シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その15・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-01-01 14:14:43 | 日記

さて、河川事務所からの回答や報告についての検証が終わりましたので次はいよいよ「二種類の泥水」について話をする事になります。
二種類の泥水、というのはもちろん「皿川の泥水」と「千曲川の泥水」の事であります。

そうして、当方が主張する様に「皿川樋門が開いていた」としたならばどこかの時点で千曲川の泥水が皿川に流れ込んできていた、そうしてその泥水は市街地へも流れ出していた、という事になります。
そう言う訳でその様な事が実際に起こっていたのかどうか、順を追って見ていきましょう。

まずは1時の皿川の状況です。
以下「その12」より引用。
『「ライブカメラが見れないから、1時頃見に行った時も護岸のブロックの上辺りまでの水位で流れてたよ」(皿川を見て育った僕ですから、皿川の水位から本流の水位を予測できます)

コメント:1時ころの皿川水位は「護岸のブロックの上辺りまでの水位で流れてたよ」位置。』
この時は順調に皿川の水は千曲川に流れ込んでいました。

2時の皿川の状況。
『「でさ、2時過ぎに見に行ったら満水でさ。消防団もポンプ車も居ないから、川は流れていると思ったんだ。お宮下が通れなかったから、(千曲川の)堤防から来て、暗くてよく見えなかったけど本流が増水してるようには見えなかったんだよね~」

コメント:2時ころの皿川水位は「ほぼ満水」。
したがって2時15分に左岸に、M建設前の道路に越水したのでした。』

この時には皿川の水は千曲川に流れている様にはみえず、そこに溜まりこんでいる様でした。
従って楽農家さんは「1時以降のどこかの時点で皿川樋門は閉められた」と判断することになり、プレス発表の時刻「1時44分に樋門は閉められた」を信用することになったのでした。

しかしながら皿川の水が千曲川に流れ込まない事を説明できるもう一つの事柄があります。
それは「バックウオーター現象」といわれるものです。

以下、2つほど参考記事を上げておきます。
・堤防決壊の8割、支流と本流の合流点に集中 台風19号
・【西日本豪雨】甚大被害の原因、「バックウオーター現象」か…専門家指摘

「バックウオーター現象」が起こりますとあたかも樋門が閉められたかのようになり、皿川側の水位が急激に上昇します。(注1)
そうしてこれが河川事務所が皿川水位を計算で求めた時に考慮しわすれた項目であり、そのために内水位の計算にミスが発生しました。

さてそういう訳でM建設前の道路から越水していったのは「皿川純正泥水」でした。
かわいい皿川の泥水の跡

10/13 11:32撮影
楽農家さん仕事場のガレージのうしろにあるゴミ捨て場の状況
水は一応引いたが残った泥はその程度。

10/13 8:42撮影
越水が駐車場をえぐった証し
左に写っているのは越水した道路。別に洗浄した訳でもないのにきれいだ。
そうして駐車場に残ってる泥水もかわいいものだ。

10/13 皿川上流から流れ着いた根っこ
越水した道路に泥が付着していない。
これが千曲川からの泥水との大きな差。

以上の写真は決して道路に、あるいは駐車場に残った泥を水で洗い落とした後ではないと思われます。
その様な時間はなかったのですから。
でも、我々の目からすると「驚くほどきれい」であります。
そうしてこれが皿川泥水の正体であります。

さて越水しながら皿川の水位は上昇しついには右岸堤防を決壊に追い込みます。
このとき飯山線踏切部分はぎりぎり冠水を免れました。(4時15分時点)

その部分の標高は地図から318.1mと分かります。
そうして右岸堤防の高さもほぼ318.1mであり、つまり「満水時には本当に右岸堤防もぎりぎりだった」という事がわかります。

M建設前の標高は317.5mでしたから、その部分では50センチを超えるほどの厚さで水の層が越水していた事になります。
そうして右岸堤防のその場所が決壊しますと、そこから皿川の水は市内に流れ出すことになり、皿川水位は一気に下がりました。

それでその時をもって皿川左岸越水は終わりを迎えたのでした。
『◎皿川 4時15分頃 左岸堤内地の水位が低下、右岸堤内地の水位が上昇したため、この時に、決壊したと思われる。』(飯山市プレス発表より引用)

さて決壊約2時間後の6時の皿川水位は「その13」で示した様に317.3mでした。
これを皿川水位標で計りますと8.6mとなります。

さてその時の千曲川水位はいくつだったでしょうか?
9.15mでした。

ふむ、皿川の水は「バックウオーター現象」で千曲川に流れ込みにくくなりますが、千曲川の水はそんなことはなく水位が低い方に流れていきます。
そう言う訳で朝6時には千曲川の水は皿川に逆流していた、という事がこれで分かります。

さてお宮下の道の一番低い標高は316.9mの様です。
ですから6時の皿川水位317.3mではその場所は浸水していた、という事になります。

お宮下の道の5時~6時ごろの浸水状況
ここに写っている泥水は主に千曲川の泥が主成分であり、皿川の泥成分はわずかであろう思われます。
ちなみに画像をクリックすると拡大でき、踏切あたりの人影が確認できます。

従ってこの泥水が引いた後、13日の午後に楽農家さん達が方付けなくてはならなかった状況はこうなります。
憎たらしい千曲川の泥水の跡

楽農家さんブログより引用
『13日午後
お宮下の市道を勝手に掃除
宮司さんの旦那さんが「やってくれ」って頼みに来たから
GARAGEの片付けを中断して出動
明日も9時から泥片付けするから
GARAGEの片付けは後回し』

