「その26-1」では以下の様に「栄川樋管からの逆流水がないと説明できない」という結論になっていました。
『・その26-1・城山雨水排水ポンプ場のポンプ稼働状況と浸水深さについて検証した。
3号機を動かす必要がないにも関わらず動かしている。-->栄川樋管からの逆流が疑われる。
皿川からの氾濫水だけでは13日7時15分時点での飯山市の浸水状況は到底説明できない事がわかった。』
しかしながらこれは市長の説明にミスリードされた結果の結論でした。
それで市長が市議会答弁で答えた内容は以下の通りです。(注1)
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・飯山市 令和 1年 12月 定例会(第370回) 12月13日-04号 : https://archive.fo/z1jCi
『◆7番(市川久芳)
市長さん。6時40分まで旧市街地に避難勧告が実際出せなかったわけですよね。それが週刊誌にも大きく載っているわけです。これはやっぱり行政に大きな落ち度があると思います。そういう中で、この間の記者会見だと、マニュアルが無かったというのはとても理由にはならない。どうして出さなかったか、詳しく説明してください。
◎市長(足立正則)
避難勧告につきまして、時系列に経過を含めて説明をしていきたいというふうに思いますので、お願いします。
・・・
そして、このときには、城山の雨水排水ポンプも3台フルで動いておりました。
当時の状況では、それぞれ1分間に110トンの能力のあるポンプが動いていたわけでございますけれども、このうち市街地の部分の内水は2台で足りるというような状況でございます。
したがって、皿川からあふれた水につきましても、城山の雨水排水ポンプが排出をしていたということでございます。
これは推測でございますが、皿川の越流が流入してきたと思われるのは、午前3時ごろでございます。
そして、皿川の水がさらに増えてきまして、城山の排水ポンプ場が停止となって動かなくなってしまったのが7時ということでございまして、この間約4時間ちょっとでございますが、この間に約7万6,000トンの水を排出したということでございます。・・・』
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「市街地の部分の内水は2台で足りる状況。3時には皿川からの氾濫水がポンプ場に届いていた、そうしてポンプが異常停止する7時までの間に毎分330トンの水を千曲川に排出できていた。」という説明になっています。
さてこの市長の主張、説明は成立していたのでしょうか?
1、「市街地の部分の内水は2台で足りる状況」は成立していたのか?
・その26-1・城山雨水排水ポンプ場 の第一章によれば
『上記気象庁の表面雨量指数と稼働ポンプ台数の関係でいえば
黄色エリア出現~継続状態ーー>排水ポンプ1台稼働
赤色エリア出現~継続状態ーー>排水ポンプ2台稼働
で十分の様にみえます。
従いまして13日1時50分では本来は
『1:50 城山雨水排水ポンプ場 3基にて稼働開始。』
ではなく
「1:50 城山雨水排水ポンプ場 2基ーー>1基にて稼働」
と言うように記述されるべきでありましょう。
気象庁はそのように言っているのであります。
そこには「排水ポンプを3台稼働してまで排水する必要のある雨水はない」のでありますから。』という結論になっています。
つまり「本来であれば排水ポンプ2台稼働で市内に降った雨水の処理はできたはずである」という結論であり、これは一見すると市長の主張である「市街地の部分の内水は2台で足りるというような状況でございます。」を支持している様に見えます。
しかしながら実際には『1:50 城山雨水排水ポンプ場 3基にて稼働開始。』としなくてはならなかった。
逆に本来のポンプ性能が出ていたとしたらこの時には『1:50 城山雨水排水ポンプ場 3基にて稼働開始。』ではなくて「1:50 城山雨水排水ポンプ場 2基ーー>1基にて稼働」と言うように記述されたでありましょう。
さて何故そうできなかったのか?
