしても排出量が足りなかった、という事になります。

言い換えますと「二台のポンプでは吐出漕の水位を1.3m程度までしか持ち上げられなかった」という事です。(注3

それで三台目のポンプを動かしたのですね。

しかしながら「三台のポンプを動かしてもポンプ場の吐出漕の水位を1.3m+0.7m程度までしか上昇させることができなかった」のです。

その時の吐出漕水位2mという値は千曲川水位に換算しますと9.6m程であり、13日の3時の時点での千曲川水位が9.58mでしたから、3時以降はポンプ場の排水ポンプのエンジンがいくら回転していてもポンプ場から千曲川には水は排出されなかった、という事になります。(注3

さてそうなりますと市長が言う所の

「これは推測でございますが、皿川の越流が流入してきたと思われるのは、午前3時ごろでございます。
そして、皿川の水がさらに増えてきまして、城山の排水ポンプ場が停止となって動かなくなってしまったのが7時ということでございまして、この間約4時間ちょっとでございますが、この間に約7万6,000トンの水を排出したということでございます。」

については、「3時以降はポンプ場から千曲川へは排出量ゼロ」でありますから、「約7万6,000トンの水を排出した」というのは全くの事実誤認、でたらめという事になります。

市長が言う「雨水排水ポンプ場のポンプは1分間に110トンの能力がある」というのはウソなのか?

ポンプ場の吐出漕の高さは4.5m程。貯水池の水位が満水状態であればポンプは水をその位置から4.5m上昇させる能力があれば吐出漕のトップまで水を満たすことが出来ます。

つまりは今回台風19号の折、千曲川の最高水位11.1mであったのですが、その時でさえ吐出漕の水位は千曲川よりも0.9m高くでき、したがってポンプ場に集まってきた水を千曲川に排出できていたのです。

しかしながら、貯水池を満水にしてポンプを運転する事はまずないのであれば、たとえば「満水状態より1.5m程下の水位で運転する」とします。そうなるとポンプは水を1.5m+4.5m=6m程持ち上げる力が必要になります。

ちなみにこのポンプが水を持ち上げる事が出来る高さを全揚程といいます。そうであればこの場合は「全揚程が6mのポンプが必要」という事です。そうして、その程度の性能を持つポンプが雨水排水用ポンプとしてメーカーによって準備されているのです。(注4

さて雨水排水ポンプ場のポンプは横軸型ではありますが、基本的な性能、仕様は縦軸型と同じでありましょう。そうであればしっかりとメンテナンスされていればカタログスペックの「全揚程は6mで毎分110トンの排出量」というのは可能であったはずです。

しかしながら実際の飯山のポンプはメンテナンス不十分であった為「全揚程は2m~2.5m程度でしかなかった」という事であり、これは飯山市の「水防設備にはお金はかけない」と言うスタンスの結果であり、飯山市の不作為の結果であります。

、排水ポンプが稼働している時に「どうやって実際に水が排出されている事」を確かめるのか?

排水ポンプ車の場合は排水側のホースから水が千曲川に流れ出しているのを目で見て確認する事が可能です。

このタイプの「堤防天端をこえて水を千曲川に排出するポンプ」は実際に正常にポンプが作動している事を簡単に目視確認できます。そうして、ポンプ場でいえば「広井川排水ポンプ場のポンプ」がこのタイプのポンプになっています。(注5

それでこのタイプの排水の仕方では常に水を堤防天端まで持ち上げる為、千曲川の水位に関係なく安定して水を排出する事が可能となっています。

それに対して吐出漕を使って水を排水するタイプの排水機場・ポンプ場の場合は千曲川の水位が上昇するにつれて水が排出されにくくなります。

それに加えて千曲川の水位が排水口となる樋門・樋管の出口高さよりも低い場合は堤防の上から目視確認が可能ですが、千曲川水位が上昇して排水出口高さを超えてしまうと目視では本当に水が排水されているのかどうか確認が出来なくなります。

実際に13日の2時の時点で千曲川水位は8.86m。標高換算で315.96m≒316mでした。他方でポンプ場≒貯水池ふちの標高は314.7mであって、この時には栄川樋管の出口は水の下にかくれてしまい、本当に水がポンプ場側から千曲川に排出されていたかどうか、目視では確認できなくなっていました。

しかしながらポンプと名前が付くのですからポンプにはそれぞれ流量計が付いているはずです。そうであればポンプ場担当者はそれを見る事で「実際にどれほどの水がポンプ場側から千曲川に排出できていたか」確認していたものと思われます。

こうしてポンプ場の担当者は「3時にはポンプ場のポンプは回っていたものの、ほとんど排水できていなかった」という事を確認していました。しかしながらその事実は決して公表される事はありません。

そうして市長は臆面もなく「これは推測でございますが、皿川の越流が流入してきたと思われるのは、午前3時ごろでございます。
そして、皿川の水がさらに増えてきまして、城山の排水ポンプ場が停止となって動かなくなってしまったのが7時ということでございまして、この間約4時間ちょっとでございますが、この間に約7万6,000トンの水を排出したということでございます。と言うのでした。

ちなみに「目視確認ができないタイプのもの」としては雨水排水ポンプ場とおだての排水機場がこのタイプの排水設備となります。

 