13日だけでは終わりませんから14日も出動です。
翌日の作業(14日)
楽農家さんブログより引用
『昨日に続いて今朝から区民の有志20名で始まった道路の泥片付け
農家が多いからエンジンポンプが4台使って洗い流し作業も』

皿川の河床にもこの「憎たらしい千曲川の泥の相当に分厚い堆積物」が確認できます。
そうしてこの場所まで千曲川の泥水が上がってきていた、ということはこれより下流にある決壊場所には当然千曲川の泥水は上がってきており、その場所から市街地に流れ出していた、という事は明らかな事であります。

そうしてこの千曲川の泥水は飯山市内を泥で埋め尽くし、その泥は後日、多くの方の尽力により集められて川向こうの土の仮捨て場に捨てられました。
そうしてその量はといいますれば「25mプール二杯分」というのがある方の感想となります。

さて、「皿川樋門は開いていた」という事の証拠は以上で十分であるように思われます。

追伸
「皿川が氾濫した」という連絡を受けた飯山市および河川事務所はそれまでの予定を変更してその時に早急に皿川樋門を閉じるべきでした。
その様に樋門操作員に指示を出すべきでした。

その様に対応していれば皿川堤防が決壊しても千曲川の水が皿川に逆流することはなく、したがって飯山市内に千曲川の泥水が流出することもなかったし、市街地に流れ出した泥水の量も相当程度抑える事が出来たものと思われます。

しかしここ10年ほどは皿川樋門を閉めずに対応できていた為「今回も樋門はしめなくても良い」と言うように飯山市は判断し、そのような水防計画を立てました。
そうして「皿川が氾濫した」という連絡を受けてもまだその計画に固執した結果がこの大きな水害につながりました。


追伸2
それではいったいどうしたら良かったのか?
簡単な事です。

排水ポンプ車を事前配置しておいて、皿川の水位が所定の値に達したら皿川樋門をしめて排水ポンプ車で排水する。
これは内水氾濫をおこしてはいけない箇所での樋門操作の基本であります。

そしてそれは皿川でも従来は行われていたその基本にもどれば良いだけの話であります。


注1
皿川で今回発生した「バックウオーター現象」については13日の早朝時点では飯山市もそれを認識していました。
そうして以下の様な報告を県にしていました。

飯山市の当初の見解は
「氾濫の原因はバックウオーター現象による逆流の発生」
でした。

県の対策会議本部報告資料「元年10月13日(日)08時:00分現在」
https://www.pref.nagano.lg.jp/bosai/documents/dai4.pdf
(全41ページ中31ページに記載あり。下記に引用します。)(注2)

『・飯山市からの報告(10月13日) : https://archive.fo/pl709 :18:00現在バックウォーター(逆流)が発生〜飯山市下水道課からの報告
なお、令和元年10月13日18:00現在の「長野県災害対策本部の長野県環境部」が取りまとめた「ライフライン復旧の対応状況」の「市町村下水道施設等の対応」の飯山市からの報告には
〇飯山処理場 ポンプ施設の機能停止
①現状
 ・千曲川水位上昇によるバックウォーター(逆流)が発生。
 ・これにより、飯山処理場の有尾中継ポンプ場他マンホールポンプ施設3ヶ所が機能停止。
と報告され記載されています。
 ここにも、千曲川水位上昇によるバックウォーター(逆流)が発生。
と明記されています。』


今回の氾濫の原因が「バックウオーター現象によるもの」という表明は、そのまま「皿川樋門は開いていた」と言っている事と同じです。
何故ならば樋門が閉じられている場合は「バックウオーター現象による」とは表現しないからです。


樋門が開いており、しかしながら「バックウオーター現象による逆流の発生」により氾濫が発生したとこの時は飯山市は県にその様に伝えているのでした。
それがいつのまにか「皿川樋門を閉めたのが氾濫の原因」とされるようになりましたとさ。

追伸3
この記事で紹介した「2つの泥水の存在」と「その9」で紹介した「流出する泥水動画」、それを見ますと飯山線のレールがのっていた土手の部分が大幅に削り取られていくように水が流れ出している事が確認でき、これもまたこの時には千曲川からの逆流があった、という一つの証拠になります。
この2つが今のところは「樋門は閉められてはいなかった」という事を裏付ける大きな証拠になっています

それに対して「樋門を閉めた」と主張する側には単にそう主張するコトバがあるだけで、上記で述べたレベルの証拠でさえどこにも一切見当たらないのであります。
しかもそのコトバを裏付ける為に提出された「樋門操作記録」なるものはその時の皿川まわりの状況とは合致しない内容ばかりであり「実際に作業を行った記録」とはとても言えない「作文をしたとしか思えないしろもの」でありました。

追伸4
千曲川の水が皿川に逆流しJRの鉄橋を越えて上流に流れ込んでいる決定的な写真。
http://archive.fo/qCBmp
「その9」にはこの写真の詳細説明を書きました。
こうやって「お宮下にあたる皿川の場所」に流れ込んだ千曲川の泥水「お宮下の道」にも千曲川由来の泥を残したのでした。

注2:(2021/6/30):上記で引用しているのもの: https://archive.fo/pl709 :は13日18時現在の文章であり、・・・dai4.pdf では以下の文章になって言います。

『13日8:00現在:

飯山市
○飯山処理場 ポンプ施設の機能停止
①現状
・千曲川の水位上昇によるバックウオーター(逆流)が発生
・これにより、飯山処理場の有尾中継ポンプ場他、マンホールポンプ施設3か所が機能停止。
②対応
・市職員が状況を確認中。対策を検討中』

以上、補足しておきます。

 飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討・一覧