「ポンプ場の排水ポンプの性能が出ていなかったから」であります。
その為に本来であれば一台稼働で十分であったはずのポンプ稼働台数が三台稼働となってしまっていたのです。
そであれば13日の1時50分時点で市長の主張である「市街地の部分の内水は2台で足りるというような状況でございます。」は成立しておらず破たんしていた、と言うのが事実です。
さらにいえば「三台稼働してもその時にポンプ場に流れ込んできていた雨水を千曲川に排出するには十分ではなく、雨水はポンプ場の貯水池に溜まり続け、貯水池の水位は上昇する一方だった」と言うのが事実となります。(注2)
そうであれば市長が言う「皿川からあふれた水につきましても、城山の雨水排水ポンプが排出をしていたということでございます。」は成立していない、と言うのが事実です。
2、ポンプ場に流入する雨水が増えてもいないのに、何故3台目のポンプを動かす必要があったのか?
実は1時50分の時点ではそれまでよりもポンプ場に流入する雨水の量は減っていました。にもかかわらずポンプ場貯水池の水位は上昇を続け、つまりは2台の排水ポンプを稼働させただけでは排水量が足りず、したがってポンプ場の担当者は3台目のポンプを稼働させることになったのです。
ほほう、何故そんな事になるのですか?
千曲川の水位が上昇した為です。
13日の2時時点の千曲川水位は8.86m。標高換算で315.96m≒316mです。
他方でポンプ場≒貯水池ふちの標高は314.7m。
つまり2時時点で千曲川水位はポンプ場標高よりも1.3m程高かったのです。
そうして、この状況では二台の排水ポンプを動かしても排出量が足りなかった、という事になります。
言い換えますと「二台のポンプでは吐出漕の水位を1.3m程度までしか持ち上げられなかった」という事です。(注3)
それで三台目のポンプを動かしたのですね。
しかしながら「三台のポンプを動かしてもポンプ場の吐出漕の水位を1.3m+0.7m程度までしか上昇させることができなかった」のです。
その時の吐出漕水位2mという値は千曲川水位に換算しますと9.6m程であり、13日の3時の時点での千曲川水位が9.58mでしたから、3時以降はポンプ場の排水ポンプのエンジンがいくら回転していてもポンプ場から千曲川には水は排出されなかった、という事になります。(注3)
さてそうなりますと市長が言う所の
「これは推測でございますが、皿川の越流が流入してきたと思われるのは、午前3時ごろでございます。
そして、皿川の水がさらに増えてきまして、城山の排水ポンプ場が停止となって動かなくなってしまったのが7時ということでございまして、この間約4時間ちょっとでございますが、この間に約7万6,000トンの水を排出したということでございます。」
については、「3時以降はポンプ場から千曲川へは排出量ゼロ」でありますから、「約7万6,000トンの水を排出した」というのは全くの事実誤認、でたらめという事になります。
3.市長が言う「雨水排水ポンプ場のポンプは1分間に110トンの能力がある」というのはウソなのか?
ポンプ場の吐出漕の高さは4.5m程。貯水池の水位が満水状態であればポンプは水をその位置から4.5m上昇させる能力があれば吐出漕のトップまで水を満たすことが出来ます。
つまりは今回台風19号の折、千曲川の最高水位11.1mであったのですが、その時でさえ吐出漕の水位は千曲川よりも0.9m高くでき、したがってポンプ場に集まってきた水を千曲川に排出できていたのです。
しかしながら、貯水池を満水にしてポンプを運転する事はまずないのであれば、たとえば「満水状態より1.5m程下の水位で運転する」とします。そうなるとポンプは水を1.5m+4.5m=6m程持ち上げる力が必要になります。
ちなみにこのポンプが水を持ち上げる事が出来る高さを全揚程といいます。そうであればこの場合は「全揚程が6mのポンプが必要」という事です。そうして、その程度の性能を持つポンプが雨水排水用ポンプとしてメーカーによって準備されているのです。(注4)
さて雨水排水ポンプ場のポンプは横軸型ではありますが、基本的な性能、仕様は縦軸型と同じでありましょう。そうであればしっかりとメンテナンスされていればカタログスペックの「全揚程は6mで毎分110トンの排出量」というのは可能であったはずです。
しかしながら実際の飯山のポンプはメンテナンス不十分であった為「全揚程は2m~2.5m程度でしかなかった」という事であり、これは飯山市の「水防設備にはお金はかけない」と言うスタンスの結果であり、飯山市の不作為の結果であります。
4、排水ポンプが稼働している時に「どうやって実際に水が排出されている事」を確かめるのか?
