シリウス日記

そうだ、本当のことを言おう。

その33-3・飯山市の皿川氾濫に見る問題点の検討

2020-08-22 16:34:36 | 日記

1、氾濫シミュレーションによる台風19号での戸狩地区での氾濫の再現

「・その33-2」では水位情報を元に検討しました。このページではそれに引き続いて氾濫シミュレーションを動かしてみます。(注1

氾濫規模は計画規模とし、破堤点は左岸北端の「BP701」とします。

今回は日光川樋管の左ゲートが半開きだった時に何が起こったのか調べたいのですが、あいにく破堤点を日光川樋管に設定する事はできず、日光川と広井川の中間地点での指定となります。
ちなみにこの破堤点ですが、実際に過去に破堤しそこの場所に大災害をもたらした位置になります。

シミュレーションを動かして5時間ほどの所の状況が台風19号での浸水状況と一致している様です。
4時間経過した所で日光川エリアから氾濫水が道を渡って今井川の遊水池のある方にすすんで行くのが分かります。

但し、このシミュレーションで表示されている経過時間は実際に日光川からの氾濫で起きた経過時間とは一致していない事に注意が必要です。
しかしながら、氾濫状況の進展を見る事はこのシミュレーション(Simulation)で可能になります。

Sim5時間後の状況と言うのは今井川の遊水池に氾濫水が到達するとともに、西側のJR踏切付近まで氾濫水が到達しています。
そうして、このSimと今回の台風19号での実際の浸水状況との大きな違いは、一つはSimではJRの線路を越えて広井川沿いに上流域まで浸水が広がっている事。
もう一つはSimでは広井川を渡って浸水が南側まで広がっている事です。

この二つ共に実際の氾濫では起こりませんでした。
理由は前述した通りで、広井川の排水ポンプが稼働しており、広井川に流れ込んだ氾濫水は広井川を超えることはなくそのまま排水ポンプによって千曲川に戻されたからです。

こうして、この場所での実際の氾濫エリアは飯山市報2ページ目下段 にある「大深区・戸狩区、内水の氾濫による浸水」と表記された地図上でのエリアとなりました。

2、今回の19号台風の2年前の台風の時の戸狩地区の検証

2017年 10月23日 台風21号
立ヶ花水位ピーク 8.22m 15時
飯山ピークは 8m  18時頃
24時間降水量 119.5ミリ(3時13ミリ 9時10ミリのダブルピーク)

この時もこの地区では浸水被害が発生しました。

・「水防災意識社会 「水防災意識社会 再構築ビジョン」に基づく  北 信 圏 域 の 減 災 に 係 る 取 組 方 針(1018年2月5日)
https://www.pref.nagano.lg.jp/hokuken/saigai/documents/04hokushin-houshin.pdf
この中で飯山市が「危険である」と認識していたのが あるいは「関係者の皆さんが危険である」と認識していたのが
『平成 29 年 10 月 広井川・日光川 台風 21 号 浸水被害【飯山市】』 という事例でした。(5ページ参照)

この時の柏尾橋のピーク水位は10月23日19時の11.66m。
標高に換算すると312.2m、河床勾配補正+0.1で日光川位置で312.3m。

この時も日光川樋管の左ゲートは半開きでした。
そうして閉めたはずの日光川樋管から千曲川の水が逆流してきていたのです。

「その33-2」から日光川氾濫開始水位は310.8mですから千曲川水位が312.3mでは+1.5mとなり、氾濫してしまいます。
そうしてその氾濫水は日光川と広井川の中間に広がる標高が309.9mの田畑を水浸しにしました。(注2

それから県道408号線より東側に点在する家屋に床上、あるいは床下浸水の被害をもたらしたものと思われます。(2020/9/4:追記:この時の被害は床上・床下合計15件、住居以外は9件:市報H29/11月記載)
この時の台風が家屋に与えた被害はこの戸狩地区のものだけだった模様です。

