毎秒9000トン、流れてきていたらどうなっていたか?

2021-06-09 12:24:58 | 日記

飯山観測所から立ヶ花までは19km。そこを洪水時は100分で流れてきた。秒速3.17mである。

飯山観測所のピーク水位は11.1mとされている。これが毎秒8100トン流れてきた時の水位。(注1

堤防天端まではあと90センチ。長野市で決壊がなければあと900トン、流れ下ってくるはずだった。さて、この900トンが追加された時に飯山観測所での水位はいくつになるか?と言うのが大問題である

地図からの読み取りでは飯山観測所から対岸の堤防までは506m。残った越水までの堤防高さが0.9m。掛け合わせると断面積が455.4m^2.

水は秒速3.17mであるから掛け合わせると1443.6m^3=1443.6トン。

ここから900トンを引くと残りは544トン。これはつまり「堤防天端まであと34センチ残すだけ」ということである。

もちろん上記計算は概算であって、正確なものではないが、毎秒9000トンの水が流れるといかに危険であるか、この程度の計算でもよく分かるのである。

そうして 穂保地区の堤防はこの9000トンの水に耐え切れずに越水、決壊したのであった。

ちなみに新聞記事によれば

・国交省、流量目標引き上げへ 千曲川の安全確保 /長野2020/11/27 信毎 : https://archive.fo/uuxdf : 台風19号の際の立ケ花観測所(中野市)の流量は、決壊した千曲川堤防(長野市穂保)からの流出分も含めて最大で毎秒9000トンに達していたとみられる。だが、現行の整備計画は被災前にまとめたものだったため、当時は戦後最大とされた1983年の台風10号を念頭に置いた毎秒約7300トンの流量で目標設定していた。

・千曲川増水 整備計画で目標としていた流量上回る:信毎2020年2月28日 : https://archive.fo/zxAZZ : 昨年の台風19号による千曲川の増水で、中野市立ケ花と千曲市杭瀬下で観測した最大流量(暫定値)がそれぞれ毎秒8100トン、同5900トンだったことが27日、国土交通省千曲川河川事務所(長野市)の調査で分かった。ともに現行の整備計画で目標としていた流量をそれぞれ毎秒800トン、同1900トン上回っていた。両地点には水位観測所を設置している。・・・
 国の「信濃川水系河川整備計画」では、おおむね2044年度までに、氾濫を防ぐために定める流量を、立ケ花で毎秒7300トン、杭瀬下で同4千トン確保するとしている。・・・<--ここまで記事引用

そうしてこの目標流量、毎秒7300トンであると上記の前提で計算するならば、飯山観測所の水位は11.1mから約50センチ下がり10.6m程になる。

これは飯山観測所の計画高水位10.4mよりも20センチ高い値ではあるが、今回計算の前提となっている数値精度からいえば「まあこんな所であろう」というもの、つまりは今回の計算は大外れではない、と言う事になる。(注1

さてそうであれば飯山の住民は毎秒7300トン程度であれば「まあ逃げなくてもよいか」という事ではあるが、それを超える流量が流れてきた時は「安全第一」として「逃げるが勝」という事になる。

飯山観測所で避難勧告を出すべき水位9.4mに達した時には、この洪水で飯山に到達する最大流量は分かっていなかった。そしてその場合は「安全側に判断して、避難勧告を出す」と言うのがマニュアルで決められたルールであった。だが市長は「独自の足立理論でそう判断せず」そうして「避難勧告を発令せず」そのために多くの市民を「とる必要のない千曲川氾濫というリスク」にさらした。(注1

この行為は一人の個人とその家族に限定するのであれば許されるやもしれないが、自治体の長としては到底許されるものではない。

そうであれば飯山の住民は「そのような市長のもとに暮らしているのだ」という事を肝に銘じておくべきなのである。

危ないのは千曲川の増水ではあるが、飯山においては同程度に市長もまた「危ない」のである。

注1:飯山観測所での水位の経時変化、計画高水位と避難勧告発令水位についての内容詳細については ・引用資料ー1 :を参照願います。

追伸:国が毎秒9000トン流れ込んだ時の対応策として、現在より水位を1.5m下げる事を緊急のテーマとしてやり始めた事。これはつまり「現在の堤防高さでは9000トン流れ込むと水位は堤防天端にまで到達し、千曲川堤防として決めれれている余裕高さ1.5mが取れなくなる事」を国自身が、河川事務所が認めた事になる。

以下にその事を認めた「飯山市 令和 3年  3月 定例会(第376回) 03月05日-03号」から相当部分を示す。

『◆11番(佐藤正夫) 
 緑新会の佐藤正夫です。
 発言を許されましたので、通告に基づき順次質問してまいります。

 私は大きく3点でありますが、1点目の緊急治水対策プロジェクト(千曲川)です。これについて大きく2点質問します。

 まず1点目は、蓮沖の遊水地計画についてであります。
 一昨年の台風19号の災害の後、大きな計画が持ち上がりまして、地元ではきっと大変戸惑っているんではないかなと思うわけであります。そうかといって大変必要な施設であると私どもは思うわけでありますが、災害を未然に防ぐために前に進めていただきたいとこう思うわけであります。

 ①として、千曲川緊急治水対策出張所が地元に対し、計画の説明に入っているとお聞きしますが、市はその説明会に常に同席しているのかお聞きします。

・・・

◆11番(佐藤正夫) 
 分かりました。
 2番目の戸狩狭窄部の河道掘削について質問させていただきますが、先日千曲川緊急治水対策出張所の説明では、湯滝橋上流で右岸側、左岸側の河道を掘削するとのことでありましたが、どのくらいの効果があるのか、狭窄部上流での堰上がりを防げるのかお聞きします。

◎建設水道部長(村上透) 
 戸狩狭窄部の河道掘削につきましては、信濃川水系緊急治水対策プロジェクトとしまして、令和9年度までに令和元年東日本台風洪水における千曲川本川からの越水等による家屋部の浸水を防止することを目標としまして、堤防整備強化、そして遊水池の整備等とともに、狭窄部の流下能力向上を目的に河道の掘削を行うこととしております。

 遊水池整備や河道掘削を実施することによりまして、千曲川と樽川合流点付近におきまして、プロジェクト完了年度になります令和9年度末で河道での水位をプロジェクト前の水位から約150センチの低減を図るとのことでございます。
 以上です。<--引用終わり

 

台風19号 飯山水害の研究・一覧