排水ポンプ車の場合は排水側のホースから水が千曲川に流れ出しているのを目で見て確認する事が可能です。
このタイプの「堤防天端をこえて水を千曲川に排出するポンプ」は実際に正常にポンプが作動している事を簡単に目視確認できます。そうして、ポンプ場でいえば「広井川排水ポンプ場のポンプ」がこのタイプのポンプになっています。(注5)
それでこのタイプの排水の仕方では常に水を堤防天端まで持ち上げる為、千曲川の水位に関係なく安定して水を排出する事が可能となっています。
それに対して吐出漕を使って水を排水するタイプの排水機場・ポンプ場の場合は千曲川の水位が上昇するにつれて水が排出されにくくなります。
それに加えて千曲川の水位が排水口となる樋門・樋管の出口高さよりも低い場合は堤防の上から目視確認が可能ですが、千曲川水位が上昇して排水出口高さを超えてしまうと目視では本当に水が排水されているのかどうか確認が出来なくなります。
実際に13日の2時の時点で千曲川水位は8.86m。標高換算で315.96m≒316mでした。他方でポンプ場≒貯水池ふちの標高は314.7mであって、この時には栄川樋管の出口は水の下にかくれてしまい、本当に水がポンプ場側から千曲川に排出されていたかどうか、目視では確認できなくなっていました。
しかしながらポンプと名前が付くのですからポンプにはそれぞれ流量計が付いているはずです。そうであればポンプ場担当者はそれを見る事で「実際にどれほどの水がポンプ場側から千曲川に排出できていたか」確認していたものと思われます。
こうしてポンプ場の担当者は「3時にはポンプ場のポンプは回っていたものの、ほとんど排水できていなかった」という事を確認していました。しかしながらその事実は決して公表される事はありません。
そうして市長は臆面もなく「これは推測でございますが、皿川の越流が流入してきたと思われるのは、午前3時ごろでございます。
そして、皿川の水がさらに増えてきまして、城山の排水ポンプ場が停止となって動かなくなってしまったのが7時ということでございまして、この間約4時間ちょっとでございますが、この間に約7万6,000トンの水を排出したということでございます。」と言うのでした。
ちなみに「目視確認ができないタイプのもの」としては雨水排水ポンプ場とおだての排水機場がこのタイプの排水設備となります。
注1:・参考資料 補足・市長は何と言ったか :・今回水害に対する飯山市長の弁解、言いのがれ、正当化、謝罪なし、反省なしの「とんでも発言集」参照の事。
注2:・「皿川氾濫・決壊に対する避難勧告発令」の3 :左記の「1-3、25m道路アンダーパス北側エリア(@福寿町)は2時過ぎには浸水が始まっていた」を参照願います。
2時の時点でポンプ場貯水池の水位はあふれ出す高さにあと50センチまで上昇していました。そうして市長の主張する所によれば「皿川の越流が(引用注:ポンプ場に)流入してきたと思われるのは、午前3時ごろでございます。」であれば、2時から3時までの間はポンプ場に流入していたのは市街地に降った雨水だけでした。
しかし「25m道路アンダーパス北側エリアの浸水」は2時以降も継続しており、その浸水深さは増えていった、と言うのが住民の方の証言であります。
そうであれば1時50分時点で3台の排水ポンプが稼働したにもかかわらず、3台合計の排水能力はそこに流れ込む雨水の量を千曲川に排出するには不十分であった、という事になります。
つまり「ポンプ場の貯水池の水位は順次、上昇していった」のでした。
これはつまり「もし皿川が越水・決壊して氾濫しなかった、としたらその時は市街地に降った雨水だけでポンプ場の貯水池は満水を越してオーバーフロー」となり、堤防沿いの場所は雨水による浸水被害をうけ、従って「ポンプ場の能力不足が誰の目にも明らかになっていた」という事を示しています。