それでこの被害報告を受けて昨年の台風19号ではこの場所に事前に3台の排水ポンプ車が配置されました。

しかしこの時に樋門ゲートを開けっ放しでも何事も起らなかった皿川には、台風19号では樋門ゲートは前回同様に開きっぱなしとし、監視員も排水ポンプ車も事前に配置される事はなかったのです。
そうしてその事が今回の皿川悲劇の始まりとなったのでした。

注1:氾濫シミュレーションについては ・その29-2・「地点別浸水シミュレーション検索システム」について を参照願います。

注2:ここは日光川と広井川にはさまれた県道より一段と低くなった場所で、左側には堤防の向うに日光川樋管の建物と柏尾橋が見え右側をみると堤防の向うに広井川樋門の建物、こちら側には広井川の排水機場と千曲川にポンプアップされた水を送り出す白いパイプラインが見える

注2の追記:8/29)この時の広井川樋門周辺の浸水状況の写真は河川事務所の報告にあった。ー>平成29年10月台風21号による千曲川・犀川出水状況。 17P~19Pに渡って広井川、日光川、今井川での活動状況の写真が掲載されている。

 

訂正の追記飯山市の浸水エリアの報告は「過小報告」になっていた件。(2020/8/28)

飯山市の昨年11月の市報報告に基づいた以下の記述は間違っていました。

『そうして、このSimと今回の台風19号での実際の浸水状況との大きな違いは、一つはSimではJRの線路を越えて広井川沿いに上流域まで浸水が広がっている事。
もう一つはSimでは広井川を渡って浸水が南側まで広がっている事です。

この二つ共に実際の氾濫では起こりませんでした。
理由は前述した通りで、広井川の排水ポンプが稼働しており、広井川に流れ込んだ氾濫水は広井川を超えることはなくそのまま排水ポンプによって千曲川に戻されたからです。

こうして、この場所での実際の氾濫エリアは飯山市報2ページ目下段 にある「大深区・戸狩区、内水の氾濫による浸水」と表記された地図上でのエリアとなりました。』

正確には「令和元年東日本台風(台風第19号)による千曲川・犀川出水状況」という河川事務所の報告の25ページにある記述となります。

つまり「JRの線路を越えて西側に」も「広井川を越えて南側にも」浸水エリアは広がっていたのです。
これは「浸水シミュレーションの計算が示した通りの結果」でした。

つまり「広井川の排水ポンプ場の能力は広井川の上流から流れてきた水を千曲川に排水するだけの能力しかなかった」という事になります。
そうして日光川樋管半開きによる千曲川の逆流水による浸水は広井川のポンプ場から千曲川に戻されてはいなかった、という事になります。 

それにしても「飯山市の報告の信頼性の無さ」には驚くばかりであります。

追記その2 (2020/9/19)

今年の7月豪雨の折、日光川樋管の左側ゲートが途中でひっかかって半開き状態であった事はすでに報告した通りである。そうして、このゲートの不具合を解消しようとして現地の方々が努力されていた事も認識している。ただしこの時にゲートの修理が完了したのかどうかは未確認であった。

そうして、今回再び現地を訪れる事ができて確認した所、左ゲートの不具合は一応解消できていた事を確認できた。あとは実際に千曲川増水時に日光川樋管の左右のゲートがちゃんと下まで降りる事を確認できれば左ゲート不具合の件は終了となる。

そうしてまた日光川樋管が正常に戻った事により、この地で何年もの間繰り返されてきた氾濫ー>家屋の浸水がなくなる事を確認できれば、とがリ地区、大深地区にようやくにして安全がもたらされたという事になるのである

追記(2021/8/17):8月15日からの大雨対応で日光川樋管のゲートがおろされた。そうして問題の左ゲートも今回は正常に下りた事を確認できた。ちなみに今回、柏尾橋ピークは11.85mで2017年の台風21号と同等以上であった。にもかかわらず、台風21号の時には発生した浸水被害は発生せず、今井川の遊水池もまったく満水にはならなかったのである。

 

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