注1:・参考資料 補足・市長は何と言ったか :・今回水害に対する飯山市長の弁解、言いのがれ、正当化、謝罪なし、反省なしの「とんでも発言集」参照の事。

注2:・「皿川氾濫・決壊に対する避難勧告発令」の3 :左記の「1-3、25m道路アンダーパス北側エリア(@福寿町)は2時過ぎには浸水が始まっていた」を参照願います。

2時の時点でポンプ場貯水池の水位はあふれ出す高さにあと50センチまで上昇していました。そうして市長の主張する所によれば「皿川の越流が(引用注:ポンプ場に)流入してきたと思われるのは、午前3時ごろでございます。」であれば、2時から3時までの間はポンプ場に流入していたのは市街地に降った雨水だけでした。

しかし「25m道路アンダーパス北側エリアの浸水」は2時以降も継続しており、その浸水深さは増えていった、と言うのが住民の方の証言であります。

そうであれば1時50分時点で3台の排水ポンプが稼働したにもかかわらず、3台合計の排水能力はそこに流れ込む雨水の量を千曲川に排出するには不十分であった、という事になります。

つまり「ポンプ場の貯水池の水位は順次、上昇していった」のでした。

これはつまり「もし皿川が越水・決壊して氾濫しなかった、としたらその時は市街地に降った雨水だけでポンプ場の貯水池は満水を越してオーバーフロー」となり、堤防沿いの場所は雨水による浸水被害をうけ、従って「ポンプ場の能力不足が誰の目にも明らかになっていた」という事を示しています。

しかしながら今回台風19号の折には皿川が氾濫したことによってポンプ場の能力不足が皿川からの氾濫水によって隠されてしまい、見えなくなってしまいました。

そうではありますが、皿川堤防が強化され、皿川が氾濫しなくなると次回の台風19号並みの台風襲来の折には今度はポンプ場の能力不足が誰の目にも明らかになる事になります。

注3:ポンプ場のポンプは吐出漕に一旦水を排出します。そうしてその吐出漕の水位と千曲川の水位の差分でポンプ場側から千曲川に水が排出される事になります。

そのために千曲川の水位が上昇するにつれてポンプ場側から千曲川への排水量は減る事になり、吐出漕水位と千曲川水位が同一になるとそこで排水量はゼロになります。

この事を説明した飯山市公開のイラストはこちらから入れます。:・中央排水区(城山雨水排水ポンプ場)のしくみ : https://archive.fo/db83r

ちなみにこれはイラストの中で説明されているポンプからポンプ場の壁を貫いて外に出て、そこから地下に潜りこみそこで水槽(吐出漕)と接続している太い(直径90センチ程度)吐出菅と吐出菅と地下でつながっている吐出漕の画像です。:吐出菅 https://archive.fo/T2ku7 :吐出菅(拡大) https://archive.fo/ZoWyM :吐出漕 https://archive.fo/OmoEq

但し上記イラストの中に一つ、事実と異なる絵があります。それは水槽(吐出漕)の高さです。イラストでは堤防よりも水槽の高さが高くなっていますが、現物は堤防の高さまでしか吐出漕の高さはありません。

つまり「堤防高さと同じくらいに千曲川水位が上がると、ポンプ場からは水は千曲川には排出できない」のです。そうしてこれは「設計上の制約・しばり」となっています。

注4:雨水排水設備 : https://archive.fo/qYWev

縦軸型ポンプの紹介記事になっていますが、基本的な性能は横軸型の要求仕様・要求性能を引き継いでいるものと思われます。

そうして下段に仕様が載っていますが、雨水排水用のポンプは吐出量毎分90トン~180トンで全揚程が6mが可能である、と記されています。

なお動画にて「柳原排水機場(長野市:千曲川)に導入された排水ポンプの試運転の状況」が紹介されています。その動画を見る場合は次のアドレスから入ってください。

https://www.tsurumipump.co.jp/projects/case/108.php

注5: https://archive.fo/NR6hy :左記の記事の写真によれば皿川の方に排水ポンプ車の給水ホース、千曲川の方には排水ホースを堤防をまたいで配置している事がわかる。

 https://archive.fo/jR65B : 広井川排水機場に設置されている排水ポンプ群とそれにつながっている9本の排水パイプ。これが堤防天端程の高さで堤防をくぐって千曲川側にある排出出口に通じている。(・広井川ポンプ場 排水管群 : https://archive.fo/SqmnF )ここの場合も堤防の上から水が千曲川側に排出されているかどうかは一目で確認できる。

ちなみに台風19号の折、熱心な市議会議員さんは12日午後9時すぎに運転を開始したポンプ場を訪れてポンプの状況を確認したのち中央橋から実際にポンプ場から栄川樋管を通じて水が排出されているのを目視確認されている。

それで午後9時での千曲川の水位は4.8mであり、これは河川敷に水が上がるかどうかと言う程度の水位であった。したがって栄川樋管からの水の排出を目視確認する事ができたのである。

しかしその確認行為は13日の3時の時点で、確かにポンプ場ではエンジンが回転しポンプは動いていたのでしょうが、その時にポンプ場から千曲川に水が排出されていた、という事の保証にはなっていないのである。

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台風19号 飯山水害の検証報告・一覧