しかしながら今回台風19号の折には皿川が氾濫したことによってポンプ場の能力不足が皿川からの氾濫水によって隠されてしまい、見えなくなってしまいました。
そうではありますが、皿川堤防が強化され、皿川が氾濫しなくなると次回の台風19号並みの台風襲来の折には今度はポンプ場の能力不足が誰の目にも明らかになる事になります。
注3:ポンプ場のポンプは吐出漕に一旦水を排出します。そうしてその吐出漕の水位と千曲川の水位の差分でポンプ場側から千曲川に水が排出される事になります。
そのために千曲川の水位が上昇するにつれてポンプ場側から千曲川への排水量は減る事になり、吐出漕水位と千曲川水位が同一になるとそこで排水量はゼロになります。
この事を説明した飯山市公開のイラストはこちらから入れます。:・中央排水区(城山雨水排水ポンプ場)のしくみ : https://archive.fo/db83r
ちなみにこれはイラストの中で説明されているポンプからポンプ場の壁を貫いて外に出て、そこから地下に潜りこみそこで水槽(吐出漕)と接続している太い(直径90センチ程度)吐出菅と吐出菅と地下でつながっている吐出漕の画像です。:吐出菅 https://archive.fo/T2ku7 :吐出菅(拡大) https://archive.fo/ZoWyM :吐出漕 https://archive.fo/OmoEq
但し上記イラストの中に一つ、事実と異なる絵があります。それは水槽(吐出漕)の高さです。イラストでは堤防よりも水槽の高さが高くなっていますが、現物は堤防の高さまでしか吐出漕の高さはありません。
つまり「堤防高さと同じくらいに千曲川水位が上がると、ポンプ場からは水は千曲川には排出できない」のです。そうしてこれは「設計上の制約・しばり」となっています。
注4:雨水排水設備 : https://archive.fo/qYWev
縦軸型ポンプの紹介記事になっていますが、基本的な性能は横軸型の要求仕様・要求性能を引き継いでいるものと思われます。
そうして下段に仕様が載っていますが、雨水排水用のポンプは吐出量毎分90トン~180トンで全揚程が6mが可能である、と記されています。
なお動画にて「柳原排水機場(長野市:千曲川)に導入された排水ポンプの試運転の状況」が紹介されています。その動画を見る場合は次のアドレスから入ってください。
https://www.tsurumipump.co.jp/projects/case/108.php
注5: https://archive.fo/NR6hy :左記の記事の写真によれば皿川の方に排水ポンプ車の給水ホース、千曲川の方には排水ホースを堤防をまたいで配置している事がわかる。
https://archive.fo/jR65B : 広井川排水機場に設置されている排水ポンプ群とそれにつながっている9本の排水パイプ。これが堤防天端程の高さで堤防をくぐって千曲川側にある排出出口に通じている。(・広井川ポンプ場 排水管群 : https://archive.fo/SqmnF )ここの場合も堤防の上から水が千曲川側に排出されているかどうかは一目で確認できる。
ちなみに台風19号の折、熱心な市議会議員さんは12日午後9時すぎに運転を開始したポンプ場を訪れてポンプの状況を確認したのち中央橋から実際にポンプ場から栄川樋管を通じて水が排出されているのを目視確認されている。
それで午後9時での千曲川の水位は4.8mであり、これは河川敷に水が上がるかどうかと言う程度の水位であった。したがって栄川樋管からの水の排出を目視確認する事ができたのである。
しかしその確認行為は13日の3時の時点で、確かにポンプ場ではエンジンが回転しポンプは動いていたのでしょうが、その時にポンプ場から千曲川に水が排出されていた、という事の保証にはなっていないのである。
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